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繰り返される不適切発言、対応 SNS拡散による炎上の多い5月を振り返る(デジタル・クライシス白書-2024年5月度-)【第121回ウェビナーレポート】

公開日:2024.07.09

人気俳優のSNS発言に「女性蔑視」の批判が殺到

桑江:最初のテーマは「ジェンダー・フェミニズム」です。
人気男性俳優のA氏がInstagramのストーリーでファンから寄せられた「出産こわいよー」という投稿に対して「旦那様に無痛おねだりするか」と発言し、「女性蔑視ではないか?」との指摘が相次ぎました。
その後、A氏は発言の意図を説明して謝罪しましたが、著名な暴露系インフルエンサーが取り上げたことで大きな話題となり、批判が殺到しています。
これまでなら「芸能人の失言」で終わっていたと思われますが、A氏をCMに起用している洗剤メーカーには契約解除を求める声が上がり、広報部にもメディアからの問い合わせが寄せられました。
A氏が所属する大手芸能事務所では、過去にタレント個人のSNS使用を禁止していた経緯もあり、SNS上では「禁止令は正しかった」という声が上がっています。

前薗:ファンからの投稿は生配信ではなく、Instagramの質問機能を使って募集したものでした。そのため、ピックアップするか否かの段階から取捨選択できたかと思います。
出産、育児、ペットなどのトピックスは炎上リスクが高く、そもそも取り上げないという選択肢もあったのではないかと感じました。

テレビ番組の「ジェンダー体操」 放送5年後に物議

桑江:2019年にテレビ番組で放送された「ジェンダー体操」の動画がSNS上で再び注目され、物議を醸しています。
「ジェンダー体操」は「性別とは何かをダンスで学ぼう!」という趣旨に沿ったもので、踊っているのはLGBTQの当事者です。
しかし、性的な言葉を連呼しながら踊るシーンなどが批判され、著名な暴露系インフルエンサーも取り上げたことで広く拡散されました。
数年前のコンテンツが改めて取り上げられて炎上するケースは、これまでもたびたび見受けられました。今回の事案も、そのパターンのひとつです。

前薗:過去のコンテンツであっても、いつ何時一人歩きするかわかりません。そのような構図は、客テロやバイトテロの動画にも当てはまると思います

子育てはお母さんの役割? 「母の日」広告に賛否

桑江:次は「不適切発言・表現」です。
JR東京駅の商業施設に掲示された「母の日」向けの広告が、SNSで議論を呼びました。広告は「こどもに帰ろう」というキャッチコピーと、きっぷを模したデザイン上の「ずっと小児」という表現で、母親への感謝を表すものでした。
しかし、「異常さを感じる」「気持ちだけ小児に戻るのが親孝行なのか?」など違和感を訴える声が上がり、施設運営会社は「ご指摘のような意図ではなかった」としつつ広告を撤去しています。
子育てはお母さんの役割と思わせること自体に嫌悪感を示すSNSユーザーは一定数存在します。今回は、そのあたりも踏まえて表現を考える必要があったでしょう。
一方、この事案を巡るネット上の意見は、賛否両論だったことも事実です。そのため、広告を撤去すべきだったかどうかは議論の余地がある気がします。

前薗:「父の日」「母の日」について、何らかの発信をすること自体が許容されなくなるということは考えにくいでしょう。
ただし、お父さん、お母さんの役割を一方的に押し付けない表現を心がける必要はあると思います。例えば、「いつもありがとう」というメッセージなら感謝を伝えるだけなので問題ありませんが、「お母さん、いつもご飯を作ってくれてありがとう」となると、「ご飯を作るのはお母さんの役割」という考えを押し付けるように感じさせてしまいかねません。

楽器や彫刻を破壊 最新タブレットの動画広告に批判殺到

桑江:米国の巨大IT企業B社が発表したタブレット端末の最新モデルの動画広告を巡り、楽器や彫刻などがプレス機で押しつぶされる映像に批判が殺到しました。
現地の大手新聞は「デザイナーや俳優、アーティストたちから批判の嵐にさらされた。人類が何世紀もの間使ってきた芸術の道具を押しつぶすことで、巨大IT企業がいかに仕事を奪って儲けてきたかを示すものと受け止められた」と報じています。
日本では他者を貶めるようなメッセージング、クリエイティブは嫌われる傾向にありますが、今回は海外でも批判的な声が上がりました。
楽器やモノには愛用者がおり、自分が破壊された、傷つけられたというような印象を与えたことが、人を不快にさせて発生する炎上に結び付いたと思います。

