「BeReal」起点の“新・バイトテロ”緊急対策!貴社の対策は万全か?今すぐ見直すべきSNSリスク管理体制

目次
新たなSNSの登場でユーザーが分散
ここ数年、新たなSNSが続々と登場しています。XやInstagram、TikTok、YouTubeなどに取って代わるほどの支配的なSNSはまだ登場していませんが、XやInstagramと併用する形で使っている方も多いと思います。
2020年にはBeRealが登場し、2023年にはBlueskyとThreads、2024年にはmixi2が誕生しました。
以前はXやInstagramなどの主要SNSに集中していたユーザーが、“既存SNS疲れ”などにより、従来のSNS以外で自分を表現できる場所を探し、新たなSNSにも利用を広げています。
ユーザーは複数のSNSを使い分けたり新しいSNSに分散したりして、自分の興味・目的に合ったSNSを選択できるようになりました。

SNSの増加で炎上の「入口」も多様化
新たなSNSの登場を受け、炎上のパターンにも変化が生まれています。
SNS炎上には、「入口」と「出口」があります。
入口は炎上の発生源で、火種となる書き込みや写真・動画を投稿した場所(SNS)を指します。
出口は露出源で、火種となった書き込みや共有した写真・動画が、多くの批判・誹謗中傷によって話題になった場所(SNS)です。
これまでの入口は、XやInstagram、TikTok、YouTubeといった主要SNSに固まっており、それらがXで話題になることで炎上事案へと発展しました。
しかし、今や入口は多様化し、BeRealやBluesky、Threads、mixi2なども炎上の起点となっています。
中でも、利用者数が増加しているBeRealとThreadsは、炎上の起点になることも増えています。さらに、ThreadsはThreads内だけで、一定の話題がつくられるようにまでなっています。
出口がXであることに変わりはないのですが、Xだけをモニタリングしていると、炎上していることは把握できても、問題のあるコンテンツが投稿される瞬間を見つけることはできません。

ランダムな通知で投稿を促すBeReal
BeRealは、リアルな日常の瞬間を友達と共有するSNSです。
最大の特徴は、“映え”に疲れた層をユーザーとして惹きつけている点です。
BeRealでは、投稿するコンテンツを加工せず、ありのままの日常や自然体の自分を友達にシェアすることができます。
また、他のSNSと異なり、自分の好きなタイミングで投稿することはできません。
1日1回、ランダムな時間にアプリから通知が届き、それから2分間以内に「今、何をしているのか」を、スマートフォンのフロントカメラとインカメラでほぼ同時に撮影して投稿する仕組みです。
投稿タイミングの通知から2分間以内は、何度でも撮り直しができますが、投稿した写真には撮影回数が表示されるため、撮り直したことは相手にわかるようになっています。
撮影前の数秒間を動画で残せる「BTS(Behind the Scenes)機能」もありますが、BeRealでは自分が投稿しなければ、他人の投稿を見ることができないため、閲覧のみの利用はできません。また、他人の過去の投稿も閲覧は不可能で、スクリーンショットを撮ると相手に通知が届きます。

授業中やバイト中に投稿経験のあるユーザーが半数
先ほど述べたように、BeRealで他人の投稿を見るためには1日1回の投稿が必要で、アプリからランダムな時間に届く通知から2分間以内に投稿しなければなりません。
こうした中、リサーチ業界向けのプラットフォームサービス会社がBeRealユーザーである15〜25歳の男女4,252名に実施した調査では、約半数が授業中やアルバイト中にも投稿したことがあると回答しています。
最近は、BeRealでのバイトテロや客テロの投稿が増えている中、そうしたコンテンツが炎上に発展することもあります。

