デジタル時代におけるレピュテーションリスクとその対策

インターネットとソーシャルメディアの普及により、企業や個人の評判はかつてないほどの速さで形成されるようになりました。その影響は広範囲に及びます。このデジタル時代において、企業の信頼やブランド価値を守るためには、レピュテーションリスク(評判リスク)への対策が不可欠です。
レピュテーションリスクとは何か?
レピュテーション(評判)とは、社会が企業や製品に対して抱く認識や信頼の度合いを指します。これは顧客の経験、メディア報道、口コミなど、外部の影響を大きく受けます。そのため、企業が直接コントロールできるものではありません。レピュテーションリスクとは、企業の評判が悪化し、信用やブランド価値が損なわれる可能性を意味します。
インターネットとモバイルデバイスの普及により、誰もがいつでも手軽に情報を得られるようになりました。かつてはもっぱら情報の受け手だった消費者が、今や情報の送り手でもあります。これにより、企業の評判は良くも悪くも瞬く間に広がるようになったのです。事実無根の情報や誤解、あるいは意図しない情報の断片が瞬時に拡散されるおそれがあり、結果として、企業の評判に計り知れないダメージを与えることがあります。
レピュテーションリスクが企業に与える影響
レピュテーションリスクが顕在化すると、企業は多岐にわたる悪影響を受けます。
●売上、集客の減少
悪い口コミや批判的な情報が拡散されると、客足が遠のき売上が大幅に減少する可能性があります。
炎上した企業は、ブランドイメージが著しく傷つきます。「ひどい会社」という認識が広がり、長期的なダメージを負うことになります。
●採用活動への悪影響と人材流出
評判の悪い企業には求職者が集まりにくくなり、採用活動が停滞します。転職サイトのネガティブな口コミは、求職者の応募取りやめや志望度の低下につながります。ある調査では、求職者の80.5%が、これにより応募を見送ったと報告しています。また、既存の従業員の士気も低下し、優秀な人材が流出する可能性も高まります。
●取引先からの信頼低下
ネガティブな評判は、取引先からの信頼失墜を招き、事業展開を困難にする可能性があります。
●株価へのダメージ
上場企業の場合、不祥事や悪評によって株価が急落するリスクがあります。ただし、炎上が必ずしも株価下落を引き起こすとは限りません。事後対応が評価され、持ち直すケースも見られます。
●誹謗中傷・風評被害の誘発
炎上は、さらに根拠のない誹謗中傷やデマの拡散を招きます。これにより、企業の信頼を損なう重大な問題に発展することもあります。最悪の場合、企業の倒産につながる可能性もあります。
炎上を引き起こす主な原因
レピュテーションリスクは、さまざまな要因によって顕在化し、「炎上」という形で表面化することが多くあります。「炎上」とは、企業や団体、個人が発信した内容や言動に対するものです。SNSやインターネット上で批判や非難の投稿が殺到する状態を指します。
弊社が運営する一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所では、ある事柄に言及した投稿が100件以上発生した状況を「炎上」と定義しています。
2024年は、月平均102.1件、合計1225件もの炎上が確認されました。これは企業にとって決して他人事ではありません。2025年4月までの調査でも、合計311件の炎上が確認されています。
炎上の主体は著名人が突出しています。しかし、「メディア以外の法人」による炎上も多く、企業活動の延長線上で頻繁に発生しています。
主な炎上の原因には、以下のようなものがあります。
●従業員による不適切な行為(バイトテロ・客テロ)
アルバイトや従業員、または顧客による不衛生な行為や悪ふざけの動画がSNSに投稿される事例です。これにより、企業に大きな批判が寄せられることが後を絶ちません。
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炎上後の謝罪が遅い、不誠実、言い訳がましいといった点が挙げられます。特に「ご不快構文」や「誤解構文」の使用、責任転嫁、隠蔽と受け取られるような行動は、さらなる「二次炎上」を招きます。これにより、企業の信用は失墜するでしょう。
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レピュテーションリスクを完全にゼロにすることは難しいでしょう。しかし、適切な対策を講じることで、その発生を抑制できます。万一発生した場合でも、被害を最小限に抑えることが可能です。
法令や企業倫理に即したガバナンス体制を確立しましょう。リスク発生時の対応フロー、担当者、責任者を明確にすることが不可欠です。
従業員(アルバイト含む)のSNS利用に関する明確なガイドラインを策定し、徹底して周知することが重要です。公式・個人問わず、利用ルールを定めることが求められます。SNSのリスクとして、デジタルタトゥーや個人情報の漏洩などが挙げられます。不適切な投稿の拡散が自身の人生に影響を与えることを「自分ごと」として認識してもらう定期的な研修も効果的です。シエンプレは、経営幹部から従業員まであらゆる階層向けの「ソーシャルメディアリスク研修」を提供します。加えて、SNS利用に関する「指針・目的・ルール」を定めた「ソーシャルメディア(SNS)ガイドライン」も提供。さらには「リスク管理文書作成支援」サービスも提供しています。
自社に関するSNS投稿やネット上の口コミは、24時間体制でモニタリングしましょう。炎上の兆候やネガティブな情報を早期に発見できる体制の構築が重要です。これにより、迅速かつ的確な初動対応が可能になります。シエンプレの「Web・SNSモニタリング」サービスでは、有人監視やシステムを駆使し、炎上の火種をいち早く検知します。その後、顧客企業に注意喚起を行います。
企業に非がある場合は、事実を隠蔽せず、迅速かつ真摯に謝罪することが求められます。同時に、原因究明と再発防止策を具体的に示しましょう。曖昧な表現や責任転嫁は避け、誠実な姿勢を見せることが、世論の反発を抑える鍵となります。迅速な謝罪と適切な情報開示は、状況を好転させる可能性があります。
Googleマップの口コミなど、顧客からのフィードバックは放置してはいけません。ネガティブな内容であっても、丁寧に対応することで企業イメージを向上できます。喧嘩腰で感情的な返信は避け、第三者が見ていることを意識することが大切です。
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siemple.co.jp6.外部専門会社との連携
自社だけですべてのリスク管理を賄うのは困難な場合があります。デジタルリスク対策の専門会社は、炎上のメカニズムやトレンドに精通しています。ガイドライン策定、モニタリング、危機発生時の緊急対応まで包括的にサポートします。緊急対応には、コールセンター、記者会見の支援、プレスリリースの作成などが含まれます。
まとめ
SNSは、誰もが情報発信者となり得るツールです。現代において、レピュテーションリスクは企業経営の根幹を揺るがす可能性があります。一度損なわれた信用を回復するには、膨大な時間と労力がかかります。そのため、日頃からの予防策が重要です。万一の事態に備え、迅速かつ誠実に対応できる体制の構築が極めて重要です。
シエンプレは、予期せぬ炎上や風評被害、誹謗中傷など、あらゆるデジタル・クライシス(危機や重大なトラブル)の課題解決を、全力でサポートいたします。気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。
