最新の企業炎上とその対策:知っておくべき「いろは」

SNSが社会に深く浸透した現代において、企業が「炎上」と無縁でいることは極めて困難です。かつてはマスメディアが情報拡散の中心でした。しかし今や、SNSやネットを通じた「リークカルチャー」が広がり、インフルエンサーの影響力も増大しています。企業イメージや売上、さらには採用活動にまで深刻な影響を及ぼす炎上について、その発生メカニズムから具体的な対策まで、最新事例を交えながら解説します。
「炎上」とは何か?その始まりと広がり
「炎上」とは、インターネット上で特定の記事や投稿に対し、非難や中傷が殺到し、情報が爆発的に拡散される状況を指します。情報の真偽にかかわらず、多くの人の目に触れる「バズる」こととは異なります。炎上は、批判的な注目を集めるものです。
日本で大規模な炎上事案が初めて発生したのは2003年とされており、2011年頃のモバイルとSNSの普及を境に、個人・企業問わず炎上件数が急増しました。近年では、Xの投稿収益化などにより、「炎上の商業化」が進んでいるとの指摘もあります。
企業が炎上する主な原因と「炎上さしすせそ」
企業が炎上するきっかけは多岐にわたりますが、主にネットユーザーや消費者の怒りを買う行為が発端となります。一般社団法人SNSエキスパート協会が提唱する「炎上さしすせそ」というキーワードは、炎上しやすい投稿テーマを示しています。
●「さ」(差別・災害)
特定の人種、性別、宗教、職業などへの差別や偏見、災害時の配慮に欠けた内容や誤情報の投稿は炎上を招きます。
事例:2024年4月、人事部長の「労働者守られ過ぎ」発言
企業の人事担当者による「上から目線」と捉えられる発言は、コーポレートリスクとなります。
事例:2024年7月、イタリアンバル「中国人・韓国人お断り」掲示
国籍や人種を理由とした入店拒否は、法的に差別にあたり、炎上する可能性が高いとされています。
事例:2024年8月、ベビー・子ども用品店バースデーのTシャツ
「パパは全然面倒みてくれない」などのメッセージが「男性差別」と批判されました。
事例:2024年8月、女性フリーアナウンサーの「夏場の男性の臭い」投稿
異性に対する批判的な投稿は炎上しやすい傾向があります。
事例:2024年9月、大手焼き肉チェーンの女性半額キャンペーン
女性のみを対象としたキャンペーンが「男性差別」と批判され、ジェンダー炎上の論調が変化していることを示しました。
●「し」(思想・宗教)
個人の信条や価値観が絡むテーマは対立を生みやすく、企業が特定の思想や宗教に不用意に触れることは避けるべきです。
●「す」(スパム、スポーツ・スキャンダル)
熱心なファンやアンチが存在するため対立が生まれやすく、スキャンダル(バイトテロ、機密情報漏洩など)も炎上につながります。
●「せ」(セクシャル・政治)
ジェンダー問題やLGBTQに関するトピックは価値観が多様化しており、古い価値観に縛られた発信は非難を浴びやすいです。政治的な話題もユーザーの分断を生む可能性があります。
事例:2025年2月、食品大手メーカーのアニメCM
若い女性の描写が「セクハラ」と批判され、議論を呼びました。
事例:2025年3月、専門小売大手のジェンダー表現
ショーツを着用した女性モデルの写真をECサイトに掲載しました。一部のSNSユーザーからは、「パンツだけ履いた女性の下半身の写真サムネがぞろぞろ出てきて『キモ!』ってなった」などの批判が上がりました。
●「そ」(操作ミス)
企業アカウントの担当者が個人アカウントと間違えて投稿する「誤爆」や、正式発表前の情報流出など、操作ミスによる炎上も少なくありません。
事例:2024年5月、与党代議士の速度超過発覚
車内で撮影された写真にスピードメーターが写り込み、速度超過が発覚しました。
事例:2024年7月、都市公園の公式Xが政治的な投稿
職員が個人アカウントと勘違いして政治に関する不適切な投稿をしました。
事例:Jリーグクラブ公式Xの誤投稿
プライベート端末から公式Xアカウントにクラブと無関係のポストを投稿したとして謝罪しました。アカウントでは公式戦の試合中にスクール水着の女児イラストのポストを引用した投稿が行われたほか、テレビの人気アニメ番組に関する投稿に「いいね」が付けられたとのことです。
