大手芸能事務所のスポンサー企業に学ぶ模範対応
- 公開日:2023.11.13 最終更新日:2024.11.25
大手芸能事務所の創業者による性加害問題は、産業界にも大きな波紋を広げました。所属タレントを起用しているスポンサー企業も対応に追われ、今後の契約についてさまざまな判断を発表。しかし、SNS上の反応を分けたのは、取引の中止・継続という結論ではありませんでした。今回の事案から、企業が取るべき模範対応について考察します。
目次
創業者の性加害事実が明るみに
「日本のエンターテインメント史上、類を見ない巨大帝国」
こう呼ばれてきた大手芸能事務所A社の「崩壊」はショービジネス業界のみならず、数多くのスポンサー企業が名を連ねる産業界にも激震を走らせました。
発端となったのは2023年3月7日、A社の創業者(故人)による性加害問題を取り上げたテレビのドキュメンタリー番組が英国内で放送されたこと。3月18日には全世界に向けて放送され、大きな波紋を呼びました。
4月12日には、かつてA社に所属していた男性歌手が記者会見を開き、創業者から性被害を繰り返し受けていたと告発。これに対し、A社は「性加害を知らなかった」とする見解を発表したものの、男性歌手と同様の被害に遭っていたという証言が続出します。
事態が大きく動き出すきっかけとなったのは、A社が5月に設置した外部専門家による再発防止特別チームがまとめた調査結果の報告書でした。
特別チームは8月29日の記者会見で「長期間にわたって広範に性加害を繰り返していた事実が認められた」などと指摘。これを受け、A社も9月7日に記者会見を開き、性加害の事実を認めました。
事務所の対応に「NO」 スポンサー離れが加速
この間、SNS上ではA社の所属タレントを起用するスポンサー企業の商品不買を呼びかける活動が始まり、A社のタレントCM起用企業一覧なども公開。「#スポンサー不買宣言」というハッシュタグとともに、スポンサー企業からの回答をシェアする動きも見られました。
国連人権理事会も8月4日に性加害問題について言及し、「政府や、被害者たちと関係した企業が対策を講じる気配がなかった」などと指摘。スポンサー企業への風当たりが強まっていることは、誰の目にも明らかでした。
こうした中、9月7日に初めて開かれたA社の記者会見の焦点は、もはや「性加害を認定するのか」ということだけではなかったと言えます。
ところが、日本中が固唾を飲んで見守った中で発表されたのは、社名の存続や代表取締役の留任でした。
特別チームが求めていた「会社の解体的出直し」には程遠かったばかりか、被害者の具体的な救済策も示さないままの姿勢に世論が納得しなかったのは当然でしょう。多くのスポンサー企業も、A社タレントの広告起用の中止や契約更新の見送りに踏み切りました。
スポンサー各社の評価を分けた「誠実さ」と「一貫性」
大手ビール会社は、社長自らA社との取引停止についてコメント。企業ポリシーに即した毅然とした対応に、SNS上では好意的な反応が見られました。
一方、大手生命保険会社はA社との契約を終了し、タレント個人と契約する意向を表明。中堅製薬会社、大手製薬会社もタレントへの誠実な配慮から、契約満了まで起用する方針などを示しましたが、こちらも好意的に受けとめられました。
しかし、A社タレントの新CM起用を記者会見後の9月10日に発表したものの、一転して取りやめた大手ハンバーガーチェーンには批判的な反応が続出。このチェーンは、一部店舗における店頭ポスターのA社タレントの顏にシールを貼られた写真がSNS上で拡散されたことでも批判を浴びています。
A社タレントの起用を継続する方針を明らかにしていた大手食品会社が、キャンペーンの中止を急きょ発表したことに対しても、ネガティブなコメントが集中して拡散。一方、大手化粧品会社はA社のタレント、スタッフの移籍を促すコメントを発表したことで、「高圧的」との指摘を受けてしまいました。
このように、A社の問題をめぐるスポンサー各社の判断は分かれましたが、SNS上でポジティブに受けとめられた模範対応は「誠実さ」「一貫性」のある動きでした。
重要なのは意思決定を行った理由や観点を明確にすることで、性被害のようにセンシティブな事案ほど毅然とした対応が求められます。
もちろん、世の中の論調や掲げている企業ポリシーに即した一貫性のある対応も欠かせません。すぐに指針を示すことが難しい場合は調査中・検討中の旨を先んじて告知し、明確な方針が決まった段階で迅速に対応する必要があります。
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※2023年9月現在の記事となります。