SNS媒体の倫理CMとSNSでの炎上事例を通して(デジタル・クライシス白書-2025年4月度-)【第133回ウェビナーレポート】

※2025年4月30日時点の情報です
目次
「行き遅れ」「子ども部屋おばさん」の記事が波紋
桑江:まずは「ジェンダー・フェミニズム」です。東洋経済オンラインが公開した「行き遅れる20代女性たち、結婚できない『子ども部屋おばさん』が量産される日本社会の根本問題」と題された記事が波紋を呼びました。
執筆者は結婚相談所の経営者で、実際の相談者の事例をもとに解説した記事です。内容自体は過激ではないものの、「子ども部屋おばさん」「行き遅れ」といった表現が使われていることが批判されました。キャッチーな言葉が独り歩きするパターンは、SNS炎上の事例でもよく見られます。
前薗:東洋経済オンラインが社会的関心を高めたいという意図で、こうしたフレーズを採用したのであれば想定通りだったのかもしれません。しかし、そうではないにもかかわらず、批判されがちな表現を過分に盛り込んだのだとすれば気になります。
ブライダル情報サービスのモデルに17歳女性を起用
桑江:ブライダル情報サービス誌の15代目CMモデルに選ばれた女性が、結婚可能な年齢に達していない17歳だったことで物議を醸しています。
一部のSNSユーザーからは「アルコールのCMに未成年が出演しているようなもの」という指摘が上がった一方、「CMなので実際の年齢は関係ない」という肯定的な意見も寄せられました。
ブライダル情報サービス誌を運営する大手人材紹介会社Aは、メディアの取材に対して「ブランドイメージや世界観を体現する俳優・モデルを起用しています」とコメントしました。
前薗:ジェンダーの問題が発生したときは、指摘を受けた広告を取り下げたり、問題視されたタレントの起用を取り止めたりするまで批判が続くことがあり、企業側もキャンセルカルチャーを受け入れるケースがあります。
しかし、昨今はキャンセルに応じず、自社の取り組みの意図や目的を内外に説明する企業が増えています。批判を受けた際は、なぜそうしたのかを説明できるように準備することが重要です。
フジテレビに対するCM出稿停止の継続を発表
桑江:次は「メディア・スポンサー関連」です。キリンHDがフジテレビへのCM出稿を引き続き停止すると発表し、話題となっています。
今回の決定は、フジ・メディアHDの第三者委員会による中居正広氏と女性のトラブルに関する調査報告書の公表を受けたものです。キリンHDは、「第三者委員会の調査による人権侵害の事実認定について、重大な問題と受け止めています」との見解を説明しました。
SNS上では「キリンの判断は当たり前」「キリンが正しい」など好意的な意見が多く寄せられ、「CMを再開した企業=性加害を容認したスポンサー」という主張も見られました。
前薗:現状では、CM出稿の再開を検討している企業は少ないかと思います。6月に開かれるフジ・メディアHDの株主総会を待っている企業が多いのではないでしょうか。
エイプリルフールの「ライス販売停止」投稿が物議
桑江:ほっかほっか亭が公式Xに投稿したエイプリルフールの内容が物議を醸しました。同社は4月1日午前0時に「お客さま各位 本日より全国のほっかほっか亭 全店舗にてライスの販売を停止します。誠に申し訳ございません」と投稿しています。
さらに、このポストを引用し、「本部取締役」の人物名義で「米に対して絶対的な自信を持っておりますが…これ以上は価格高騰の波に抗えなくなりました」などと記載された文書も投稿しました。
どちらの投稿にも「#エイプリルフール」と記されていましたが、SNS上で拡散されると「米の価格が高騰しているタイミングで出すべき嘘ではない」「微妙に現実感があり不快」といった批判的な意見が相次ぎました。
SNS上では「このようなユーモアを発信できる企業は素敵」「エイプリルフールと明記されているのに批判するのはおかしい」と擁護する声も上がったものの、同社は「配慮が足りなかったと感じております」と謝罪しました。
前薗:エイプリルフール企画を成功させるためのセオリーは、「わかりやすい嘘」「皆がハッピーになる嘘」です。
十分な量の米を仕入れられず、販売を停止している小売店もある中、さらなる不安を呼び起こしてしまうようなネタだったということが、批判を招いたポイントだと思います。
元フジ女性アナ「嫌だったら行かない」発言に批判殺到
桑江:4月6日放送の「Mr.サンデー」(フジテレビ系)に出演した元フジテレビアナウンサー・長野智子氏の発言に批判が殺到しています。