さらに、クレーム対応の失敗や異物混入、製品・サービスの品質問題、内部告発なども炎上につながることがあります。最近では、「火のない所に煙が立つ」ように、事実ではない情報から炎上が発生する「非実在型炎上」も出現しています。
炎上させない!ブランドを守る! 「SNS運用のリスク回避&危機管理」 | シエンプレ株式会社
siemple.co.jpどんなSNS投稿が炎上しやすい?企業が注意すべきポイントを解説
SNSは企業の情報発信にも効果的なツールですが、発信したテーマや内容次第で
https://www.siemple.co.jp/isiten/炎上が企業にもたらす深刻な影響
企業が炎上に巻き込まれると、その影響は多岐にわたり、深刻なダメージを伴います。
●集客・売上の減少
企業やブランドイメージの悪化により客足が遠のき、売上が減少します。事業継続が困難になるケースもあります。
●ブランドイメージ・評判の低下
ネガティブな情報はポジティブな情報よりも広まりやすく、誹謗中傷やデマの温床となり、ブランドイメージが著しく損なわれます。
●株価の下落
上場企業の場合、不祥事の規模によっては投資家が保有株を「パニック売り」し、株価が急落するリスクがあります。
●採用活動の停滞・人材流出
ネガティブなイメージは求職者にとって魅力を損なうため、新規応募者の減少や、既存の優秀な人材の離職につながります。
●法的措置・行政処分
ステマ規制のように、不適切な行為は法的な責任を問われ、行政処分につながる可能性があります。
●業務負荷の増大
苦情対応や謝罪、再発防止策の策定など、通常の業務以外に膨大な手間と時間がかかります。
●二次炎上のリスク
初動対応を誤ると、さらなる批判を招き「二次炎上」を引き起こす可能性があり、事態の収束がより困難になります。
炎上被害を最小限に抑えるための対策
炎上の発生を完全に防ぐことはできませんが、適切な対策を講じることで被害を最小限に抑えることが可能です。
1. 早期発見とモニタリング体制の構築
炎上の火種は瞬時に拡散するため、早期発見が最も重要です。自社に関するSNS投稿や口コミ、ニュース記事などを24時間365日体制でモニタリングし、炎上の予兆をいち早く検知できる体制を整えることが不可欠です。モニタリングツールや専門会社への委託も有効な手段となります。
2. 迅速かつ真摯な初動対応
炎上の事実を把握したら、一刻も早く、誠実な姿勢で対応することが求められます。
事実確認と原因究明
何よりもまず、事実関係を迅速かつ正確に把握し、原因を究明します。原因が不明な場合でも、調査中であることを公表する姿勢が重要です。謝罪と説明
謝罪文は誠実さを込めて作成し、「ご不快構文」や責任転嫁は避けるべきです。何に対して謝罪しているのか、なぜ投稿を削除したのかを明確にし、具体的な改善策や再発防止策を示すことが信頼回復につながります。透明性のある情報開示
謝罪文は消費者や関係者の目につきやすい場所に掲載し、情報開示に積極的な姿勢を示しましょう。隠蔽と受け取られるような行為は、二次炎上を招く可能性があります。関係者との連携
SNS担当者だけでなく、法務、広報、経営層など全社で情報を共有することが重要です。一貫した対応を取れるよう、連携マニュアルを整備しましょう。
3. 危機管理体制の構築と従業員教育
炎上を未然に防ぐための予防策として、強固な危機管理体制と従業員への教育が不可欠です。
SNSガイドライン・ポリシーの策定
企業公式アカウントの運用ルールだけでなく、従業員の私的なSNS利用に関しても明確なガイドラインを策定し、周知徹底します。従業員向けSNSリスク研修の実施
「バイトテロ」などの事例を交え、SNS利用の危険性を認識させましょう。炎上が個人と企業に与えるダメージを「自分ごと」として認識してもらう教育が有効です。複数人によるチェック体制
投稿内容の品質維持とリスク低減のため、公式アカウントの運用は複数人で担当することが望ましいです。二重チェックを行う体制を整えましょう。
4. 専門会社への相談
