2022.08.18
炎上事案分析データ2022年7月版(調査対象期間:2022年7月1日~2022年7月31日)
2023年3月30日
ネット炎上や情報漏えいなどのデジタル上で発生したクライシス(危機や重大なトラブル)を研究する、日本初の研究機関デジタル・クライシス総合研究所(以下、デジクラ総研)は、2023年2月1日~2月28日に発生したネット炎上についての件数とその内訳の分析結果を公開しました。
目次
2023年1月31日、デジクラ総研はソーシャルメディアを中心とした各種媒体とデジタル上のクライシスの特性、傾向と論調を把握するために「デジタル・クライシス白書2023」(調査対象期間:2022年1月1日~12月31日)を公開しました。今回、2023年2月に発生した炎上事案を、新たに分析しています。
投稿内容に「炎上」というキーワードを含む3,166件の投稿から178件の炎上事案を抽出(※)。炎上の原因となった問題行動の主体、問題行動の内容、炎上を起こした企業の業種などの切り口から傾向を分析しました。
※デジクラ総研では「炎上」の定義を、「企業や団体、個人が発言した内容、行った行為がメディア上に掲載・拡散され、それに言及した批判や非難の投稿が100件を超えた場合」としています。
「デジタル・クライシス白書2023」をダウンロード調査期間:2023年2月1日~2月28日
調査対象:Twitter、Facebook、Yahoo!ニュース、Amebaブログ、FC2ブログ、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねる など、SNS媒体と炎上拡大の要因になりやすいとデジクラ総研が判断した媒体への投稿
調査方法:デジクラ総研ソーシャルリスニングツールを使用
分析対象投稿数:3,166件
抽出炎上事例数:178件
・2月の炎上事案は178件でした。前月に比べ、39件増加しています。
・炎上事案の原因となった問題行動の主体別の内訳では、「著名人」53件(29.8 %)、「法人等」49件(27.5%)、「一般人」76件(42.7%)という結果でした。
・前月は「著名人」「法人等」「一般人」それぞれの割合が約3割ほどでほぼ均等でしたが、2月は「一般人」が4割を超え、最も大きい割合を占めています。
・また、2022年全体の炎上事案の主体の割合も著名人が35.2%、法人等が35.4%、一般人が29.4%とそれぞれの割合が約3割ほどでほぼ均等でした。
・前月と比較し、「著名人」では4件、「法人等」では1件、「一般人」では34件増加しており、「一般人」が最も増加しています。
・1月下旬に起きた回転寿司店の事例を皮切りに、いわゆる「客テロ」と呼ばれる事象が連続して発生しました。2月も引き続き継続的に発生し、Twitter上で大きく話題になった他、テレビの報道番組等でも取り上げられました。
・また前年同月比では、炎上事案発生件数は110件増加し、「著名人」が28件、「法人等」が23件、「一般人」が59件増加しました。前述した「客テロ」事象の影響ならびに、2022年2月は各地で「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置」が発令されるなど、新型コロナウイルスへの警戒から、個人ならびに企業の活動が自粛傾向にありました。他方、2023年2月はそれと比較すると個人ならびに企業の活動が活発化したことから、比例して発生件数が増えたのではないかと考えられます。
・炎上の原因となった問題行動のうち、166件(93.3%)が「不適切と判断される可能性のある発言・行為。」に該当し、「反社会的行為や規則・規範に反した行為(の告白・予告)。法律に抵触する可能性のある行為。」は12件(6.7%)と少数でした。前月と比較すると「不適切と判断される可能性のある発言・行為」の割合が減少(93.5%→93.3%)しています。
・問題行動の主体のうち、「法人等」に該当する炎上49件を業界ごとに分類した結果、炎上事案が最も多かったのは「娯楽・レジャー」業界で、16件(32.7%)という結果でした。ソーシャルゲームの仕様変更を批判する事象、アニメや漫画の演出について批判する事象などがみられました。主に飲食業界で発生したいわゆる「客テロ」事象については、炎上の主体が「法人等」ではなく「一般人」に分類されているため、業界ごとの炎上事案にはカウントされていません。
・問題行動の主体について上場企業か否か、また、それぞれの従業員数について分析しました。上場区分に関しては、「上場企業」5社(22.7%)、「非上場企業」17社(77.3%)という結果でした。
2023年に入って、明らかに飲食店における顧客の迷惑行為を起点とした炎上騒動が増えています。飲食店における不衛生行為の炎上は、2013年にツイッター上の写真投稿を中心に騒動になり、2019年にはインスタのストーリーズを中心に騒動になりました。
今回のものはTikTokなどのショート動画を中心に騒動になっており、4〜5年サイクルで話題になっているだけ、という印象を持っている方も少なくないでしょう。