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000105399.html
事例1:厨房内で撮影した不衛生行為の画像が拡散
「ドトールコーヒー」の店舗では、厨房内で撮影されたと思われる不衛生行為の画像がXを中心に拡散しました。
この画像は、2025年9月23日の20時頃、アルバイト従業員がスマートフォンで撮影したもので、BeRealに投稿されました。
投稿された画像は非公開グループの誰かによってスクリーンショットを撮られた後、他のSNSに転載され、拡散しました。
ドトールは10月3日、公式サイト上で文書を公開し、「当社アルバイト従業員が個人で利用しているSNSにおいて、不適切な投稿が行われていることが判明いたしました」と報告しています。
同文書では、9月29日に不適切投稿が発覚した後、すぐに調査を開始し、30日に店舗と対象者を特定したことが明らかにされました。
また、10月1〜2日にかけては当該対象者に事実内容を確認し、3日に懲戒処分を決定したことも記されています。
ドトールでは、従業員のSNS利用について「雇用契約書を含め、社内規定を設けているとともに、厳守ポスターを掲示、店舗責任者会議などで適宜注意喚起」を行っていたそうです。
しかし、今回の騒動を受けて「管理体制の見直し、社内教育の徹底、再発防止に向けた取り組みを直ちに実行いたします」と報告しています。
事例2:商品の食材を投げて遊ぶ動画が騒動に発展
2025年10月7日には、東京都内にあるケンタッキー・フライド・チキンの店舗で撮影されたと思われる動画がXを中心に拡散しました。
問題となったのは、アルバイト従業員が店舗内で“ツイスター”と呼ばれる商品の生地をフリスビーのように投げて遊ぶ動画です。
動画は数時間で何十万件もの再生数を記録し、ハッシュタグ「#ケンタッキー」「#バイトテロ」がトレンド入りする事態となりました。
週刊誌の取材に対し、ケンタッキー・フライド・チキンの本部は「ご指摘の動画につきましては、KFC店舗で撮影されたものであることを確認しております」「動画に映っている人物は、店舗で勤務していた従業員であると認識していますが、現時点で在籍していないことを確認しております」といった回答がありました。
そのうえで、「こうした行為は決して容認できるものではなく、再発防止に向けて従業員への指導・教育を徹底してまいります」としています。
事例3:卵でキャッチボールする動画を投稿
ラーメンチェーンAでは、2025年10月9日、アルバイト従業員2名が廃棄間際の食材である卵でキャッチボールする様子を撮影した動画をSNSに投稿しました。
10月10日、Aの運営元が公式サイトに「弊社従業員による不適切な動画投稿に関するお詫びとご報告」を掲載し、事実関係の詳細な調査を進めていることと、「法的措置も視野に入れ、厳格に対応する」という方針を発表しました。
さらに15日には、公式サイトに「弊社従業員による不適切な動画投稿に関するご報告(第二報)」として、社内調査の進捗状況と再発防止策を掲載しています。
第二報では、関与したアルバイト従業員を14日付で懲戒解雇処分とし、本件行為について所轄警察署に相談するとともに、損害賠償請求なども準備すると報告しました。
就業時間中のBeReal投稿が問題に
このような形で、就業時間中にBeRealの投稿を撮影してネット上にあげる行為が問題になった事案は立て続けに報告されています。
これまでは、SNSユーザーが意図的にカメラを向けて悪ふざけをした様子を撮って投稿していました。
しかし、BeRealでは、アルバイト従業員だけの時間帯や、手持ち無沙汰になる時間帯に投稿タイミングの通知が届く可能性があります。
通知がいつ届くかわからないため、企業としては事前に防止策を講じにくいという課題があります。
実際に、別の飲食チェーンの危機管理本部の関係者からは、「就業時間中にお客さんから見える場所でSNSに投稿していると見られる行為に対し、クレームが寄せられやすくなっている」という話も聞かれます。
飲食業だけでなく、埼玉県内のスーパーでは、アルバイト従業員が店内の商品をかじる写真をBeRealにアップした事案もあります。
また、京都市内の大手ハンバーガーチェーンBの店舗では、客の男子高校生が店内の窓ブラインドの紐を鼻に入れる不衛生な悪ふざけを行う様子を撮影した動画がSNS上で拡散しました。
これらに便乗する形で、バイトテロや客テロに関する告発投稿も引き続き増えています。
バイトテロや客テロなどの話題が注目されると、それらと共通する事象がネット上にあげられやすくなり、SNSのアルゴリズムによって露出しやすくもなるのです。
従来のSNSと異なるBeRealの特性とは?
では、なぜ従来のSNSガイドラインや研修では、BeRealのバイトテロを防ぐことができないのでしょうか?
それは、従来のSNSガイドラインなどで想定しているバイトテロや、従業員による不適切なコンテンツの投稿と、BeRealの問題は異なるからです。
XやInstagramなどに投稿される不適切なコンテンツの多くは、何らかの意図を持って撮影・編集されています。 一方、BeRealには、XやInstagramなどにはない3つの特性があります。それらはいずれも、従来のSNSガイドラインや研修では想定しきれなかったものなのです。

「2分間以内の投稿通知」がもたらす衝動性
BeRealが持つ特性の1つ目は、「2分間以内の投稿通知」がもたらす衝動性です。
従来のバイトテロは、従業員が「炎上させてやろう」「面白い投稿をしよう」と意図して不謹慎な写真や動画を撮影・投稿していました。
しかし、BeRealでは、通知が届いた瞬間にたまたま行っていた動作や、あわてて撮影した行為がネット上にあがる可能性があります。
理性を働かせ、深く考える時間が与えられない中で投稿する現象が確認されている中では、従来の「投稿前に一呼吸おき、内容を確認しましょう」という指導が機能しません。