デジタルリスク対策は専門的な知識とノウハウを要するため、自社だけで全てを賄うのは困難な場合があります。デジタルリスク対策を強化するためには、専門会社への相談が非常に有効です。
シエンプレは、予期せぬ炎上、風評被害、誹謗中傷など、あらゆるデジタルクライシス(危機や重大なトラブル)の課題解決を支援する専門家集団です。
シエンプレが提供するサービスを一部ご紹介いたします。
シエンプレのサービス
1. 危機対応支援サービス
- 企業内で不祥事やトラブルが発生し、緊急対応が必要な際に展開される施策を支援します。ネット上で批判が出たり、メディアからの取材依頼を受けたりするようなケースです。
- 具体的には、ネット上の口コミやニュース記事などの論調を詳細に収集します。ネガティブとポジティブを正確に分類し、想定されるリスクを診断します。
- 炎上時は、提携会社と連携して緊急のコールセンターを開設したり、記者会見のセッティングや運営をサポートしたりします。メディアを納得させるプレスリリース執筆などの事後対応も手厚く支援します。
- 事態が落ち着くまでの間は、顧客企業に関するネット上の投稿やネットメディアの論調を継続的にモニタリングし、世論の変化やトーンの微妙な変化を漏れなく報告します。検索エンジンで表示される関連キーワードもチェックし、不適切な語句がヒットした場合でも速やかに沈静化を図ります。
2. ソーシャルメディアリスク研修(従業員向けSNS利用研修を含む)
- 経営幹部から一般従業員まで、あらゆる階層のリテラシーを高めることを目的としています。
- SNSの適切な利用法、公式SNS運用の注意点、危機管理対応のポイントなどを詳しく説明し、炎上リスクを大幅に低減させます。
- 過去の炎上事例を具体的に示し、従業員が「自分ごと」としてSNSリスクを捉えられるように教育します。
- 各企業の状況に応じた最適な研修プログラムを提供します。SNS運用マニュアルの策定・改訂にも役立てることができます。
従業員の炎上を防ぐための『従業員SNS利用ガイドライン策定&SNSリスク研修』 | シエンプレ株式会社
siemple.co.jp3. リスク管理文書作成支援
- SNS利用に関する「指針・目的・ルール」を明確にするため、以下の文書作成をサポートします。
- 「ソーシャルメディア(SNS)ガイドライン」(企業公式SNS利用のルール)
- 「ソーシャルメディア(SNS)ポリシー」(企業としてのSNSスタンス)
- 「ソーシャルメディア(SNS)利用規約」(ユーザー向け規約)
- 「従業員向けソーシャルメディア利用規定」(従業員の私的SNS利用のルール)
- 「炎上対応マニュアル」(炎上発生時の対応フロー)
これらの文書を整備することで、不要なトラブルや情報発信のリスクを回避できます。
- 炎上の予兆を早期に検知するために、自社に関するSNS投稿やネット上の書き込みを24時間体制で監視・収集します。
- 担当者による有人監視とシステムを組み合わせることで、小さなリスクも見逃さず、顧客企業に注意喚起します。
気づいた時には遅かった…とならないためにネット投稿を監視できる『Web/SNSモニタリング』 | シエンプレ株式会社
siemple.co.jp- 転職サイトなどで投稿される企業に関する口コミの多くが事実と異なる、あるいは既に改善済みの内容であるという課題に対応するプラットフォームです。
- 企業が口コミに対して公式見解を表明できる場を提供し、採用活動への悪影響を抑制します。これにより、企業イメージを回復させる効果が期待できます。
デジタル・クライシス対策は、いつ、何がきっかけで起こるか予測が難しいものです。専門会社に依頼することで、豊富な経験とノウハウに基づいた的確な判断と迅速な対応が可能になります。
炎上は企業にとって大きな脅威です。しかし、その発生メカニズムを理解し、平時から予防策を講じることで、被害を最小限に抑えられます。万一の際には迅速かつ誠実に対応し、企業の信頼を回復する道を開くことができます。
お問い合わせ・ご相談フォーム | シエンプレ株式会社
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