企業、インフルエンサー、一般ユーザー…大型国際イベントの炎上事例から学ぶSNSとの向き合い方(デジタル・クライシス白書-2025年5月度-)【第134回ウェビナーレポート】

※2025年5月28日時点の情報です
目次
人員削減に関する社長発言が物議
桑江:最初のテーマは、「不適切・不用意な発言」です。大手電機メーカーAの人員削減に関するオンライン会見で、楠見雄規社長が「人員は少し足りないくらいがちょうどいい。余裕がある人員数は、人が成長する機会を奪っていると考えている」と発言したことが物議を醸しています。
発言に対し、SNS上では批判的な意見が相次ぎ、「トップがこんな発言をする会社に新卒で志願するべきではない」「こうした発言によって有能な人材が流出するのだろう」「この発言を聞いた社員がどのように感じるのか、なぜ想像できないのか」といった厳しい声が寄せられました。
その後、同社は公式サイトに楠見社長のインタビュー記事を掲載しました。楠見社長は、人員削減に関する発言について「多くの方々にご心配をおかけした」と謝罪しつつ、改めて発言の意図を説明しています。
前薗:世間の批判に妥当性があると判断したので、謝罪したということかと思います。ただし、発言の意図にそぐわない解釈をされた、あるいは発言の内容の一部を意図的に切り貼りされたといった場合でも、謝罪すれば良いというわけではありません。状況によっては、きちんと反論することも必要かと思います。
タクシー会社オペレーターが SMSで顧客に暴言
桑江:次は「不適切・不誠実な対応」です。タクシー会社のエムケイ西日本グループは、受注オペレーターが顧客の携帯電話に暴言を含むショートメッセージを送っていたとして謝罪しました。
オペレーターは、福祉タクシー券の利用について問い合わせてきた顧客に対し、私物の携帯電話を使って「障がい者のくせに調子に乗るな。来るんなら殺してやる」という内容のショートメールを送信しました。その直後、暴言被害に遭った顧客からコールセンターに通報があり、事態が発覚しています。
本件について、暴露系インフルエンサーの滝沢ガレソ氏が取り上げると、SNS上ではオペレーターに対する批判の声が殺到しました。
同社は速やかに社内調査を開始し、公式サイトで情報を公開しました。この誠実な対応から、「顧客によるカスタマーハラスメントがあったのではないか?」という意見も出てきました。また、「カスハラ対策を講じていたのか?」と、会社側の体制に関心を寄せる意見も寄せられています。
前薗:このような事案を防ぐには、公私の区別を徹底できる職場環境の整備が不可欠です。そのためには、私物端末の安易な利用制限に留まらず、顧客情報の厳格な管理と従業員の倫理教育を強化することが求められます。
また、顧客からの電話番号非通知での問い合わせは現実的な課題が多いため、オペレーターには会社が管理する通信手段の使用を義務付け、私的連絡を防止するとともに従業員の個人情報を保護する対策を講じるべきです。
防犯カメラの万引き画像を公式Xで公開
桑江:次です。名古屋市内のトレーディングカード専門店が、少年3人組にポケモンカードゲームBOXを万引きされたとし、その様子をとらえた防犯カメラ画像を公式Xで公開して話題となりました。
公式Xには「防犯カメラに顔も映っており、犯行の瞬間も撮れている」などと投稿され、画像には顔の周りをモザイク処理された3人の少年が写っていました。
この投稿が拡散されると、SNS上では「相手が少年であってもすぐに被害届を出すべき」など厳正な対処を望む声が上がった一方、「モザイクをつけても防犯カメラの画像を出すと別件でトラブルになるからやめるべき」と、店側の対応を疑問視する声も寄せられました。
前薗:注意すべきは冤罪です。また、たとえ真実でも未成年者の肖像権などを侵害することになると、企業としてはレピュテーションリスクだけでなく、訴訟などのリスクも抱えてしまいます。防犯カメラの画像などを公開する際は、しかるべきルールや手続きに則って進める必要があります。
防犯カメラなどで事実関係が明らかな場合は、SNSで公開するのではなく、警察に速やかに届けるほうがリスクを抑えられます。
韓流イベントのスタッフ対応が炎上
桑江:続いては「その他」です。千葉県の幕張メッセで開かれた世界最大級の韓流カルチャーイベントで、ファン誘導を担当した女性スタッフの対応が炎上しました。
問題となったのは、イベント最終日に複数の来場者がSNSに投稿した動画です。動画には、ステージ上で韓流アイドルとファンが交流する様子が映っており、複数のスタッフがファンに歩みを止めないよう誘導している姿が記録されていました。しかし、その誘導がファンを必要以上に急かしているとして、批判の声が上がりました。