前薗:私もインパクトのある広告だと感じながら視聴しましたが、やはり否定的な声が多かったという印象です。古い価値観を打破してきたB社を支持する往年のファンでさえ、好んではいないように思います。

車内で撮った写真のSNS投稿で速度超過が発覚

桑江:続いては「SNS運用(誤爆・公私混同)」です。
与党の代議士がSNSに投稿した写真から、秘書が運転する車で速度超過をしていたことが発覚し、記者会見を開いて謝罪しました。
車内で撮影された写真にはスピードメーターが写り込んでおり、速度超過に気付いたSNSユーザーの投稿が拡散して批判が高まりました。
この代議士の事務所スタッフが起こした車を巡る不祥事は3度目で、SNSユーザーにマークされていたのではないかと思います。

前薗:一部で上がっていたのは、「代議士が急がせたのではないか?」「無理をさせたのではないか?」という声です。
このように、1つの情報からさまざまな観点で推測されてしまうということも、あわせて押さえておいていただければと思います。

人気中華料理店オーナーシェフが日本人への発言で謝罪

桑江:東京都内で7店舗を展開する人気中華料理店Cのオーナーシェフが、SNSでの発言が物議を醸したことについて謝罪しました。
中国に対して批判的な投稿をしているあるXユーザーが、WeChatとTikTokで公開された中華料理店Cの中国語のインタビュー動画の一部を日本語に翻訳し、「いつか必ず日本人を俺の店で皿洗いさせてやる」などの発言を投稿したことで、同店に批判が集まりました。
その後、オーナーシェフは自身のXアカウントに謝罪文を掲載し、「日本人への感謝も述べている」と釈明しましたが、このXユーザーが改めてインタビュー全文を翻訳して投稿したところ、「日本人への感謝の部分はない」など、さらなる批判を招きました。
動画コンテンツは、ネット上で視聴できる動画は作為的に切り取られてしまうリスクがあります。反論するなら「この内容で大丈夫か?」「どのように捉えられるか?」という確認をしっかり行い、批判を浴びないように対策を講じるべきです。

前薗:基本的に、動画は切り取られると考えた方が良いでしょう。全体をしっかり視聴してもらえない可能性があることを踏まえ、1つ1つのフレーズが一人歩きしても問題ない内容なのかをチェックする必要があります。
企業の採用現場でも動画を用いる場面が増えていると思いますので、広報・宣伝に携わる方々には十分注意していただきたいですね。

ピザ配達バイクの運転手が危険運転

桑江:次は「バイトテロ」です。
大手ピザチェーンD社は、店舗の配達用バイクの運転手が危険運転を行っている映像がSNS上で拡散されたことについて謝罪しました。
Xに投稿されたドライブレコーダーの映像には、信号無視や逆走をするバイクの様子が映っており、投稿した男性は「D社の看板を掲げたバイクが安全に運転しないことに危険を感じ、注意喚起を目的として映像を公開した」と述べています。
D社はこのドライバーを特定し、社内規定に基づいて厳正に対処したと発表しました。

前薗:ドライブレコーダーや防犯カメラ、インターホン越しの類似動画は、話題になっていないものを含めて週1、2件はSNS上に掲載されています。
BtoCや物流の企業などは、このような映像コンテンツを社内でしっかりチェックし、先手を打って対処していくレベルまで踏み込まなければ、こうした問題から逃れられないでしょう。

焼き肉店の男性客が迷惑行為 SNSで動画が拡散

桑江:続いて「客テロ(迷惑行為)」です。
東京・新宿の焼き肉店を訪れた男性客がジョッキに放尿している動画を著名なインフルエンサーが投稿し、広く拡散しました。
店舗の運営会社はただちに同店の営業を停止し、すべてのジョッキを新品に入れ替えたとともに店内と設備の除菌清掃、食器類の消毒を行ったと発表しました。
その上で、今後は警察と相談しながら、お客様を不安にさせる行為には厳正に対処するとしています。

