炎上事案分析データ2024年6月版(調査対象期間:2024年6月1日~2024年6月30日)
- 公開日:2024.07.31 最終更新日:2024.11.26
シエンプレ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:佐々木 寿郎)は、一般社団法人 デジタル・クライシス総合研究所(住所:東京都渋谷区、所長:佐々木 寿郎)と共同で、調査対象期間に発生したネット炎上についての件数とその内訳の分析結果を公開しました。
目次
- ■調査背景
- ■調査の概要
- ■調査結果
- 1.炎上主体別 発生件数
- 1-1.炎上主体別 発生件数と割合(前月比)
- 1-2.炎上主体別 発生件数と割合(前年平均比)
- 1-3. 炎上主体別 発生件数と割合(前年同月比)
- 2.炎上の内容別 発生件数
- 2-1. 炎上の内容別 発生件数と割合(前月比)
- 2-2.炎上の内容別 発生件数と割合(前年平均比)
- 2-3.炎上の内容別 発生件数と割合(前年同月比)
- 3.炎上内容の詳細区分別 発生件数
- 4.法人等の業界別発生件数
- 4-1.法人等の業界別発生件数と割合(炎上の内容別)
- 5.企業規模別の炎上発生件数と割合
- 5-1.炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前月比)
- 5-2.炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年平均比)
- 5-3.炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年同月比)
- 5-4.炎上の対象となった従業員数と年商の散布図
- ■分析コメント
- (参考)分類基準
- 1.分類基準(炎上の主体)
- 2.分類基準(炎上の内容)
- 3.分類基準(業界)
■調査背景
2024年1月31日、デジタル・クライシス総合研究所はソーシャルメディアを中心とした各種媒体とデジタル上のクライシスの特性、傾向と論調を把握するために「デジタル・クライシス白書2024」(調査対象期間:2023年1月1日~2023年12月31日)を公開しました。
継続調査の結果報告として、今回調査対象期間に発生した炎上事案を、新たに分析しています。
■調査の概要
■調査結果
1.炎上主体別 発生件数
1-1.炎上主体別 発生件数と割合(前月比)
6月の炎上事案は97件でした。前月に比べ、13件増加しています。
炎上主体別の内訳では、「著名人」47件(48.5%)、「一般人」17件(17.5%)、「メディア以外の法人」20件(20.6%)、「メディア」13件(13.4%)という結果でした。
割合については下図のとおり、前月と比較し、「著名人」が4.5ポイントの増加、「一般人」が2.0ポイントの増加、「メディア以外の法人」が16.3ポイントの減少、「メディア」が9.8ポイントの増加という結果でした。
1-2.炎上主体別 発生件数と割合(前年平均比)
前年平均比では、炎上事案は35件減少しています。
炎上主体別の内訳では、「著名人」が4件の増加、「一般人」が27件の減少、「メディア以外の法人」が14件の減少、「メディア」が2件の増加という結果でした。
割合については下図のとおり、前年平均と比較すると、「著名人」が15.9ポイントの増加、「一般人」が15.8ポイントの減少、「メディア以外の法人」が5.2ポイントの減少、「メディア」が5.1ポイントの増加という結果でした。
1-3. 炎上主体別 発生件数と割合(前年同月比)
前年同月比では、炎上事案は1件減少しています。
炎上主体別の内訳は、「著名人」が24件の増加、「一般人」が30件の減少、「メディア以外の法人」が1件の減少、「メディア」が6件の増加という結果でした。
割合については下図のとおり、前年同月と比較し、「著名人」が25.0ポイントの増加、「一般人」が30.5ポイントの減少、「メディア以外の法人」が0.8ポイントの減少、「メディア」が6.3ポイントの増加という結果でした。
2.炎上の内容別 発生件数
2-1. 炎上の内容別 発生件数と割合(前月比)
炎上内容別の内訳では、「情報漏洩」が8件(8.2%)、「規範に反した行為」が12件(12.4%)、「サービス・商品不備」が1件(1.0%)、「特定の層を不快にさせる行為(※)」が76件(78.4%)という結果でした。
前月と比較すると、「情報漏洩」は7件の増加、「規範に反した行為」は3件の増加、「サービス・商品不備」は8件の減少、「特定の層を不快にさせる行為」は11件の増加という結果でした。
※特定の層を不快にさせる行為:法令や社会規範に反する行為ではないものの、他者を不快にさせる行為(問題行動、問題発言、差別、偏見、SNS運用関連など)
割合については下図のとおり、「情報漏洩」が7.0ポイントの増加、「規範に反した行為」が1.7ポイントの増加、「サービス・商品不備」が9.7ポイントの減少、「特定の層を不快にさせる行為」が1.0ポイントの増加という結果でした。
2-2.炎上の内容別 発生件数と割合(前年平均比)
前年の平均発生件数と比較すると、「情報漏洩」が7件増加、 「規範に反した行為」が1件減少、「サービス・商品不備」が16件減少、「特定の層を不快にさせる行為」が25件減少しました。
前年平均の割合と比較すると、「情報漏洩」が7.4ポイントの増加、「規範に反した行為」が2.6ポイントの増加、「サービス・商品不備」 が11.9ポイントの減少、「特定の層を不快にさせる行為」が1.9ポイント増加しました。
2-3.炎上の内容別 発生件数と割合(前年同月比)
前年同月の件数と比較すると、「情報漏洩」が7件増加、「規範に反した行為」が4件増加、「サービス・商品不備」が9件減少、「特定の層を不快にさせる行為」が3件減少しました。
前年同月の割合と比較すると、「情報漏洩」が7.2ポイント増加、「規範に反した行為」が4.2ポイントの増加 、「サービス・商品不備」が9.2ポイントの減少、「特定の層を不快にさせる行為」が2.2ポイント減少しました。
3.炎上内容の詳細区分別 発生件数
炎上内容の詳細を分析したところ、「問題発言」に関する炎上事案が36件と最も多く、次いで「非常識な行動(モラルのなさ)」に関する炎上事案が33件でした。
