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Web上に潜む「見えざる手」との攻防 レビュー操作・転売ヤーなどの新たな脅威とは(デジタル・クライシス白書ー2025年8月度ー)【第137回ウェビナーレポート】

Web上に潜む「見えざる手」との攻防 レビュー操作・転売ヤーなどの新たな脅威とは(デジタル・クライシス白書ー2025年8月度ー)【第137回ウェビナーレポート】

※2025年8月27日時点の情報です

高校野球部内の暴力事案がSNSで告発

桑江:2025年1月、広島県の広陵高校野球部内で暴力事案が発生しました。この事案とその対応がSNSでの告発をきっかけに物議を醸しています。同校は甲子園の1回戦に勝利しましたが、その後2回戦への出場を辞退するという異例の事態となりました。

野球部内で暴力を受け、転校を余儀なくされた生徒の母親が甲子園開幕直前の8月2日、「被害届を提出したが、高校側が警察の捜査よりも野球部の活動を優先し、捜査が進まない」「高野連にも連絡したが取り合ってもらえなかった」と自身のSNSで主張し、この投稿がSNS上で急速に拡散されました。

さらに産経新聞が、同校が1月の暴力事案を事実と認めたと報じたことで、批判の矛先は同校や高野連に加え、甲子園主催者の朝日新聞にも向かいました。一部のSNSでは、甲子園出場選手の顔写真や、加害生徒を実名つきで断定した書き込みも見られる事態に発展しています。

同校は公式サイトで暴力事案の経緯を説明したうえで謝罪し、新たな暴力事案については「確認できなかった」としました。

しかし、その後も同様の被害を受けたとする生徒の親がSNS上で告発し、さらなる批判が巻き起こっています。

前薗:告発のプラットフォームがSNSだったことや、自分も同じ目に遭ったという「Me Too」の声が続出したことに、改めて時代の変化を感じます。本件では暴力行為だけでなく、学校側の姿勢にも批判が上がりました。世の中の批判に正面から応えず、SNS上の誹謗中傷などに焦点を当て、自分たちの問題を矮小化するかのようなコメントを出したためです。

小さな不祥事だとしても、事実関係の公表を求める世間の圧力がかなり高まっていることは押さえておかなければなりません。「解決したので大丈夫です」という論理で幕引きを図るのは難しいと思います。

公式Xに投稿した簡単レシピに賛否両論

桑江:大手食品メーカーAの公式Xで、自社製品に関する投稿内容が物議を醸しました。投稿されたのは、自社商品の「冷やし中華つゆ」を使ったシンプルなレシピです。「冷やし中華なんてこれだけでも十分に美味しいです」というコメントとともに、中華麺に自社商品のつゆをかけただけの簡易的な冷やし中華の写真が添えられていました。

この投稿の「〜なんて」「これだけで十分に美味しい」といった表現に対し、一部のXユーザーから「手間をかけて料理をする人を軽んじている」「特に料理の主な担い手とされがちな女性への配慮に欠ける。女性蔑視ではないか」などの批判が寄せられました。これを受け、A社は公式Xに「投稿により不快な思いをされた方々にお詫び申し上げます」との謝罪文を掲載しています。

しかし、一連の騒動を巡っては、SNS上で「なぜこれが炎上したかわからない」「過剰反応では?」「むしろこの投稿を見て商品を買いたくなった」などA社を支持・擁護する意見も多く寄せられました。

前薗:「〜なんて」「〜でいい」という表現は、どのような文脈においても否定的に捉えられやすいかと思いますので、その点は注意が必要です。

料理番組の女性講師が男性アナに「愛の共同作業」発言

桑江:ある料理番組では、女性講師の発言が物議を醸しています。 女性講師は男性アナウンサーとヨーグルトにフルーツを飾り付ける際、「では一緒にやりましょう」と声をかけ、「30(歳)過ぎたおじさんですが」と返した男性アナウンサーに「愛の共同作業でいきましょう」と発言しました。

この発言に対し、SNS上では「気持ち悪い」などと不快感を示す声や、「講師が中年男性でアナウンサーが若い女性だったら問題になるのでは」と発言の危険性を指摘する意見が上がりました。

メディアの取材に対し、同放送局の広報局は「視聴者のご意見を参考に、今後の番組づくりに取り組んでまいります」と回答しています。

前薗:発言した本人に悪意がなくても、現代の視聴者が持つジェンダー観やハラスメントの感度の高まりによって炎上することがあるという典型的な事例です。

「講師が中年男性でアナウンサーが若い女性だったら」という指摘のように、男女の立場を入れ替えてみる視点は、発言に潜むリスクの有無を判断するうえで重要な指標となります。

外国人のコンビニ店員が勤務中にTikTokライブ配信

桑江:大手コンビニチェーンBの外国人店員が、勤務中の様子をTikTokでライブ配信し、批判が相次ぎました。

ライブ配信では、レジ内で接客をする姿などが映っていました。この投稿の切り抜きをXユーザーが投稿し、さらにそれを「爆サイ.com」のアカウントが取り上げたことで、X上でも拡散されています。

