導入事例・実績
セブン&アイ・ホールディングスのSNSリスク管理
「管理ではなく支援」で実現したグループ横断のリスクサポート体制

- 会社名
- 株式会社セブン&アイ・ホールディングス
- 業種
- 小売業
- エリア
- 日本全国、海外
- 従業員数
- 152,859人※
※月間163時間換算の臨時従業員含む
「SNSリスクは個別の炎上対応にとどまらず、企業活動全体に関わる経営課題である」──
国内有数のリテールグループである株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニエンスストア事業を中核とする流通グループを傘下に持つ持株会社として、事業会社各社と多数の従業員を擁し、SNSを起点に顕在化し得るリスクに組織横断で向き合ってきました。
各事業会社の主体性を尊重しながら、グループとしての信頼性と安全性をいかに担保するのか。セブン&アイ・ホールディングスが目指したのは、現場を一律に「管理・統制」することではなく、判断を支える「支援型」の体制構築でした。その背景には、専門知見を有する外部パートナーとの連携も含めた、実務に根ざした仕組み設計があります。
今回は、SNSリスクサポート体制の構築を主導された同社 コーポレートコミュニケーション本部 広報部 オフィサーの和田知也様に、課題認識から体制構築、導入後の変化までを詳しく伺いました。
プロフィール
和田 知也 様
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
コーポレートコミュニケーション本部 広報部 オフィサー
課題
- グループ全体の公式アカウントや運用主体を体系的に把握できておらず、リスク発生時の初動対応に不安があった
- 事業会社ごとにSNS運用ルールや体制にばらつきがあり、判断基準の統一が難しい状況だった
- 従業員向けのSNSリスクに特化した教育機会が限られ、最新のリスク環境に十分対応できていなかった
体制構築のアプローチ
- グループ共通の判断軸となる「SNSルール・ガイドライン」の整備
- 最新の事例や動向を継続的に学ぶ「SNSリスク教育研修」の導入
- 専門家の客観的助言を得られる「SNSリスク相談窓口」の設置
導入後の変化(効果)
- 「ルール」「教育」「相談」の連動により、担当者の異動があっても機能する体制基盤を確立
- 担当者が判断を抱え込まずに対応できる環境が整い、事前確認や初動判断が円滑化
- 「相談しやすい・確認しやすい・気づきやすい」状態が醸成され、グループ全体のリスク低減に寄与
個別の炎上ではなく、企業活動全体に関わるリスク
── まず、貴社におけるSNSリスクの捉え方について教えてください。
和田様: 当社では、SNSリスクを単に「投稿による炎上」といった個別事象としてではなく、企業活動のさまざまな局面がSNSを通じて可視化・拡散される可能性のあるリスクとして捉えています。不適切な発信に限らず、施策の進め方や顧客対応、従業員の行動など、SNS外で発生した事象が結果としてSNS上で拡散されるケースも少なくありません。
そのため、SNSを運用している部門だけの問題ではなく、組織全体としてのリスクマネジメントの一環として向き合う必要があると認識していました。
グループのSNS運用実態が“ブラックボックス”だった
── 2022年頃のSNS運用とリスク管理の状況について教えてください。
和田様:私はPR戦略部(当時)でオウンドメディアを中心とした情報発信を担当しており、より多くの方に情報を届ける手段としてSNS活用の検討を進めていました。ただ、会社としての公式アカウントはまだなく、立ち上げや運用方針を模索している段階でした。
一方で、各事業会社ではそれぞれSNSアカウントの運用がされていましたが、当社としては、グループ全体において「どの部署が、どのアカウントを、どのような方針で運用しているのか」を網羅的に把握できていない状況でした。こうした運用実態の把握が十分でないことは、グループ全体のSNSリスク管理の観点では大きな課題だったと感じています。
SNSリスク管理体制の必要性を認識した転機
── SNSリスクへの向き合い方が変化したきっかけはあったのでしょうか。
和田様:ある施策を契機に、従来の体制では十分に支援しきれない領域が存在することが明らかになりました。この経験を通じて、リスクの発生源は必ずしもSNS投稿そのものに限らず、事業活動や日々の運用プロセスに内在している場合もあるという認識が社内で共有されました。
また、社会全体でSNSの影響力が高まる中、従業員の行動や顧客対応などが瞬時に拡散されるリスクも顕在化しています。こうした背景から、SNSリスクは個別対応にとどまらず、経営課題としてグループ横断で取り組むべきテーマであるという判断に至りました。

