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「デジタル・クライシス白書」最新版で振り返る2024年の企業炎上トレンド

公開日:2025.03.07

はじめに

SNS上では、2024年も多くの企業炎上が発生しました。炎上の理由はさまざまで、リスク管理の重要性がますます高まっています。この記事では、シエンプレが運営するデジタル・クライシス総合研究所が2025年1月にリリースした「デジタル・クライシス白書2025」をもとに、企業炎上のトレンドや主な炎上事例について解説します。

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企業炎上とは?

企業炎上とは、特定の企業・ブランド、店舗がネットユーザーや消費者の怒り、不満を買い、SNS上で集中的に非難される状況を指します。企業炎上の多くは、社内の不正・不祥事、役員や従業員による不適切な言動、商品・サービスや顧客対応の不手際が要因です。

公式SNSからの発信やクリエイティブの内容に、性別や人種、宗教などの差別・偏見、あるいは配慮不足と捉えられる要素が混じっているケースがあります。その場合も、ネットユーザーや消費者の反発を招くことがあります。

自社に関するネガティブな情報がSNS上で一気に拡散し、世間からの批判が強まれば、ニュースサイトやマスメディアで取り上げられるかもしれません。そうしてネガティブなイメージが広がると、炎上はさらに拡大し、より長期化するという悪循環に陥ってしまうリスクが高まります。

企業炎上の発生状況

「デジタル・クライシス白書2025」によると、企業と個人を合わせた2024年の炎上発生件数は1225件でした。2023年の1583件と比べて358件、22.6%の減です。調査を開始した2019年の1228件も下回り、過去最少を記録しました。月間平均発生件数も減り、前年の131.0件より30件近く少ない102.1件にとどまっています。

上記の数字を目にして、「企業炎上が減った」と安堵している方もいらっしゃるかもしれません。しかし、2024年に減少した358件のうち、7割近くの238件は「一般人」「著名人」による個人の炎上です。企業炎上の減少幅は個人炎上より小さく、炎上発生件数全体に占める企業炎上の割合も前年から下がってはいません。

炎上しやすいのは消費者に直接アプローチする業界

法人に該当する炎上事案を業界別に見ると、最も多いのは「メディア業界」の106件でした。次は「娯楽・レジャー業界」の89件で、消費者に直接アプローチする業界が炎上しやすいことがわかります。この他にも、「飲食」「小売・卸」「IT」「食品」などが上位に入っています。

炎上の理由は「特定の人を不快にさせるような発言・行為」が最多で、「サービス・商品不備」「規範に反した行為」「情報漏洩」も見受けられます。これらは個人の炎上事案を含めて集計した結果ですが、どの理由も「企業活動と無縁」と言い切れるものはなく、他人事でいられる業界も存在しません。

大手と中小、どちらが炎上しやすい?

法人などの団体(※)の炎上事案は287件で、従業員数1000人以上の大企業が158件(55.1%)を占めています。

このうち、上場企業は72件(25.2%)でしたが、国内企業に占める上場企業の割合は約0.1%に過ぎません。そのため、「従業員数が1000人を超える上場企業」、言い換えると「大手の有名企業」が、実質的に最も炎上しやすいということになります。

だからといって、中小企業の炎上が珍しいということではありません。287件の内訳を見ると、従業員数300人未満の企業の割合は26.1%で、4件に1件は中小企業です。

※公共団体や政党、企業概要や従業員数などの情報が公開されていない団体、国外に所在する企業などは除外。

2024年の主な企業炎上事例をピックアップ

2024年は炎上発生件数が減少したものの、 SNSに潜むリスクが解消されたわけではありません。企業炎上の事案を振り返ると、リスクが顕在化する理由はさまざまで、情報発信などを行う際の注意点が多いこともわかるでしょう。

●1月 モデル住宅の施工不良を指摘したSNSユーザーに不適切対応

ハウスメーカー大手「タマホーム」の支店長が、モデル住宅の施工不良をSNSに投稿した男性の自宅をいきなり訪れ、当該投稿の削除を要求しました。モデルハウスを訪れた男性が現地で記入した住所、氏名をもとに訪問したことが拡散するや非難が殺到し、炎上に発展してしまいました。

今の時代は、誰もがSNSによる発信力を持っています。現場での不適切な対応は、すぐにリークされてしまうと考えなければなりません。当事者との交渉も同じで、事実の揉み消しや法的対応を取るという脅しのような形で受け止められてしまうと、企業側への非難が強まります。