この動画に対し、SNS上では「リテラシーゼロだな」「外国人労働者を雇うのは良いけどもっと教育した方が良いのでは」「セブンイレブンの本社はこの件を把握しているんだろうか」など、配信した本人や大手コンビニチェーンBへの批判が相次ぎました。

前薗:業務中のスマホ利用の考え方や価値観は、文化圏によって異なるのも事実です。各店舗においては、ルールを周知・徹底を図る必要があると思います。

また、ライブ配信のリスクを考慮したSNS利用ガイドラインや研修資料の整備、従業員同士の目が行き届きやすい、あるいは相互に注意し合えるような現場のオペレーション体制に見直すことも求められると思います。

発注ミスのヘルプ投稿に生成AI画像を使用

桑江:菓子製造・販売や喫茶店経営を手がける「神戸風月堂」が、生成AIで作成された画像を公式Xに投稿し、物議を醸しました。投稿は「【悲報】拡散希望」と題し、「\喫茶スタッフより緊急報告/あ… あんこ、発注間違えました。2kgのはずが200kg届いた⁈∑(゚Д゚)ノノ」「冷蔵庫もパンパンで発注担当が青ざめてますお助けくださいっ!」とユーモアを交えた表現で、積み上げられた段ボールや餡の袋の画像が添えられていました。

しかし、この投稿を見たXユーザーが「生成AIで作成されている」と指摘し、「発注ミス商法では」と投稿したところ、公式Xのリプライ欄には、「普段2キロが200キロって、ホントに間違えているのか」「発注ミスに生成AIを利用するのは、真実かどうかが不明確で炎上商法と見なされても仕方ない」など批判的な意見が相次ぎました。

翌日、同社は発注ミスが事実であることを公式Xで改めて説明しましたが、「少しでも楽しく受け取っていただけたらという思いでユーモアを交えた表現を使った」「画像についても、商品が特定され仕入先様にご迷惑をおかけする可能性があると判断し、実物に近い生成画像を使用した」と釈明し、誤解を招いたことを謝罪しています。

前薗:生成AIについては、特有の違和感や完成物への嫌悪感から否定的な声を上げるパターンも増えてきています。当座の対応として、生成AIを使った場合はそのことを明記し、意図や目的、背景も説明するのが良いかと思います。

ラグジュアリーカードの公式サイトに「不自然な画像」の指摘

桑江:日本航空(JAL)が新たに提供を開始した富裕層向けクレジットカード「JAL Luxury Card」の公式サイトに掲載された画像の不自然さが、SNS上で指摘されました。

「JAL Luxury Card(年会費24万2,000円)」と「JAL Luxury Card Limited(完全招待制:年会費59万9,500円)」の受付開始を発表した際、公式サイトに掲載された複数の画像に対して「生成AIで作成したのではないか」との声が上がったものです。画像を見た人からは、「自らブランドイメージを破壊している」「カードで支払いする写真くらいは実際のクレカと店で撮影しなよ…」といった厳しい意見も寄せられました。

この事態に対し、JALは掲載画像の一部に生成AIで制作したものが含まれていた事実を認め、「誤解を招く表現があった」と謝罪しました。そのうえで、不自然に思われる画像はすべて掲載を取り下げ、新しい画像に差し替えたと説明しています。

前薗:生成AIの画像は、違和感が生じたとしても微修正が困難です。微修正をプロンプトに加えると、全く違う画像になってしまうこともあります。

本件も違和感を放置したというよりは、微修正できないまま公開したという事情が大きかったのではないかと思います。

オリジナルキャラクターの制作にAI使用疑惑

桑江:通信販売大手ニッセンが公式Xで公開したオリジナルキャラクター「日泉維那(ひいずみいいな)」に対しても、生成AIの使用疑惑が浮上しました。

当該キャラクターのイラストについては、SNSで指先や絵柄に不自然な点があるとの指摘が相次いでいましたが、同社は当初、ラフ画などを公開して疑惑を否定しました。

それでも批判は収まらず、「生成AIは使用していない」との声明を改めて発表しましたが、顧客に疑念を抱かせたとして謝罪しました。

その後、関連投稿は削除されましたが、SNS上では「企業が嘘をついている」といった厳しい声が目立ちました。公式サイトでは同キャラクターをあしらったグッズが掲載されたままで、企業の対応をめぐる議論は続いています。

前薗:生成AIに関する炎上事案の多くは、生成AIの使用を明示しなかったケースが多いと思います。生成AIを使った、あるいは生成AIを使った制作物に人の手を加えたのであれば、その事実を明らかにしておく必要があると思います。

Googleマップ口コミの大量削除に憶測飛び交う

桑江:大型テーマパークCに関するGoogleマップの口コミが突然大量に削除され、物議を醸しました。同施設に関する口コミは開業当日から増加し、翌日には400件以上の評価が寄せられていました。

