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不快なCM表現に批判殺到!「炎上」を防ぐクリエイティブリスク診断のススメ

2020年9月9日

不快なCM表現に批判殺到!「炎上」を防ぐクリエイティブリスク診断のススメ

「私作る人、僕食べる人」

1975年、こんな台詞が耳に残る大手食品メーカーのテレビCMが話題になりました。

テーブルに置かれたインスタントラーメンを笑顔で囲む若い男女と少女。女性と少女の「私作る人」という言葉に呼応し、男性が「僕食べる人」と続きます。

このCMには「女性が男性に食事を作ってあげる優しさ」と、「作る人の愛情が加わると、よりおいしくなる」というメッセージが込められたと言います。
その思惑通り、視聴者の多くは「かわいい」「ユーモアがある」などと好感を抱きました。

ところが、そうして世の中に受け入れられたはずのCMが、思わぬ騒動を巻き起こします。

ある女性団体が「食事作りは女性だけの仕事という印象を与え、男女の役割分担を固定化するCM」と告発し、メーカーに抗議したのです。

「男女平等」の概念すら一般的ではなかった時代。メーカーの本社にまで乗り込んだ女性団体の主張を「大げさ」とたしなめる声も少なくありませんでした。
しかし、メーカーは熟慮の末に放映中止を決断します。

以来、このCMは「ジェンダーの観点で社会的に問題視された国内初の広告」として知られることとなりました。

後を絶たないCM「炎上」

それから長い年月を経た今日、世の中は膨大な数のCMであふれ返っています。

1975年当時と比べると、ジェンダーやフェミニズムなどに対する人々の関心と理解は深まり、企業のコンプライアンス意識も飛躍的に高まりました。
しかし、消費者に不快感を与えてしまったことで起こるCM「炎上」はなくなるどころか、後を絶たないのが実情です。

2020年6月下旬に放映開始されたボートレースのCMもその1つ。「炎上」の原因はやはり、人々を不快にさせる表現でした。

問題となったのは、女性アイドルがレーシングスーツを脱いで水着姿になりながら口にした言葉。SNSなどに寄せられた感想の多くは「性的な意味にしか受け取れない」というものでした。

「お茶の間が凍る」「気持ち悪い」など容赦ない批判も殺到し、瞬く間に「炎上」が発生。シエンプレの調査によると、「ボートレース」「CM」のワードを含んだTwitter投稿は、放送初日に2,000件を超えました。

29日にCM放送が開始され内容への批判が集まる

「不快感」を覚える要因は人それぞれ

CMを制作する以上、「より多くの注目を集めたい」と考えるのは当然でしょう。そのために過激な表現に走ろうとするのも、無理がないことかもしれません。

しかし、注目を集めること以上に配慮しなければならないのは、消費者の反応です。2017年には、大手ビール会社のCMや、東北のある県のPR動画が「下ネタ」「下品」と非難されて「炎上」しました。
どちらも有名な女優や女性タレントを起用しており、視聴者の目を引くことには成功したかもしれません。だからと言って、見る人をネガティブな気持ちにさせてしまっては元も子もないのです。

難しいのは、消費者が不快感を覚える要因は一律ではないということ。性的表現だけを見ても、実際に非難の対象になるかどうかはケース・バイ・ケースなのです。

その証拠に、男女の身体的特徴や魅力を強調したCMは数多く存在します。水着姿や下着姿の女性が登場するシーンも珍しくありません。

ボートレースのCMをめぐっては、Twitter上で「その類のCMはこれまでさんざん炎上したのを知らないの?」という指摘も寄せられました。ですが、そもそも「その類」のすべてが批判されたというわけではないのです。

ジェンダーへの配慮不足も批判の的に

反対に、性的表現など「下品」と感じさせる要素は一切含んでいないにも関わらず、ジェンダー表現が問題視されて「炎上」したCMもあります。

例えば、女性ドライバーに「やっぱり、クルマの運転って、苦手ですか?」と問いかけた自動車会社のCM。さらには、初めての育児と家事に1人で奮闘する母親の姿を描いた大手衛生用品メーカーのおむつCM。
これらは「女性のイメージを決めつけている」「女性の役割を強制している」といった批判を招いてしまいました。

こうして見ると、性的表現や社会的性差を描いた表現は「露骨さ」が際立つほど世の中の反発を受けるリスクが高まると言えます。
ボートレースや大手ビール会社などのCMが「炎上」した最大の原因も、クライマックスシーンで発せられた言葉が露骨な意味を想像させたことでした。

ここでもう一度、冒頭で紹介した大手食品メーカーのCMを振り返ってみましょう。

女性団体がメーカーに抗議したのは、CMが流れ始めてから1カ月後。実際に放映が打ち切られるまでには、さらに1カ月余りの時間を要しました。

しかし、インターネットが普及した現代ならどうでしょう。ある大学の准教授は有名な広告専門誌に、次のような見解を寄せました。
「放映開始後数時間で騒動となり、翌日か翌々日には放映中止となるのでは」

その言葉通り、ボートレースのCMが「炎上」したのは放映初日のことでした。

1975年当時と比べ物にならないのは、騒動が大きくなるスピードだけでありません。情報が伝わり、共有される範囲も格段に広がっています。
SNSなどを使えば、誰もが瞬時に当時の女性団体のような行動を取ることが可能で、その一部始終を拡散することも容易にできてしまうのです。

「ジェンダーに配慮する意識が低い」「女性の尊厳を守る姿勢が見られない」といった批判は、企業のコンプライアンスを揺るがす問題に発展する恐れがあります。
いったん貼られてしまったレッテルを剥がすのは、たやすいことではありません。

ネガティブなイメージは売り上げや株価だけでなく、次世代の採用活動などにも悪影響を及ぼすでしょう。

多様化する価値観、多角的なリスク診断を

予期せぬ「炎上」被害を防ぐために、企業はどう備えるべきでしょうか?

ここまで説明したように、CMをはじめとした各種プロモーション活動の内容は「過激な表現さえ避ければよい」というわけではありません。
「決め付けや押し付けのような表現はないか」「何が危うい表現に当たるのか」など、「炎上」リスクを多角的な視点で検証するべきでしょう。

LGBTなど人々の価値観が多様化している昨今、例え信頼できる大手広告代理店に制作を依頼したCMであっても、「炎上」の可能性がゼロとは言い切れないのです。

また、プロモーション活動が「炎上」してしまう原因には、総合的なリスク診断を社内確認だけに頼っていることも挙げられます。

シエンプレが顧客企業に提供しているのは、高度なクリエイティブリスク診断サービスです。
CMなど自社のプロモーションに関する表現やテーマが「世の中に正しく受け入れられるか」という観点で、広告のテキスト素材やリリース文などに潜むリスクを徹底的にチェックします。

国内唯一のデジタル・クライシス対策カンパニーとして、豊富な実績とノウハウをストックしているのが弊社の強みです。「炎上」のストッパー機能の強化を検討している場合は、ぜひご相談ください。

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