ホーム > 声を聞く・話題を読む > 芸能・メディアを巡る騒動から学ぶトラブル対応の「正解」とは(デジタル・クライシス白書ー2025年1月度ー)

芸能・メディアを巡る騒動から学ぶトラブル対応の「正解」とは(デジタル・クライシス白書ー2025年1月度ー)

公開日:2025.02.21

中居正広氏と女性のトラブルがフジテレビを巻き込んだ騒動に

桑江元タレントの中居正広氏の女性トラブルをめぐり、フジテレビの社員の関与や局側の対応が、世間を揺るがすほどの問題となっています。

2024年12月の週刊誌報道では、2023年5月に起こったトラブルの被害者がフジテレビの女性社員で、編成幹部の男性社員の関与があったと報じられて批判が殺到しました。

局側は男性社員の関与を否定していますが、週刊誌がアナウンス室部長や医師に報告していたとされる被害女性の知人の証言を報じ、A社の隠蔽体質や企業倫理崩壊などを問う声が相次いでいます。

2025年1月16日には、週刊誌がフジテレビの現役女性アナウンサーの内部告発を報じたことで騒動が拡大し、同日に記者会見を行ったフジテレビの社長は「2023年6月からトラブルを把握していたこと」や「第三者が入る調査委員会の設置」などについて説明しました。

しかし、「ラジオ・テレビ記者会」「東京放送記者会」の記者クラブに加盟していない週刊誌などを締め出し、映像撮影も禁止した閉鎖的な対応に批判が続出することとなり、これまでに大手スポンサーを含む75社がテレビCMの差し止めを発表しています。

フジテレビは1月27日にフルオープンの記者会見を約10時間半にわたってやり直し、会長と社長の辞任も発表しましたが、真相解明は第三者委員会に委ねられています。40年余りもフジテレビの人事などに影響力を持ち続けてきたグループ相談役の進退も注目される中、少なくとも6月の株主総会までは騒動が長引きそうです。

前薗今回はマスメディアと芸能人の話題ということで、企業の皆様からすると縁遠い話と感じるかもしれません。ただ、押さえておかなければならないのは、「そんな事実はない」と否定することのリスクです。否定するのであれば、「このようなプロセスで調査を行いましたが、現時点では確認できませんでした」などと、慎重に言葉を選ぶべきかと思います。

1つでも反証されてしまえば、「嘘をついた」という印象しか持たれなくなってしまいます。後になってから「実は、こういう調査をしていました」と発表しても言い訳がましいと思われるだけなので、最初のリリース内容が非常に重要です。

また、メディアや芸能人が炎上した場合は、スポンサードしている企業に批判の矛先が向けられることも、併せて押さえておく必要があります。

人気俳優の吉沢亮氏が飲酒による住居侵入で謝罪

桑江芸能人のトラブルでは、人気俳優の吉沢亮氏が酒に酔ってマンションの 隣屋に無断侵入したことが報じられました。

大河ドラマ主演も務めた好感度俳優の不祥事報道に対する反響は大きく、一報を報じたライブドアニュースのポストは4.7万件のリポスト、5600万件超のインプレッションを獲得しています。

吉沢氏がCMに出演していたアサヒビールは、報道当日に広告契約解除を発表し、同日夜には公式サイトから吉沢氏の画像を削除する異例の迅速対応を取りました。大手日用品メーカーも、CMの早期終了を発表しました。

一方、吉沢氏の所属事務所と本人が発表した謝罪文では、トラブルの相手や関係各所(スポンサーや芸能関係者、メディア)、一般人(ファンや視聴者)の三者に十分配慮しており、世間から評価されています。

前薗今回の不祥事を世間がどのように捉えているのか、きちんと把握した上で謝罪文を構成したことは、本当に素晴らしいと思います。

吉沢氏の所属事務所・アミューズの謝罪文は、ネット上などで見られた「隣人が入ってきたくらいで110番通報はしない」という意見にも触れ、「隣室の方に落ち度があるかのような批判はおやめください」と呼びかけました。吉沢氏にすべての責任があると言い切った結果、多くの人に謝意が伝わったことは、俳優活動の再開に向けた後押しにもなると思います。


解剖研修の現場写真を投稿した美容外科医に批判

桑江全国展開する東京美容外科医院の医師である黒田あいみ氏は、グアムで行われた解剖研修の写真を自身のInstagramに投稿し、 大きな批判を招きました。

投稿には、解剖研修が行われている室内の様子や、笑顔でピースサインをする黒田氏の写真が含まれており、そこにはモザイク処理が施されていた献体も写っていました。

この投稿がSNSで拡散されて批判が集まると、黒田氏は自身のブログで「倫理観が欠けていた」と謝罪しています。ところが、ブログには「一部のモザイク加工が漏れていた」「解剖研修から得られる学びを多くの医師に広く知ってほしいため投稿した」という記述もあり、「問題の本質を理解していない」などと指摘する声が上がりました。

本件に関しては、東京美容外科の統括院長である麻生泰氏も、自身のXで数回にわたり釈明や謝罪を行いましたが、「日本のルールとは異なる」「今回の件で臨医が解剖に関わる機会を失うことがないよう願う」などと発言したことで、著名人を含めた多くの人から非難を受けています。

麻生氏は当初、黒田氏を解任する考えはないとしていましたが、その後、公式サイトで解任することを発表しました。

前薗トップが謝罪するにあたっては、「世の中から指摘されていることが何なのか」「それに対して謝意を示すのか、反論するのか」をはっきりさせなければなりません。

今回の場合、「倫理観が欠如した医師と、そのような行為を許容した統括院長の姿勢はどうなのか?」という指摘でしたが、麻生氏のコメントは、その趣旨とはことごとくずれていました。指摘されているポイントについては、的確にコメントすることが求められます。

