ソーシャルメディアの情報発信力を見せつけた県知事選と、企業が問われるSNS投稿のリテラシーを考察
- 公開日:2025.01.24

多くの有権者にとって国政・地方選挙の情報源となるメディアと言えば、これまではテレビや新聞でした。しかし、2024年に行われた各級選挙では、ソーシャルメディアで発信された情報が、投票結果をも左右することとなりました。今回は、11月17日に行われた近畿地方の県知事選の事象と、企業が問われるSNS投稿のリテラシーについて考察します。
目次
「ネット世論」が爆発した選挙結果に
2013年4月の公職選挙法改正にともない、日本でもインターネットを使った選挙運動が解禁されてから10年余り。SNSや動画サイトのソーシャルメディアによる「ネット世論」が国政・地方選挙に大きな影響を及ぼした2024年は、本当の意味で「ネット選挙元年」が到来したと言えます。
県職員への「パワハラ疑惑」などにより、県議会に全会一致で不信任決議を可決されて失職した近畿地方の県知事が11月の出直し選挙に立候補し、圧倒的な得票数で再選を果たしたケースも、ソーシャルメディアの強大な情報発信力を見せつけることとなりました。
元知事の陣営はソーシャルメディアを積極的に活用し、聴衆の数が日増しに膨らむ街頭演説の画像・動画、元知事自身のコメントをXやYouTubeに連日投稿しました。
告示前には約7万だった候補者本人のXフォロワー数は、選挙期間中に20万超まで増加。「#元知事がんばれ」 というハッシュタグも広まり、投開票日前日の投稿は3000件以上のリポストがされました。
オールドメディアへの反発も顕在化
開票の結果、総投票数は前回の知事選と大きく変わりませんでしたが、元知事の得票率は55.65%と前回選挙比14.55ポイントの上積みとなりました。
これは、ソーシャルメディアの情報を参考にして、元知事に投票した無党派層の影響が大きかったからと考えられます。
ネット上では、パワハラ疑惑などについて県議会の百条委員会で結論が出ていないにも関わらず、テレビや新聞に代表されるオールドメディアの報道が元知事を一方的に批判し続けたことも問題視されました。
「偏向報道」「百条委員会の隠蔽」など、オールドメディアや県議会への批判を元知事の応援メッセージとあわせて書き込んだSNSユーザーも多く、これに共感した一部のユーザーが同じようなハッシュタグで投稿を続けたことが情報の拡散に寄与しました。
投票で参考にした情報源は「SNSや動画サイト」が最多
大阪大学の三浦麻子教授の調査によると、11月11日から15日にかけて、元知事に好感を持つ層は4倍に増えたといいます。
X上では、元知事に対して「ごめん」など評価の好転を示す投稿も急増し、パワハラ疑惑などのマイナスのイメージが好転したことを表す動きが見て取れました。
中には「うんざり」「悪質」「怖い」などの意見があったものの、ポジティブ投稿の感情分析は「悪くない」「擁護」「名誉回復」などが目立ちました。
また、投開票日にテレビ局が実施した出口調査では、投票先を決めるにあたって最も参考にした情報源は「SNSや動画サイト」が最多の30%を占め、各24%の「新聞」「テレビ」を上回っています。
加えて、ソーシャルメディアの情報をもとに投票した有権者の多くが、元知事に投票したことも判明しました。
元知事を支援したPR会社代表の「ネタバレ投稿」が物議
一方、選挙後は、元知事の選挙運動を支援したPR会社の代表が、ソーシャルメディアをフル活用した具体的な広報戦略・戦術をSNS上で公開しました。
元知事側とのやり取りについても書かれた投稿は、たちまち物議を醸し、公職選挙法違反の疑いを引き起こす重大なリスクとなってしまいました。
このようなリスクを招いた軽率な行動は、影響力が強まっているSNS投稿への意識の低さが引き起こしたと言わざるを得ません。
そもそも、SNSでの情報発信においては機密情報の遵守や個人情報の取り扱いに細心の注意を払い、内部情報は原則として公開しないことが鉄則です。
企業の経営者や広報担当者などの投稿をめぐっては、情報管理に対する意識の低さが問題視される事象がたびたび発生しています。
SNS上は、さまざまな意見や情報が混在するのが常です。100%のユーザーから全面的な賛意を得られることなどあり得ません。
何かしらの投稿をする場合は、受け手側がどう感じる可能性があるかというリスクシナリオを想定しておく必要があります。
企業としては、すべての従業員に不要なトラブルや情報発信のリスクを避ける方法を理解させることも必要で、継続的な教育や研修が欠かせません。
ソーシャルメディアのリテラシーを高めるリスク研修を提供
シエンプレは、経営幹部から従業員まで、あらゆる階層のリテラシーを高める「ソーシャルメディアリスク研修」のサービスを提供しています。
SNSの利用や公式アカウント運用の注意点、危機管理対応のポイントなどの研修を受けることで、炎上発生のリスク低減や炎上時の機会損失の最小化などに役立ちます。
また、炎上リスクの最小化に向けては、「ソーシャルリスク管理基本5文書作成支援」も行います。
基本5文書では、企業公式あるいは従業員個人のSNS利用に関する「指針・目的・ルール」などを定めた「ソーシャルメディア(SNS)ガイドライン」や、炎上発生時の対応フローなどを定めた「炎上対応マニュアル」を用意しています。
社外向けにも、会社としてSNSに関わる際のスタンス・態度・心構えを明示する「ソーシャルメディア(SNS)ポリシー」のほか、会社としてSNSを利用する際の免責・削除方針・禁止事項・調停などの規約をユーザーに明示する「ソーシャルメディア(SNS)利用規約」の作成が可能です。
炎上時に頼れる「危機対応支援サービス」も用意
万が一、炎上が発生した場合も、弊社の「危機対応支援サービス」が効果を発揮します。
炎上時は、ネット上の口コミ評判やニュース記事などに見られる論調を分析し、想定されるリスクを診断します。
さらに、提携会社と連携した緊急のコールセンター開設や、記者会見のセッティング・運営、メディア側を納得させるロジックを備えたプレスリリース執筆といった事後対応も手厚くサポートします。
事態が落ち着くまでの間は、顧客企業に関するネット上の投稿やネットメディアの論調をモニタリングし、世論の変化などを漏れなく報告します。
検索エンジンで表示される顧客企業の関連キーワードもくまなくチェックし、不適切な語句がヒットしたとしても速やかに収束させることが可能です。
炎上のトレンドは、日々移り変わります。リスクを最小化し、いざというときも適切な対応を取るには、専門会社のサポートを受けるのが賢明です。
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