炎上事案分析データ2025年11月版(調査対象期間:2025年11月1日~2025年11月30日)

シエンプレ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:佐々木 寿郎)は、一般社団法人 デジタル・クライシス総合研究所(住所:東京都港区、所長:佐々木 寿郎)と共同で、調査対象期間に発生したネット炎上についての件数と、その内訳、分析結果を公開しました。
目次
■調査背景
2025年1月28日、デジタル・クライシス総合研究所はソーシャルメディアを中心とした各種媒体とデジタル上のクライシスの特性、傾向と論調を把握するために「デジタル・クライシス白書2025」(調査対象期間:2024年1月1日~2024年12月31日)を公開しました。 継続調査の結果報告として、今回は2025年11月1日〜2025年11月30日の調査対象期間に発生した炎上事案について、新たに分析しています。
○「デジタル・クライシス白書2025」は以下から、ダウンロードが可能です。
■調査の概要

■調査結果
1. 炎上主体別 発生件数
1-1. 炎上主体別 発生件数と割合(前月比)
11月の炎上事案は147件でした。前月に比べ、119件減少しています。 炎上主体別の内訳では、「著名人」74件(50.3%)、「一般人」29件(19.7%)、「メディア以外の法人」28件(19%)、「メディア」16件(10.9%)という結果でした。
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割合については下図のとおり、前月と比較し、「著名人」が2.3ポイントの減少、「一般人」が2.1ポイントの減少、「メディア以外の法人」が0.2ポイントの増加、「メディア」が4.1ポイントの増加という結果でした。
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1-2. 炎上主体別 発生件数と割合(前年平均比)
前年平均比では、炎上事案は45件増加しています。
炎上主体別の内訳では、「著名人」が36件の増加、「一般人」が変動なし、「メディア以外の法人」が2件の増加、「メディア」が7件の増加という結果でした。
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割合については下図のとおり、前年平均と比較すると、「著名人」が13ポイントの増加、「一般人」が8.7ポイントの減少、「メディア以外の法人」が6.5ポイントの減少、「メディア」が2.1ポイントの増加という結果でした。
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1-3. 炎上主体別 発生件数と割合(前年同月比)
前年同月比では、炎上事案は72件増加しています。
炎上主体別の内訳は、「著名人」が41件の増加、「一般人」が8件の増加、「メディア以外の法人」が16件の増加、「メディア」が7件の増加という結果でした。
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割合については下図のとおり、前年同月と比較し、「著名人」が6.3ポイントの増加、「一般人」が8.3ポイントの減少、「メディア以外の法人」が3ポイントの増加、「メディア」が1.1ポイントの減少という結果でした。
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2. 炎上の内容別 発生件数
2-1. 炎上の内容別 発生件数と割合(前月比)
炎上内容別の内訳では、「情報漏洩」が2件(1.4%)、「規範に反した行為」が19件(12.9%)、「サービス・商品不備」が15件(10.2%)、「特定の層を不快にさせる行為(※)」が111件(75.5%)という結果でした。
前月と比較すると、「情報漏洩」は1件の増加、「規範に反した行為」は32件の減少、「サービス・商品不備」は17件の減少、「特定の層を不快にさせる行為」は71件の減少という結果でした。
※特定の層を不快にさせる行為:法令や社会規範に反する行為ではないものの、他者を不快にさせる行為(問題行動、問題発言、差別、偏見、SNS運用関連など)
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割合については下図のとおり「情報漏洩」が1.ポイントの増加、「規範に反した行為」が6.3ポイントの減少、「サービス・商品不備」が1.8ポイントの減少、「特定の層を不快にさせる行為」が7.1ポイントの増加という結果でした。
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2-2. 炎上の内容別 発生件数と割合(前年平均比)
前年の平均発生件数と比較すると、「情報漏洩」が1件増加、 「規範に反した行為」が11件増加、「サービス・商品不備」が7件増加、「特定の層を不快にさせる行為」が26件増加しました。
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2-3. 炎上の内容別 発生件数と割合(前年同月比)
前年同月の件数と比較すると、「情報漏洩」が2件増加、「規範に反した行為」が15件増加、「サービス・商品不備」が11件増加、「特定の層を不快にさせる行為」が44件増加しました。
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3. 炎上内容の詳細区分別 発生件数
炎上内容の詳細を分析したところ、「問題発言」に関する炎上事案が41件と最も多く、次いで「接客・対応方法」に関する炎上事案が32件でした。

