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度重なる不適切対応と繰り返されるバイトテロ…より問われる炎上時の対応力(デジタル・クライシス白書-2024年2月度-)【第118回ウェビナーレポート】

公開日:2024.07.02

人気ドラマ原作者が死去 テレビ局などの姿勢に非難殺到

桑江:最初のテーマは「不祥事」です。
昨年10月にテレビで放送された連続ドラマの原作者である漫画家が亡くなった件で、放送・出版業界に非難が殺到しました。
原作者はドラマの脚本をめぐり、テレビ局側と折り合いがつかなかったといいます。悩んだ末に自らが9、10話の脚本を書かざるを得ないと判断したことを自身のXで告白し、視聴者に謝罪しました。
しかし、告白が大きな反響を呼び、局側への批判が強まると「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」と書き残して投稿文を削除しています。上記についてつづったブログも閉鎖した末に、最悪の結末を迎えてしまいました。
漫画家の訃報に際し、局側はお悔やみの言葉に「最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております」との声明を付け加えたコメントを出しましたが、これに対しても責任を回避したい意図からの記述ではないかなどの反応が相次いでいます。

前薗:世間の論調の調査などを踏まえて自社の責任をどう定義し、外部に説明するかという初動対応は非常に大切です。
自社の責任を否定することには、相当な重みがあります。「自分たちは悪くない」と主張するのであれば、客観的に立証できるだけの証拠を揃えなければなりません。
今回の事案は局側がそのあたりを踏み間違えた結果、大炎上に至ったとみています。

桑江:局側はその後、社内特別調査チームを設置して経緯を検証すると報告しました。
しかし、SNS上では「第三者に委ねるわけでもなく、あくまでも社内調査なのか」という懐疑的な声が上がったのも事実です。

前薗:世間では「社内で調査をしても隠蔽・隠匿するのだろう」という見方が強まっているという現実を押さえておかなければなりませんね。
不祥事が起きても第三者の調査委員会を立ち上げないというなら、今後はその理由を外部に説明しなければならないケースが出てくるだろうと思います。

展示住宅の不備を指摘したSNS投稿者への強硬対応が物議

桑江:住宅メーカー大手の展示場を訪れた会社員男性が、モデルハウスの階段でむき出しになっているタッピングビスを発見し、写真に撮ってX上に投稿しました。
すると、会社側から当該ポストを削除してほしい旨の電話がかかってきたということです。
男性が「そのうち気が向いたら消します」と答えると、支店長とおぼしき人物が夜8時過ぎに男性宅をアポイントメントなしで訪問したといいます。
その人物は名刺を出さず、名前も名乗らなかったそうで、男性は展示場で記入した個人情報を利用して自宅を直撃されたとX上で怒りを露わにしました。
ところが、会社側は公式サイトで男性のXアカウントを名指しし、「当社に対する不適切な投稿がなされました」と報告したのです。その上、男性に対する損害賠償請求の準備をしていることも発表しました。
これについては「『不適切な投稿』と判断したなら対処するのは当然」との意見があった一方、「サイト上で施工などについて丁寧な説明をすれば良かった」「法的措置に出れば懲罰的なスラップ訴訟に当たるのではないか」といった懸念が出て物議を醸しました。
最終的には会社と男性の間で和解が成立したことが明らかになったものの、一般企業としてはかなり特殊な対応だったと思います。         

前薗:展示場で記入した住所への訪問許可を男性から得ることは難しかっただろうと推察しますが、会社側にとって困りものの投稿だったことは確かでしょう。
しかし、投稿内容が事実だったと仮定するなら、まずは施工に不備があったことをきちんと謝罪した上で「投稿の削除をお願いできませんか」という謙虚なスタンスで臨む必要があったと思います。
相手の合意を得られないから訴訟に踏み切るという対応は、社会的に大きい存在である企業が小さい存在の一般個人の口をふさごうとしていると受け止められても仕方ありません。そのため、企業のレピュテーションマネジメントとしては、やはり不適切だったように感じました。
例え法令に則った対応だとしても、世間にどんな印象を与えるかを熟慮しなければ、中・長期的には悪手となってしまう可能性が十分あり得ます。