前薗:企業としては、こうした迷惑行為は起こってしまうものと考えなければなりません。警察や消防に相談するなど、刑事と民事の両面から厳しく対処することが必要かと思います。

「表へ出ろ、この野郎」 ファストフード店員が高齢客に激高

桑江:次は「製品やサービスの不具合・不誠実な対応」です。
大手ファストフードチェーンE社の店舗で男性店員と高齢の男性客のトラブルが発生し、男性店員が「こいつは俺を侮辱した」「今すぐ帰れ」「表へ出ろ、この野郎」などと激高する様子を撮影した動画がSNS上で拡散されています。
近くにいた女性店員がなだめても騒動は収まらず、男性店員はカウンターから出て男性客に詰め寄ろうとしました。
E社の広報部は動画の内容を事実と認めて謝罪し、再発防止に向けて顧客対応に関する啓発などを進めていることを発表しています。
一方、実際は来店していないにも関わらず、その場にいたと主張するSNSユーザーの存在が確認され、事実と異なる形で動画が拡散している可能性も指摘されました。

前薗:Googleビジネスプロフィールには、当該店員とおぼしき人物の接客態度などに対するクレームが複数掲載されています。
少なくとも何らかの不満足を抱える顧客がいたことはわかりますので、事前にトラブルを防ぐための対応ができていたのかが再発防止のポイントとして重要かと思います。

食パンにネズミ混入も、スピーディーな対応に好評価

桑江:大手製パン会社F社は、食パンに異物が混入していた件について謝罪しました。
混入したのは工場外から侵入したとみられるクマネズミの子どもだったという調査結果と、同じラインで製造された商品の自主回収とラインの停止もあわせて表明しています。
この事案で注目すべきなのは、メディアやインフルエンサー、あるいはSNS投稿によって何らかの指摘を受ける前に、同社が調査・報告に乗り出したということです。
ネズミの混入という事象自体は強いインパクトがあるものの、F社に対して「隠蔽しているのではないか?」といった批判は見受けられませんでした。
その要因は、スピーディーな調査と自主回収、公式サイト上のわかりやすい表記にあると思います。実際、公式サイトのトップページには、一番目立つ場所に「お詫び」などのリリースのリンクが貼られています。「目に付かないようにしている」といった指摘は皆無で、「真摯な対応」という評価を得ていると感じます。

前薗:食品メーカーや飲食店にとっては、人体への悪影響が懸念される不具合が見つかった場合、商品の回収をいかに早く徹底できるかが重要なので、参考になる事案だと思います。「市場に流通させておかない」という意思決定を速やかに下せたことが大きかったのではないでしょうか。

「可愛くて仲良くなりたい」 面接官が就活生に私的連絡

桑江:就職が内定した企業の面接官から「プライベートのSNSアカウントを教えてほしい」との連絡があったというX投稿が、物議を醸しています。
私的な連絡には「可愛くて個人的にもっと仲良くなりたい」「Slackだと話しづらいので、LINEやインスタ教えてもらえませんか」などと書かれており、面接官が勤める企業に対しても批判の声が上がりました。
何事もSNS上ですぐにリークされる昨今、就活生と社員が私的な連絡を取り合うこと自体を厳しく制限する企業も増えており、しっかりとルールを定めて守ってもらうことが重要かと思います。

前薗:採用目的でお預かりした個人情報の目的外利用など、法令違反を指摘されてしまう可能性も十分にある事案です。企業としては、厳しい対処を社内外に明示しておくことで防いでいくしかないと思います。

企業発信の文面作成に有用 文化審議会の指針が話題に

桑江:さて、最後は「今月のトピックス・注目記事」について解説します。
国の文化審議会が約70年ぶりに改定した「公用文作成の考え方」(2022年公表)が、ネット上で改めて話題となっています。
資料には公用文の基本的な考え方、漢字や送り仮名・外来語などの表記の原則、用語の使い方、伝わりやすい公用文などの説明が記載されており、「論文を書く人や社会人の役に立つ」と好評です。
最近は企業が発信するリリースなどの文面の稚拙さが指摘されることも多い中、公式アカウントやリリースで用いる言葉遣いの参考となるでしょう。
誰でも閲覧できますので、検索してみていただければと思います。

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