4. 法人等の業界別発生件数
4-1. 法人等の業界別発生件数と割合(炎上の内容別)
炎上主体のうち、「法人等」に該当する炎上44件について、業界ごとに分類しました。炎上事案が最も多かった業界は「メディア」業界で、16件(36.4%)という結果でした。
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業界別の炎上種別を割合で見た場合、結果は下図のとおりです。
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5. 企業規模別の炎上発生件数と割合
炎上の標的が「法人等」の場合について、上場企業か否かや、それぞれの従業員数について調査しました。
なお「法人等」に該当する炎上事案は、日本国内に所在する企業のみを対象としています。
また、公共団体や政党、企業概要や従業員数等の情報が公開されていない団体は調査対象から除外しています。
そのため、本項目における調査対象の総数は27件です。
5-1. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前月比)
上場区分に関して「上場企業」が主体となった事例が3件(11.1%)、「非上場企業」が主体となった事例が24件(88.9%)という結果でした。
前月と比較すると、「上場企業」の件数は3件減少、「非上場企業」の件数は15件減少しました。
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割合を比較す「上場企業」の割合は2.2ポイント減少しました。
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5-2. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年平均比)
前年平均と比較すると、「上場企業」の件数は3件減少、「非上場企業」の件数は6件増加しました。
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割合を比較すると「上場企業」の割合は13.9ポイント減少しました。
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5-3. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年同月比)
前年同月と比較すると、「上場企業」の件数は横ばい、「非上場企業」の件数は11件増加しました。
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割合を比較すると、炎上した企業のうち、「上場企業」の割合は7.7ポイント減少しました。
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5-4. 炎上の対象となった従業員数と売上高の散布図
従業員数500人未満、売上高は500億円未満の企業で炎上事案が多く発生しました。
なお、グラフの集計範囲外ですが、従業員数約4万人、売上高約1兆7,000億円といった大企業の炎上事案も確認されました。

■分析コメント
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授 山口 真一氏2025年11月の炎上事例で印象的だったのは、アイドルグループ「timelesz」の篠塚大輝さんによるテレビ番組での発言をきっかけに、広告起用企業であるAOKIの公式X投稿までが炎上の文脈に巻き込まれた一件です。生放送中の童謡「大きな古時計」の替え歌で「今はもう動かない、おじいさんにトドメ~」と言いながら殴りかかるようなジェスチャーをするギャグが、「不謹慎」「倫理的に問題がある」と受け止められ、SNS上で批判が広がりました。また、ほぼ同時刻に投稿された企業のメッセージが、意図とは無関係に「擁護ではないか」と疑われ、企業側にも批判が波及しました。
今回の事例は、芸能人個人の発言を起点として、広告主である企業の公式発信までが炎上の対象となってしまう典型的なケースです。AOKI側は「意図して制作・投稿したものではない」と説明していますが、それ自体が虚偽であるかどうかとは別に、「そう見えてしまう状況」がSNS上では容易に生まれるという点が重要です。
近年、批判的な言動や暴力的、あるいは死を想起させる表現に対する社会の感度は、昔に比べてかなり高まっています。かつてであれば、その場の空気や文脈の中で消化されていたギャグであっても、現在では短い映像が切り取られ、急速に拡散されます。その結果、「不謹慎」「配慮に欠ける」といった評価が一気に可視化され、炎上につながるケースが増えています。 さらに、広告に起用しているタレントが炎上している最中の企業発信は、タイミング次第で「擁護」や「容認」と受け取られてしまうリスクを伴います。企業側に悪意や意図がなかったとしても、それが十分に伝わらないのがSNSの特性です。そのため、公式アカウントの運用には、平時以上の慎重さが求められます。
重要なのは、「何を発信するか」だけでなく、「いつ発信するか」という視点です。定例的な投稿であっても、起用タレントや社会的に注目されている話題で炎上が起きていないかを迅速に把握し、場合によっては一時的に投稿を見送る、確認プロセスを挟むといった判断が必要になります。炎上を完全に防ぐことは難しいものの、兆候を早くキャッチし、無用な誤解を招かない対応を取れるかどうかが、企業の信頼を左右します。
今回の一件は、企業広報にとって「発信しないことも含めた判断」が問われる時代に入っていることを示す事例だと言えるでしょう。意図の有無にかかわらず、どのように受け止められ得るのかを想定したうえでの発信姿勢が、これまで以上に重要になっています
■(参考)分類基準
1.分類基準(炎上の主体)
抽出したデータは以下の表1に基づき分類しました。
(表1)分類基準(炎上の主体)

参考:山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授):
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、2016
公に情報を発信する機会の多いメディア関連の法人については、炎上に至る経緯に違いがあるため、他業種の法人と分けて集計しています。
2.分類基準(炎上の内容)
抽出したデータは以下の表2に基づき分類しました。
(表2)分類基準(炎上の内容)

参考:山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授):
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、2016
3.分類基準(業界)
また、炎上の主体が「法人等」の場合、20の業界に分類しました。
なお、該当しない業界に関しては「その他」としてデータを処理しました。

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■一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所 概要
名称 :一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所
代表理事 :佐々木 寿郎
アドバイザー:山口 真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)
沼田 知之(西村あさひ法律事務所所属弁護士)
設立日 :2023年1月20日
HP :https://dcri-digitalcrisis.com/
関連会社 :シエンプレ株式会社