バイトテロ発生後のリリース対応で明暗

桑江:次は「バイトテロ」です。しゃぶしゃぶ食べ放題チェーン店のキッチン内で、アルバイトの従業員がホイップクリームを口に直接流し込まれる動画がX上で拡散され、批判が広がりました。
チェーン店の運営会社は、動画は店舗内で撮影されたものとしてXの公式アカウントで謝罪しましたが、「当該食材はお客様に提供されていないことを確認しました」という発表文に「こちらは確かめようがない」「半ばもみ消しのように受け取れる対応」といった批判が寄せられています。
一方、ピザチェーン店の制服を着用した人物が鼻に入れた指をピザ生地に練り込むような動きをした動画がX上で拡散した問題では、営業終了後の問題行為の撮影から拡散・炎上、運営会社の謝罪までが同日中に行われました。
これに対し、SNS上では運営会社の迅速な対応を称賛する声や「誠実な対応だったので、むしろ応援する」といったポジティブなコメントが上がっています。
バイトテロの発生リスクをゼロにすることは、もはやできません。企業としては有事に備えて素早く、誠実に対応できる体制を整えておくことが大事です。

前薗:一方で、これらのリリースに対しては「以前も『再発防止に努めます』と言っていたが、それはどうなったのか?」など疑問を呈する指摘もいくつか上がっていました。
企業としては従業員に対する研修やセミナーを通り一遍に実施するだけでなく、実施頻度や講師の見直しなどを含めてリスク発生の防止に努めている姿勢を、社内外にPRできるようにしておくことも重要かと思います。

開幕直前のミュージカル中止に悲鳴も、手厚い補償で鎮静化

桑江:続いては「製品やサービスの不具合・不誠実な対応」です。
人気漫画を舞台化したミュージカルの製作会社と劇場は、開幕直前に初日からの計4公演を中止した経緯を説明するとともに謝罪しました。
中止の理由は「演出プランが複雑で稽古に遅れが生じ、スタッフ・キャストの安全確保の観点から判断した」という主催者側の都合です。
そこで打ち出したのが、4公演のチケット購入者には代金の払い戻しに加え、「購入時にかかったチケット販売手数料」「システム利用料」、さらに中止発表以前に手配した交通機関や宿泊施設のキャンセル料を補償するというものでした。
キャンセルできなかった人に対しては、1公演につき1泊分の宿泊費を負担することも発表しています。これらの手厚い対応により、チケット購入者から大きな悲鳴が上がっていた事態の鎮静化に成功しました。
自社に非がある場合の補償をめぐっては、「あの会社はこうしてくれたのに…」という不満を招いてしまうことがよくあります。そのため、補償内容は他社の類似事例の対応と被補償者の納得度を慎重に把握した上で決めなければなりません。

前薗:補償内容を決める際は、被補償者の期待を少し上回るように配慮することがポイントになる気がします。「ここまでカバーしてくれるのか」と感心してもらえれば、不利益を被ったことに対する溜飲は速やかに下がっていくはずです。

引っ越し時のトラブル被害と対応への不満がSNS上で拡散

桑江:X上では、大手の引っ越し業者に新居の壁や荷物を傷つけられる被害に遭ったという投稿が拡散されました。
投稿によると、この業者からは傷ついた洗濯機は交換対応すると言われたものの、その他については納得できる対応を受けていないそうです。
この投稿は4000リポスト以上も拡散され、同様の被害報告も相次いで寄せられています。

前薗:不祥事の顧客対応は、目の前で起こっている事象だけで済まされるわけではありません。
ユーザーがSNS上にクレームを投稿すれば、別のユーザーから「私もこんな目に遭った」という声が寄せられて炎上することも考えられます。
企業としては、そのようなリスクまで考慮した対応が欠かせないということを認識しておかなければなりません。

注目のSNS「Bluesky」が一般開放

桑江:最後は「今月のトピックス・注目記事」です。旧Twitter社の共同創業者で元最高責任者によるSNSの「Bluesky」が、誰でも登録できるようになりました。日本人のアカウントも増えており、公式アカウントを開設している企業も見受けられます。
Blueskyには、フォロワーのみに投稿公開を限定する「鍵垢」の機能はありません。そのため、日本ではそれほど普及しない気もしますが、X、Instagram、Threadsとの使い分けは重要になってくると思います。

前薗:私も使ってみましたが、XやThreads以上のプラットフォームにはならないかなという印象を受けました。

桑江:著名人の中には、Xのサブアカウント的な位置付けでThreadsを使っているケースも見られます。各プラットフォームにおけるフォロワーの反応率の違いを追っていくのも面白いのではないでしょうか。

 

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