自社だけでは網羅できない専門領域への対応
── 体制構築にあたり、外部パートナーを検討された背景を教えてください。
和田様:2021年末に、グループとしてのSNSリスクサポート体制の検討指示を受け、短期間で情報収集を進めました。複数の企業を比較する中で重視したのは、単なる助言にとどまらず、専門家ネットワークを含めた継続的な支援体制があるかどうかです。
SNSリスクは法務、広報、マーケティングなど複数の領域にまたがるため、自社の知見だけで網羅的に判断することには限界があります。第三者の客観的視点から助言を得られる体制は、グループ全体としてより適切な判断を行ううえで重要だと考えました。
ガイドラインは「禁止事項」ではなく、共通の判断基準
── SNSルール・ガイドラインの整備は、どのような位置づけだったのでしょうか。
和田様:グループ共通のガイドラインは運用を制限するためのものではなく、グループで共通して留意すべき判断軸を明確にするための基準として整備しました。実運用に即したガイドラインをすでに整備していた事業会社の内容をベースに、最新のリスク事象を踏まえた情報の追加・整理を行い、グループ向けに再構築していただいたことで、抽象的な注意喚起ではなく、具体的な事例に基づく実務的な内容になったと感じています。
その結果、各社・各担当者が同じ前提でリスクを捉えられるようになったことで、発信や施策の検討段階から一定の共通認識を持って判断できるようになりました。
「ルール」「教育」「相談」を連動させた仕組み
── なぜガイドラインだけでなく、研修や相談窓口も併せて導入されたのでしょうか。
和田様:SNSリスクは単一の施策だけで抑制できるものではありません。ルールを整備するだけでは理解や実務への定着が進みにくく、逆に研修だけでは自社のケースに落とし込みが難しく、判断基準が曖昧になりがちです。さらに、リスク環境は常に変化するため、専門的な判断を随時補完できる仕組みも必要だと考えていました。
そこで、「ルール(ガイドライン)」「教育(研修)」「相談(専門家窓口)」を相互に補完する形で整備しました。これにより、担当者の異動があっても知見が失われにくく、継続的に機能する体制を構築できたと感じています。

本記事に関連する弊社(シエンプレ株式会社)のサービス内容(一部抜粋)
専門家の客観的視点が“セーフティネット”に
── 各サービスの導入後、現場にはどのような変化がありましたか。
和田様:まずガイドラインは、グループにおける共通基盤として機能しています。実際の事例を踏まえた内容になっているため、何に注意すべきかを具体的に理解しやすくなりました。
研修については、月1回の定期開催により最新の炎上事例や他社動向を継続的に学べる場として活用しています。単に炎上した事象を知るだけでなく「なぜ問題となったのか」「どう対応すべきだったのか」といった分析を専門家の視点で解説いただける点は、実務判断に大きく役立っています。
相談窓口については、判断に迷う場面で客観的な助言を得られるセーフティネットとして機能しています。自社だけでは評価が難しい事象について、論調やリスクの方向性を迅速に整理できる点は、実務上の安心感につながっています。
セブン&アイ・ホールディングスの役割は「管理」ではなく「支援」
── 体制構築において、セブン&アイ・ホールディングスの役割はどのように定義されていますか。
和田様:私たちが重視したのは、各事業会社が自走できることです。そのため、私たちが一律に管理するのではなく、各事業会社の主体性を尊重しながら判断を支援する立ち位置をとっています。共通のルールや学習機会、専門家への相談環境を整備することで、現場が一人で判断を抱え込まなくてよい状況を目指しました。
その結果、劇的な変化というよりも、「相談しやすい」「確認しやすい」「気づきやすい」状態が段階的に整ってきたという実感があります。第三者の専門的視点を取り入れられることで、落ち着いて判断できる環境が組織として少しずつ根付いてきていると感じています。
多ブランド企業への提言
── 最後に、多ブランド・多拠点でSNSを活用している企業に向けて、SNSリスク管理体制を構築するうえでのポイントや示唆があればお聞かせください。
和田様:人事異動が多い企業では、SNS運用の知見が属人化しやすく、継続的なリスク対応力を維持することが課題になりがちです。今回構築した体制は、知見の継承や体制の維持、従業員のSNSリテラシー向上といった観点で、同様の課題を抱える企業にとって参考になる部分があるのではないかと感じています。
SNSリスクは日々変化し、注意点や判断基準も更新され続けます。重要なのは、現場を過度に統制することではなく、各社が主体的に判断できる前提を整え、必要なときに支援できる体制を構築することです。そうした仕組みこそが、グループ全体の信頼性を長期的に支える基盤になると考えています。一過性の対策ではなく、変化に応じてアップデートできる仕組みとして捉えることが重要だと思います。
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