SNS炎上はXだけにあらず!?企業が取るべき理想のリスクマネジメント
- 公開日:2025.02.07 最終更新日:2025.02.14

著者:前薗 利大
目次
新たなプラットフォームが続々と登場
SNSの原型といわれるアメリカ発祥のプラットフォーム「SixDegrees.com(シックスディグリーズドットコム)」が誕生したのは、1997年のことです。それから30年近くを経た現在は、XやInstagram、TikTokなど、さまざまなSNSが定着しました。
一方、ここ数年は、新たなプラットフォームも続々と登場し、それぞれがユーザー数を伸ばしています。
例えば、2020年に公開されたフランスの「BeReal(ビーリアル)」は、自分が今どこにいて、何をしているかというリアルな日常生活の一部を撮影し、友達と共有できる点がZ世代などに支持されています。
1日1回不規則に指定される時間帯に、自分とその周りの写真を2分以内に投稿するよう通知が届き、写真を加工する機能を排除して「素の自分」を見せられる仕様が特徴です。
また、2023年にアメリカのMeta社がリリースした「Threads(スレッズ)」は、500文字以内の文章や画像・動画を投稿でき、Instagramと連携しています。
「Xに代わるSNSプラットフォームになりそう」という期待も高まり、サービス開始からわずか5日間で全世界のユーザー数が1億人を突破しました。
リアルタイムでの拡散性が高いSNSの裾野が広がることは、企業やブランドのプロモーションにとっても大きなメリットをもたらすように思われます。
ただし、新たなプラットフォームの普及は、企業やブランドの炎上リスクを高めることにもなります。これは一体、どういうことなのでしょうか?
勤務中の投稿や情報漏洩が増える可能性も
BeRealがさらに普及すれば、ユーザーである自社の従業員が投稿時間帯の通知を受け、就業時間中にこっそりと写真を撮ってアップするリスクが増すと考えられます。実際に、飲食チェーンなどでは、従業員がアイドルタイム中などに投稿する行為が発生しているそうです。
それだけでなく、投稿時間帯が制限されている中では、写真自体に問題がないかを十分に検証する余裕がありません。就業時間中に社内・店内で撮影した写真が投稿されれば、個人情報や機密情報の漏洩につながる可能性が高まると見ています。
BeRealの大多数のユーザーは個人であるため、企業の公式アカウントが不適切な発信により炎上するというパターンは起こりにくいかと思います。しかし、チェックが不十分なコンテンツが投稿されかねないということには、危機感を覚えます。
企業におけるリスクを防ぐためには、職場内へのスマートフォン持ち込みを規制し、厳格に履行する体制を敷く必要があります。また、従業員によるBeRealの利用を想定したガイドラインやルールを整えることも重要です。
炎上の「入口」が広がっている
新たなプラットフォームの誕生は、炎上の「入口」を広げることにもなります。SNSの歴史を振り返っても、それが事実であることがわかります。
2013年に社会問題化した「バカッター」は、Xの前身である旧Twitterへの非常識な投稿内容がそのまま拡散し、炎上に至るパターンが大半でした。
その後、2018年から2019年にかけて多発した「バイトテロ」は、Instagramのストーリーズで公開された不適切投稿が旧Twitter上に流出し、炎上するケースが目立ちました。
さらに、2023年に回転寿司店などで急増した「客テロ」は、YouTubeショートやInstagramリール、TikTokのショート動画に迷惑行為を撮影したコンテンツが投稿され、X上に転載されたことで炎上しています。
これまでの変遷から、新たなプラットフォームが増えれば増えるほど、炎上を引き起こす画像・動画が投稿される場所も拡大するといえるのです。
Ⅹでは確認されていない炎上が発生
炎上の「出口」も、X以外のプラットフォームに広がりつつあります。
直近でも、食品メーカーの異物混入や、ハウスメーカーの住宅の瑕疵を告発する情報がThreadsに投稿され、それぞれ100万を超えるビューと、数多くのユーザーからのコメントが書き込まれました。
両事案の情報は、X上にはほとんどアップされませんでしたが、仮にThreadsと同様の反響があったとすれば、中規模程度の炎上になったでしょう。これは、炎上した企業が事実関係の究明や謝罪などの対応に乗り出さなければならないほどのインシデントになり得ます。
これまでは、XやInstagram、TikTokが「強いSNS」として世界的に君臨してきました。しかし、SNSユーザーにとって、プラットフォームの選択肢は確実に増えています。
SNSの特性は、多くのユーザーが閲覧した情報ほど拡散の勢いが増すことです。Threadsなどの新興プラットフォームも例外ではなく、ユーザー数がさらに増えていけば世間への拡散力や影響力が増すはずです。
そうなると、X上では取り沙汰されなかった事象であっても、他のプラットフォーム上でやり玉に挙がらないとは限りません。 XとThreadsが対照的な動きを見せた今回の出来事は、そのことを如実に物語っていると言えます。
SNSのモニタリング環境整備が一層重要に
ソーシャルリスニングのシステムなどを駆使してSNSをモニタリングしている企業は、「自社は十分なリスクマネジメント体制を取れている」と考えるかもしれません。
しかし、既存のモニタリングツールによる自動アラートは、原則的にXに投稿されたコンテンツのみが対象です。「ツール会社と契約しているから安心」というような考え方こそがリスクマネジメントの盲点で、ともすればInstagramさえチェックできていない企業も実際に見受けられます。
炎上の「出口」の大半をXが担ってきた経緯から、「Xの投稿さえ把握しておけば良い」という風潮も、まだまだ根強いのは事実です。
確かに、現時点ではXの投稿を押さえておけば、7〜8割の炎上は認知できるでしょう。
しかし、異物混入や食中毒、あるいはバイトテロなどが発生した場合は先手を打って対応し、世間で騒がれる前に解決済みの状態にしておくことが理想です。そのためには、ThreadsやBeReal、さらには2024年12月にサービスを開始した「mixi2」などの投稿も把握できる体制の構築が求められます。
XやInstagramなどの「メガSNS」は、サービスを利用しているプラットフォームを乗り換える際のスイッチコストが大きいため、これ以上増える要素があるとは考えにくい状況です。その一方、「X疲れ」や「映え疲れ」を感じているSNSユーザーをターゲットとしたプラットフォームは、今後もさまざまな切り口で生まれてくることが予想されます。
炎上の入口が、さらに多様化すれば、自社の評判や消費者からの信頼が気付かないうちに損なわれてしまう事態も起こり得ます。
もちろん、モニタリングに費やせるコストには限界があります。そのため、自社の顧客属性などを踏まえ、どこまでのプラットフォームを追跡してリスクを顕在化させるべきかを考えなければなりません。
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