●3月 「高齢者は集団自決」発言の経済学者を広告起用も取り下げ

「キリンビール」が、経済学者の成田悠輔氏をインターネット広告に起用しました。しかし、成田氏が過去に「高齢者は集団自決すればいい」といった過激な発言で物議を醸していたことから反発の声が高まり、起用は取り下げとなりました。

過去に炎上したり問題を起こしたりした著名人の広告起用に関しては、リスクとリターンをしっかりと見極める必要があります。また、ゴーサインを出すのであれば、消費者が納得できる理由を用意しておかなければなりません。

●4月 人事部長が「労働者守られ過ぎ」発言

デジタルマーケティング支援事業を手掛ける「Owned」の人事部長が、SNSに「労働者守られ過ぎていませんか?!」と投稿し、これが拡散されて批判の声が上がりました。

人事アカウントの運用については、「権利の軽視」「上から目線」と捉えられるパターンが多くあるので注意が必要です。社名・氏名・肩書を公開した上で投稿すると、会社自体に飛び火してしまうリスクもあります。

●7月 イタリアンバルが「中国人・韓国人お断り」と掲示

東京都内のイタリアンバルが、店舗の入り口に「中国人・韓国人お断り」などと掲示し、その写真を店舗公式のXに投稿しました。ネット上では「店側にも客を選ぶ権利がある」「人種差別に反対」など、賛否両論が巻き起こりました。

人種や国籍に基づく入店拒否は、カスタマーハラスメント対策の拒否とは異なる問題です。法的対応として問題ないか確認を怠ると、炎上してしまう可能性が高いと言えます。

●9月 テレビCMの効果音に「Jアラートに似ている」との指摘

「ライオン」のテレビCMの効果音が、「Jアラートに似ている」と指摘されました。SNS上では「確かに似ている」「注目させるためにわざと似せたのでは」「朝、テレビから聞こえてびっくりした」といった声が上がった半面、「過剰反応では」との意見も寄せられました。

CMの効果音が炎上に結び付いた例が過去になかった中、消費者の賛否は分かれましたが、ネガティブな意見があったのは事実です。クリエイティブのリスクを最小限に抑えるため、複数名によるチェックが可能な体制を構築しておくことが望ましいでしょう。

●10月 LGBTQ接客指針に懸念続出

「ワコール」が、LGBTQや障害者を含む多様な客層に配慮し、性別に関係なく利用できる試着室を案内するとの接客方針を発表し、波紋を呼びました。SNS上では「男性が下着売り場に来ること」「女性用試着室を利用できること」への不安や、「盗撮や従業員に対するセクハラ」を懸念する声が多く見られました。

LGBTQのように両極端の意見が存在するトピックは、激しい議論を巻き起こす可能性が高いと言えます。リリースを発表する際は、どのようなリスクや指摘が生じるかを事前に想定しておかなければなりません。

●12月 美容外科医が解剖研修の現場写真を投稿

「東京美容外科」の黒田あいみ医師が、グアムで行われた解剖研修の写真を自身のInstagramに投稿し、大きな批判を浴びました。投稿には、解剖研修が行われている室内の様子や、笑顔でピースサインをする本人の姿のほか、モザイク処理が施された献体の写真が含まれていました。

倫理観に欠ける行為だったことは、同業者が批判していることからも明らかです。しかし、事の本質は、SNS上で社名や個人名を出して発信することで発生するリスクにあります。広報活動や採用活動の一環としてSNSでの情報発信を推進する場合は、明確なルールを策定し、周知と研修を徹底する必要があります。

2024年の企業炎上トレンドまとめ

2024年は、前年までの流れだった「一般人による炎上の増加」「炎上系インフルエンサーの影響力拡大」「リーク文化の醸成」が一段落した感があります。

しかし、SNS上には、さまざまな意見や情報が存在することに変わりはありません。企業としては、発信した内容がどのような受け止められ方をするかというシナリオを考えながら対処する必要があります。

シエンプレは、顧客企業で想定されるリスクに備えた対策はもちろん、炎上が発生した場合に速やかな沈静化を図るためのサポートを提供します。包括的なデジタル・クライシス(危機)対策を講じたいという場合は、ぜひご相談ください。


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著者:桑江 令 炎上は過去最少の1225件 シエンプレが運営しているデジタル・クライシス総合研究所がまとめた「デジタル・...

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