4.法人等の業界別発生件数
4-1.法人等の業界別発生件数と割合(炎上の内容別)
炎上主体のうち、「法人等」に該当する炎上33件について、業界ごとに分類しました。炎上事案が最も多かった業界は「メディア」業界で12件(36.4%)という結果でした。
業界別の炎上種別を割合で見た場合、結果は下図のとおりです。
5.企業規模別の炎上発生件数と割合
炎上の標的が「法人等」の場合について、上場企業か否か、また、それぞれの従業員数について調査しました。 なお「法人等」に該当する炎上事案は、日本国内に所在する企業のみを対象としています。 また、公共団体や政党、企業概要や従業員数等の情報が公開されていない団体、国外に所在する企業等は調査対象から除外しています。 調査対象の総数は23件です。
5-1.炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前月比)
上場区分に関して「上場企業」が標的となった事例が2件(8.7%)、「非上場企業」が標的となった事例が21件(91.3%)という結果でした。 前月と比較すると、「上場企業」の件数は6件減少、「非上場企業」の件数は3件増加しました。
割合を比較すると、「上場企業」の割合は22.1ポイント減少しました。
5-2.炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年平均比)
前年平均と比較すると、「上場企業」の件数は3件減少、「非上場企業」の件数は2件減少しました。
割合を比較すると「上場企業」の割合は9.2ポイント減少しました。
5-3.炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年同月比)
前年同月と比較すると、「上場企業」の件数は1件増加、「非上場企業」の件数は5件増加しました。
割合を比較すると、炎上した企業のうち、「上場企業」の割合は2.8ポイント増加しました。
5-4.炎上の対象となった従業員数と年商の散布図
従業員数1,000人未満、売上高1000億円未満の企業規模で炎上事案が多く発生しました。 一方で従業員数約3,000人の企業であっても炎上事案が発生していることから、どのような従業員数や企業規模であっても、炎上は発生する可能性があるといえます。
また下図のグラフには記述がありませんが、売上高約7千億円、従業員数約1万人といった大企業の炎上事案も確認されました。
■分析コメント
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授 山口 真一氏
6月に大きな話題となったのが、Mrs. GREEN APPLEの新曲「コロンブス」のMVでした。MVでは「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現」が含まれており、多くのネットユーザーから人種差別的な表現が含まれていると批判されました。BBCなどの海外メディアにも取り上げられ、大炎上となりました。
本炎上からはいくつか重要なポイントを学べます。
①多様な人々を集め、心理的安全性を確保したうえでコンテンツの制作を行う
性別・年齢・人種について多様な人を集めてコンテンツを制作するだけでなく、どのような属性の人でも発言できるような空気を醸成することが、リスクを軽減します。
②シミュレーションをする
コンテンツ制作中にシミュレーションを実施し、批判ポイントの洗い出しをしておくことが重要です。
③組織はアーティストなどの個人を守る
本件はコカ・コーラのキャンペーンソングであり、企業や事務所など多くのステークホルダーが関わっています。アーティストやクリエイターは目立つ存在であり、批判の的になりがちですが、炎上には組織として対応し、アーティストやクリエイターを守る姿勢を示すことが大切です。
④差別表現は迅速に謝罪することが重要
今回は制作中に差別表現に気づけなかったことで、早々に海外メディア等にも取り上げられました。しかしながら、炎上発生後数時間後にはMVの公開停止・謝罪文の公開を行ったことで、炎上は収束へ向かいました。
(参考)分類基準
1.分類基準(炎上の主体)
抽出したデータは表1に基づき分類しました。
(表1)分類基準(炎上の主体)
参考:山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授):
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、 2016
公に情報を発信する機会の多いメディア関連の法人については、炎上に至る経緯に違いがあるため、他業種の法人と分けて集計を行っております。
2.分類基準(炎上の内容)
抽出したデータは表2に基づき分類しました。
■(表2)分類基準(炎上の内容)
参考:山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授):
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、 2016
3.分類基準(業界)
また、炎上の主体が「法人等」の場合、20の業界に分類しました。
なお、該当しない業界に関しては「その他」としてデータを処理しました。
参考:業界動向サーチ「ジャンル別業界一覧」https://gyokai-search.com/2nd-genre.htm
■炎上事案分析データ2024年6月版のダウンロードはこちらから
■ネット炎上・誹謗中傷・風評被害の相談、取材等のご依頼はこちらから
■一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所 概要
名称 :一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所
代表理事 :佐々木 寿郎
アドバイザー:山口 真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)
沼田 知之(西村あさひ法律事務所所属弁護士)
設立日 :2023年1月20日 HP :https://dcri-digitalcrisis.com/
関連会社 :シエンプレ株式会社