フジテレビ問題について生放送で討論した同番組では、性被害を受けた女性がなぜ中居正広氏の自宅に行ってしまったのかが論点となりました。長野氏は「嫌だったら行かない」「自分の評価を気にする人は断りづらい」などと発言し、視聴者から「被害者軽視」「被害女性への2次加害につながる」といった指摘が上がりました。
批判の高まりを受け、長野氏は自身のXで「うまく伝えられなかった」「時間がなく言い直すことができなかった」と謝罪しましたが、「被害女性に落ち度があったかのような発言にしか聞こえなかった」など厳しい意見が寄せられました。
前薗:世間が怒っているポイントと、謝罪のポイントが少しでもずれてしまうと、火に油を注ぐこととなり、危機対応広報の現場では致命傷になりかねません。広報担当の方は、自分ならどう謝るのかというイメージトレーニングをしておくのが良いと思います。
共用駐車場の利用客の車に無断駐車の貼り紙
桑江:続いては、「不適切・不誠実な対応」です。ドラッグストアチェーン店の従業員が、店舗に隣接するラーメン店の利用客の車に、無断駐車を警告する紙を貼り付けたことが物議を醸しました。
ラーメン店を利用した客が自身のXで「この駐車場に車を停めてラーメン店に行ったらこれ。どう見てもこの看板、共用駐車場に見えるだろ」と投稿し、駐車場の写真と「1万円を申し受ける」と書かれた無断駐車を警告する紙も公開しました。
騒動はテレビでも報道され、話題となりましたが、コスモスの運営会社が公式サイトで「従業員は共用駐車場との認識を持っていなかった」と説明し、謝罪しました。
前薗:「従業員の認識が違っていた」ということですが、実際に1万円を支払ってしまった方がいるかもしれません。
今回は投稿者が声を上げたからこそ、お金を払わずに済んだといえる事案で、ともすれば「何か問題があったときは世の中を味方につけた者勝ち」という見られ方になってしまう可能性があります。運営会社には、これまで1万円を支払った人にどのような対応を取るのかまで踏み込んだコメントが求められます。
回転寿司店内で避妊具を放置した写真の投稿者に猛批判
桑江:回転寿司チェーンBの店舗内に避妊具が放置された画像が、Xで拡散されました。別のXユーザーが、この画像の投稿者と同行していた人物に「説明をお願いします」と質問すると、「回転寿司チェーンBで避妊具を膨らまして破裂させ、そのゴミを皿の投入口に入れただけ」という返答がありました。
質問をしたXユーザーが「回転寿司チェーンBに通報します #拡散希望」と書いたポストに避妊具の画像や同席者とのやり取りのスクリーンショットを添付したことで、この投稿はSNS上で一気に拡散しました。SNS上では避妊具を放置したとされる4人の人物への批判が殺到し、Xアカウントや個人情報が特定される騒動に発展しています。
同社は「独自調査により該当店舗と実行者を特定しており、実行者を名乗る者から謝罪の連絡があった」と説明するとともに、「多くのお客様が利用する飲食店として許される行為ではなく、厳正な対応を行う」との見解を示しました。
前薗:企業としては、不適切な行為を働いた人にはしっかりと対応したという点を社内外に伝えることが重要です。客の悪質な行為については普段から防ぐよう努力し、見つけた場合は厳正な対応を行うという姿勢を示すことが大事だと思います。
万博警備員の土下座映像が話題に
桑江:大阪・関西万博の警備員が来場者に土下座している映像が、テレビ番組で報じられました。番組では「男性客が警備員に『土下座しろ』といった趣旨の大声を上げ、それを受けて警備員が土下座をした」と説明されました。
ところが、万博協会の広報報道課はメディアの取材に対し、「男性客が警備員に駐車場について質問した際、正確な案内ができなかったことからやり取りがエスカレートし、身の危険を感じた警備員が自らの判断で土下座をした」と述べました。
前薗:勝手に土下座をしてしまうと、怒っている客が「カスタマーハラスメント行為をしている人」と見られることになり、名誉や立場を過度に傷つけてしまう可能性があります。
特に、飲食・サービス業をオペレートしている方は、接客上の問題が起こったときにどう謝るべきなのか、「ここまでは謝っても良いけれど、これ以上は絶対にだめ」ということを現場の一人ひとりに浸透させなければなりません。
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