中でも、特定の女性スタッフに対しては「笑いながら、『あーもう早く行けよ』などと発言していた」との投稿が拡散されて批判が殺到し、その日のうちにこのスタッフのInstagramアカウントが特定され、ネット上に情報が拡散しました。
さらに、スタッフが着用していたジャケットの文字から運営サポートを担った会社が特定され、会社にも批判が集中する事態となりました。
この会社は、公式サイトのトップページに声明を掲載して謝罪するとともに、「スタッフ個人への誹謗中傷はご遠慮いただきますようお願い申し上げます」などと呼びかけました。
前薗:クレームに対し、企業側が謝罪するのは当然かと思います。ただし、このイベントのスタッフは、会社の指揮命令下で指示された業務を遂行していました。スタッフがバイトテロでも起こしたというならともかく、企業としてはスタッフに指示を出していた「自社に責任がある」と明言するのが望ましかったと感じます。
また、誹謗中傷は個人の人権を傷つける行為です。「ご遠慮いただきますよう」という弱いスタンスではなく、「法的措置を取ります」というくらいのことを明言しなければ、スタッフを守ることにはなりません。
グロース上場企業の粉飾疑惑が騒動に
桑江:AIスタートアップのグロース上場企業であるオルツにおいて、決算における売上の一部が過大計上であった可能性(いわゆる粉飾決算の疑い)が浮上し、同社がこれを受けて第三者委員会の設置を決議したと発表したことが、大きな物議を醸しています。
同社は、AIプロダクトの有料アカウントに関して、一部の販売パートナーから受注計上した売上が、実際には利用されていないなどの理由で過大計上の可能性があることを認めました。さらに、証券取引等監視委員会による調査も受けていることも発表しました。
本件については、アクティビストの田端信太郎氏が取り上げるなど、SNS上で大きな話題となりました。田端氏は、自身のXやYouTubeチャンネルで内部資料を公開したほか、同社の元従業員の男性が登場して告発を行うなど、同社に関するさまざまな内部情報が流出しています。
また、同社はこれまで多くのメディアで広告掲載されたり、好意的な内容の記事として取り上げられたりする機会が多かったことから、そうした情報発信を行った一部メディアに対し、その内容の検証が不十分だったのではないかとして、報道姿勢や説明責任を問う声も上がっています。
前薗:ネット上では社内外から情報がリークされやすくなっており、不正などを隠し切れないのは周知の通りです。
また、スタートアップのオルツは、企業としての露出を増やす戦略の一環として、(前回触れたような一般的な広告展開に加えて)一部のオンラインメディアなどとタイアップし、自社に関する記事コンテンツ(いわゆる記事広告やPR記事)もネット上に積極的に公開していました。しかし、これらのタイアップ記事を掲載した媒体の中には、オルツの粉飾決算疑惑が報じられると、事前の説明やコメントなしに当該記事を非公開にし、結果としてユーザーに不信感を抱かせたケースも見受けられます。
SNS投稿もそうですが、自社にとって都合が悪くなったコンテンツを説明なく削除したり非公開にしたりすると、さらなる反発を招く恐れがあります。
「Switch2」優先販売依頼への返答が話題
桑江:任天堂が6月5日に抽選販売を開始する「Nintendo Switch2」をめぐり、小児がんで余命宣告を受けた息子を持つという人物がXに投稿した内容が、物議を醸しています。
投稿者は「息子がSwitch2を熱望しており、夫が抽選に外れてしまったため、任天堂に購入優先度を上げるよう要望を出した」と投稿し、代金を支払う意思も示しました。
これに対し、任天堂からはお見舞いの言葉が送られたとともに、「特別枠でのご購入はできかねます」「心苦しい限りです」といった返答があったそうです。
このやり取りがSNS上で公開されると、投稿者の境遇に同情する声が出る一方、すべての人に公平な抽選販売を行うという任天堂の姿勢に、理解や支持を表す意見が上がりました。
前薗:炎上事案に対処する中で重視しなければならないのは、公平性や平等性を保つことです。そのようにすれば、何があっても「ルールに基づいて対応しました」と言えます。
一度でも特別対応を取ると、「このケースには応じてくれないのか」という不満を招く可能性が十分あるので、今回の対応はこれで良かったと思います。
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