ただ、2013年や2019年の騒動は店員による不衛生な行為が問題になったのに対して今年の騒動は顧客を起点としている点が大きな違いです。従来であれば顧客による迷惑行為は、飲食店側が大きな問題にしない限りネット上でここまで注目されることはありませんでした。
しかし、残念ながら告発系アカウントが力を持ってしまったことにより、告発系アカウントにタレコミがされ、告発系アカウントが迷惑動画等を拡散し、拡散した動画をネットメディアがすぐに記事化し、すぐにテレビでも報道され、それに類似した動画がまたタレコミされる、という告発サイクルが確立してしまいました。
今後この告発サイクルの確立により、現場ではたまに発生していたけれども一般の人は知らなかった問題が、炎上の起点になることが増えると考えられます。(例えば、すでに東京マラソンにおいて一部のランナーがトイレを使わずに用を足していた動画が大きな問題になっていましたが、実は過去から存在した問題だったようです。)
自社に同様のリスクが存在していないか早めに確認し、対応する方針を検討しておくことをお勧めします。
抽出したデータは表1の基準に基づき分類しました。
また、問題行動の主体が「法人等」の場合、表2に基づき20の業界に分類しました。
なお、表2に該当しない業界に関してはその他としてデータを処理しました。
(表1)
*参考:山口真一(国際大学GLOCOM 助教):
「ネット炎上の研究『炎上の分類・事例と炎上参加者属性』」, 出版記念公開コロキウム用資料, 2016」
*データ確認日時点でフォロワー(もしくはチャンネル登録、読者登録)数が一定数を超えている場合を著名人として定義しています。
(表2)
*参考:『業界動向サーチ』 https://gyokai-search.com/2nd-genre.htm
2月の炎上事案は178件でした。前月に比べ、39件増加しています。
炎上事案の原因となった問題行動の主体別の内訳では、「著名人」53件(29.8 %)、「法人等」49件(27.5%)、「一般人」76件(42.7%)という結果でした。
また前年同月比では、炎上事案発生件数は71件増加し、「著名人」が28件、「法人等」が23件、「一般人」が59件増加しました。
前月と比較し、2月の炎上事案発生率は「著名人」が5.5ポイント、「法人等」が7.0ポイント減少し、「一般人」が12.5ポイント増加しました。
前年同月比では、「著名人」の割合が7.0ポイント、「法人等」については10.7ポイント減少。
一方、「一般人」は17.7ポイント増加しました。
炎上の原因となった問題行動のうち、166件(93.3%)が「不適切と判断される可能性のある発言・行為。」に該当し、「反社会的行為や規則・規範に反した行為(の告白・予告)。法律に抵触する可能性のある行為。」は12件(6.7%)と少数でした。
炎上の原因となった問題行動の内容としては「2-4」(その他、特定の層を不快にさせるような内容・発言・行為)に該当する炎上が最も多く、次いで「2-3」(非常識な発言・行為、デリカシーのない内容・発言・行為)に該当する炎上が多い結果となりました。
炎上内容の詳細を分析したところ、「非常識な行動(モラルのなさ)」に関する炎上事案が53件、次いで「問題発言」に関する炎上事案が50件でした。
問題行動の主体のうち、「法人等」に該当する炎上49件を業界ごとに分類しました。炎上事案が最も多かったのは「娯楽・レジャー」業界で、16件(32.7%)という結果でした。
問題行動の主体について上場企業か否か、また、それぞれの従業員数について分析しました。
上場区分に関して「上場企業」5社(22.7%)、「非上場企業」17社(77.3%)という結果でした。
また前年同月比では、上場企業の割合が9.4ポイント増加しました。
また従業員数でみると、「1,000人以上」の大企業が14件であり、国内企業における炎上の40.0%を占めました。
前年同月比では、1,000人以上の従業員数の企業の割合が16.9ポイント増加し、100人未満の従業員数の企業の割合が15.6ポイント減少しました。
■炎上事案分析データ2023年2月版のダウンロードはこちらから
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お問い合わせ名称:一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所
代表理事:佐々木 寿郎
アドバイザー:山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)
沼田知之(西村あさひ法律事務所)
設立日:2023年1月20日
公式HP:https://dcri-digitalcrisis.com/
関連会社:シエンプレ株式会社
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