看護師が自身の不適切な医療行為を投稿

桑江医療関連では、とある病院の匿名看護師が、自身のXアカウントで患者への不適切な医療行為について投稿し、物議を醸しています。

このアカウントは2023年秋頃から「インシデントは面倒なので隠ぺいしている」「薬 は飲ませたフリをして捨てる」などの投稿をしており、2025年1月に入りSNS上で話題となりました。

投稿には医師の名前も記載されていたことから、ネットの「特定班」によって千葉大学医学部附属病院である可能性が浮上し、不適切な医療行為の疑惑はテレビニュースでも取り上げられました。

この病院はメディアの取材に対し、「全診療科を対象に事実確認を進めており、事実が判明した場合の処分は検討中」としています。

前薗:投稿されたような行為があったとすれば、決して許されるものではないということが前提ですが、自社の業務に関するSNS投稿を従業員に行わせないようにするには、社内ルールを整えるだけでなく、一人ひとりに「なぜ投稿してはいけないのか?」という理由を理解してもらう研修機会の見直しなども併せて行う必要があると思います。

クレーム投稿に対する公式Xのリプライが物議

桑江次は、マタニティー、ベビー用品のチェーン店・アカチャンホンポ社の公式Xと、店舗利用者のやり取りが騒動となった件です。

利用者は自身のXアカウントで、クリスマスプレゼントの在庫取り置きを依頼して来店した際、店員から「もう来ないと思い他の方に売りました。在庫はありません」と説明されたと投稿しました。投稿では、店員の態度の悪さなどについても言及しています。

翌日、公式Xが「コールセンターにご連絡いただき、お話をお聞きできればと存じます」 と返しましたが、この返信がSNS上で拡散されると「コールセンターに客側から連絡させるのは不親切」「他のクレームと混同されてしまうだけ」などの批判が殺到しました。

その後、利用者は「店舗責任者が謝罪に訪れ、品物は無事手元に届いた」と投稿したものの、「その際の到着の遅れや連絡不足など、対応に問題があった」とも明かしました。

今回のクレームは具体的で、利用客の怒りが強かったにもかかわらず、公式Xはコールセンターへの連絡を淡々と求めるテンプレート対応を取りました。汎用的なテンプレート対応は「個別の問題に誠実に対応しようとしていない」とみなされてしまう可能性が高いので、相手の気持ちを汲んだオリジナルの文面も入れた方が良かったと思います。

前薗:今やテンプレート対応で謝罪をしたとしても、「謝らない方がマシだった」と思えるほどの反発を受けることがあります。今回の場合は、「『クリスマスプレゼントを贈りたい』という利用客の思いをきちんと受け止めていないのではないか?」という印象を与えてしまったことが良くなかったのだと思います。

公式Xが対応したこと自体は良い判断でしたが、テンプレート対応が目につくと、困っている顧客を能動的に見つけ出して解決策を提案するアクティブサポートのメリットが損なわれます。そのため、アクティブサポートに関しては、フローやマニュアルを整備しておくことが重要かと思います。

ラーメンのトッピングを巡る批判投稿に店側が反論

桑江:ラーメン豚山の公式Xは、利用客の批判的な投稿に「事実と異なる」と反論しました。

東京都内の店舗を訪れた利用客が、自身のXアカウントで「全マシマシを注文したら自分だけ規定量を大きく超える量を盛られた」「私の分だけ手で押し込んでいた」などと写真付きで投稿した内容が拡散され、SNS上では店舗側を批判する声が上がりました。

騒動を受け、ラーメン豚山の公式Xは「従業員へのヒアリングや店内カメラ確認の結果、投稿内容が事実と異なると判明した」と報告しました。また、「量が多いことを確認した際、投稿者から『もっと盛って』と要望があった」と主張し、「誤解を招いたことを残念に思います」とコメントしています。

SNS上では毅然とした対応を称賛する声が上がった一方、「客側にもヒアリングするべき」「盛り方が雑なのは事実」といった指摘もありました。 その後、投稿者は投稿を削除し、「その場の気持ちで書き、多大なご迷惑をおかけして申し訳ありません」と謝罪しています。

前薗:ネット上での批判に対しては、第三者などが認知できる場所で反論することで、フェイクやデマが拡散されてしまうことを防げるという考えは理解できます。

ただし、強気に出れば、衆目の前で一個人を攻撃するという見られ方になってしまうリスクもあります。そうなれば、これまで自社の味方だった人が態度を翻す可能性があることも、併せて押さえておいていただきたいと思います。

冷凍宅配のクリスマスケーキが破損も無事に再配送

桑江:近畿地方の洋菓子店である平和堂が販売・発送した冷凍クリスマスケーキが、破損した状態で届いたとの報告がSNS上で相次ぎました。

このクリスマスケーキは、地元出身の人気ロック歌手の楽曲をイメージした限定商品でしたが、箱の中でひっくり返っているケーキの写真などが購入者によってXに投稿されました。

平和堂は公式Xで事実関係を説明した上で謝罪しましたが、SNS上のコメントを見る限りではクリスマス前に再配送を終えたとみられます。

前薗:もちろん、起こるべきではなかった事象ではありますが、万一トラブルが発生しても、クリスマスまでに対応可能なスケジュールを組んでいたと考えられます。

過去に発生した他社の類似事例も教訓とし、クリスマスに間に合わないという最悪の事態の防止策を講じていたと思われる点は、十分に評価できると思います。

最新記事の更新情報や、リスクマネジメントに役立つ
各種情報が定期的にほしい方はこちら

記事一覧へもどる

おすすめの記事