しかし、開業3日目には口コミ投稿数が一時的に一桁台にまで激減し、大半の口コミが突然見られなくなる事態となりました。削除前の口コミ評価の平均が低かったため、SNS上では「施設側が意図的に削除しているのではないか」などの憶測が飛び交いました。

同施設は公式Xで、本件に関してGoogle社に状況を確認中であるとしましたが、Google社に取材した地元紙の琉球新報が「探知システムがポリシー違反の口コミの大量流入を検知し、さらなる悪用を防ぐため、ここ数日の口コミを削除し、保護措置を適用した」との説明を受けた旨を報じました。

報道の翌日、同施設は公式Xで「一部報道で取り上げられている通り、当パークは一切関与しておりません」と投稿し、関与を否定しています。

前薗:本件は、企業が意図しないプラットフォーム側のシステム作動が、企業側の情報操作と誤解されて炎上するという現代的リスクの典型例と言えます。

消費者は口コミという「本音」が 可視化される場での不自然な動きに極めて敏感で、その不信感が憶測を呼んで炎上を加速させました。

企業の評判は自社のみでコントロールできないという前提に立ち、迅速な事実確認と透明性の高い情報開示体制を構築することが、今後の危機管理の要諦となると思います。

おもちゃ付きセットのコラボ商品買い占めに批判殺到

桑江:大手ハンバーガーチェーンEでスタートしたおもちゃ付きセットのおまけ「ポケモンカード」が、転売目的で買い占められました。さらに、おまけだけを抜き取った商品が不法投棄される事態も発生し、これらの行為に対して大きな批判が殺到しています。

今回のコラボに際し、同社は事前にメルカリと協議をおこなったと発表。また、「転売や、食べきれない量の注文はご遠慮ください」と注意喚起をしていました。

しかし、発売日の早朝から複数の店舗で行列ができて転売ヤーによる買い占めが発生し、SNS上では店内や店舗近くで商品を大量に廃棄する画像や、店舗内で転売ヤーと店員、一般客がトラブルになる動画が相次いで投稿されました。

また、メルカリには「ポケモンカード」が大量に出品され、大手ハンバーガーチェーンEの対応不足や、 転売ヤーに対する批判の声が広がりました。

同社は、公式サイト上で「お客様にご不便をおかけしてしまっただけでなく、店舗で働くクルーの皆様、近隣の住民の皆様、およびテナント入居先オーナーの皆様にご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます」と謝罪しました。今後は、購入数のより厳格な制限や、フリマアプリ運営事業者との継続的な協議など再発防止策を実施するとしています。

前薗:消費者は、転売対策は企業の責任と考えています。人気ゲーム機「Switch2」を発売した任天堂が評価された理由は、グローバルな転売に厳格な対策を講じたことにあります。

大手ハンバーガーチェーンEはカードの流通量を増やして希少価値を下げる策を講じましたが、それでも個人の購入数には制限があるため、SNS上では海外のファンなどが購入代行サービスを利用してでも入手しようとするなど、需要の高さがうかがえました。

CEOがレイオフ実施の「お気持ち」投稿で炎上

桑江:飲食店の業務効率化を支援するダイニーが、全社員の約2割にあたる人員削減に踏み切ったことに批判が殺到しました。

山田真央CEOは自身のnoteでレイオフを実施したことについての記事を公開し、レイオフは生成AIの急速な進化によるもので、経営不振が理由ではないと説明しました。

また、社員への申し訳なさや自身の経営の未熟さを語りつつ、環境変化に迅速に対応する必要性があったと強調しました。山田氏の説明に対し、SNS上では「資金調達直後なので生成AIは関係なさそう」「お気持ちポエムで美談にしようとしているだけ」「退職者に対しどのような配慮を行ったのか説明がない」などの批判が相次ぎました。

さらに、日本の労働法に詳しい専門家などからは法的な観点からの意見も見受けられました。「レイオフは日本では『整理解雇』とみなされ、その有効性には厳格な要件がある。『AI時代を見据えて』といった将来の予測に基づく理由だけでは、解雇の有効性が認められない可能性が高い」といった内容です。

前薗:「レイオフ」という言葉の意味は国によっても違うので、安易に使うべき単語ではなかったように思います。投稿内容についても、“お気持ちポエム”感が強くなってしまったことは否めない印象です。

不正アクセスで個人情報が流出

桑江:リユース専門の通販サイトを運営する総合ホビーショップDが、第三者による不正アクセスで個人情報が漏洩した可能性があると発表して話題になりました。

情報漏洩の可能性があるのは7月24日〜8月4日の期間で、氏名、住所などの個人情報に加え、カード番号やセキュリティコードを含むクレジットカード情報とされています。

同社は、顧客データベースからの流出ではなく、システムの不正な改ざんにより決済時に入力された情報が外部に流出する状態になっていたと説明し、今後はセキュリティ対策を強化して再発防止に努めるとしています。

前薗:サイバー攻撃は、企業にとって避けて通れない問題になっている印象です。実際に起こってしまった場合は、速やかに被害状況を特定して情報を開示し、関係者にしかるべき補償・補填をしていくしかないと思います。

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