状況証拠の同時撮影で「いつ・誰が・どこで」が特定される
2つ目は、「デュアルカメラによる状況証拠の同時撮影」です。
XやInstagramなどでは、不適切な行為の投稿であっても、場所が特定されにくいケースがありました。
しかし、BeRealでは、フロントカメラでバックヤードや厨房、レジ裏などの「職場の風景」が、インカメラでは従業員の顔が同時に撮影されます。
そのため、「いつ・誰が・どこで」不適切な行為をしたか、本人が意図しなくても瞬時に特定されやすくなるのです。
こうしたことから、「職場の制服を撮影しないように」「場所が特定される情報を載せない」といった従来の指導は、アプリの仕様によって強制的に破られてしまうことになります。

「クローズド・コミュニティ」の幻想が生み出す油断
そして、3つ目は、「クローズド・コミュニティ」という幻想です。
BeRealは「リアルな友達とだけつながる」というコンセプトが強く、ユーザーは「内輪のノリ」で投稿しがちです。
XやInstagramでは、自分の投稿が全世界に公開されることの恐ろしさが指摘されてきました。
しかし、BeRealのユーザーは「どうせ友達しか見ていない」という強い安心感を持ち、油断しがちです。
BeRealでは、自分が投稿をアップしなければ友達の投稿は見られませんし、友達もコンテンツをあげなければこちらの投稿は見られません。
そのため、双方が何らかのコンテンツをアップしているという共依存関係になりがちです。
XやInstagramは見るか、投稿するかのどちらかに特化しているユーザーが多く存在しますが、BeRealでは互いに何らかのコンテンツをあげています。そのため、よりクローズドなコミュニティとして機能しやすい状況です。
「公開範囲を限定しましょう」という従来の指導が、「友人限定=安全」という誤った認識によって無力化される中、BeRealの不適切な投稿をXなどのオープンな場に転載する人物が一人でもいれば、瞬時に拡散して「バイトテロ」が成立してしまいます。

最強の対策は「勤務中に撮影させないこと」
BeRealを使ったバイトテロを防ぐため、企業がアップデートすべきガイドラインとして、最も強力なのは「勤務中に撮影させないこと」です。
従来のガイドラインは「勤務中の私用端末の利用は控える」という程度の「努力目標」が多いのですが、業務スペースへの「私用端末」持ち込みを原則禁止するという物理的制限を加えなければ、BeRealの誘惑を絶つことはできません。
アップデート版では、「業務スペース(バックヤード、厨房、倉庫。レジカウンター内を含む)への私用スマートフォンの持ち込みを原則禁止する」などと明記し、私用端末は更衣室や休憩室の指定されたロッカーなどに保管することを徹底させることが求められます。場合によっては、学校の持ち物検査のようなチェックをする必要もあると思います。
こうした厳しい措置は、従業員から反発を招くことも考えられます。そのため、「なぜ禁止なのか?」を理解してもらう取り組みも重要です。
特に、Z世代以降は、SNSがあることが当たり前の層です。
SNSの影響を軽視しがちな傾向もあるので、実際の炎上事例を見せながら炎上のリスクを伝えなければなりません。
そのような注意喚起や対策を講じなければ、皆様の店舗で炎上が起こるかもしれませんし、従業員の方々が炎上してしまうかもしれません。
さらに、そうした事案が「デジタルタトゥー」として一生残ってしまう可能性もあります。

衝動性を高めるBeRealの危険性を伝える
次に、BeRealの「特性」に焦点をあてた危険性を周知するリスク教育も必要です。
XもInstagramも特性に大きな差はなく、共通点も多くありました。そのため、「SNSは、こういったことに気を付けましょう」という注意喚起が主だったと思います。
BeRealはクローズドな環境下のSNSなので、「大丈夫だろう」という先入観を持っているユーザーも少なくありません。
そのため、従来のガイドラインや研修のように「SNS全般が危険」という曖昧な指導では響かない可能性があります。
アップデートの際は、研修やeラーニング資料に「BeRealなど通知から短時間での投稿を促す(衝動性を高める)アプリ」の危険性を具体的に記載し、「デュアルカメラ機能により、意図せず職場の内部が撮影され、情報漏洩や炎上につながる」リスクを明示することが求められます。
また、「『友人限定』の投稿であっても、スクリーンショットや画面録画により外部に流出する」という拡散メカニズムを、実際の炎上事例を用いて具体的に教育することも必要かと思います。

業務中に求められる意識の徹底
最後に、「内輪のノリ」と「業務」の境界線を明確化する意識改革が挙げられます。
従業員は、必ずしも「バイトテロを起こそう」「会社の信用を傷つけダメージを負わせよう」と考えているわけではありません。「仲間内でふざけているだけ」という認識だと思われますが、それを改めさせる必要があります。
アップデート版では、「会社の信用を毀損する行為の禁止」を唱えるだけでなく、「勤務時間中(休憩時間を除く)は、たとえふざけ合いであっても、それが第三者(顧客や取引先)から見れば、『不謹慎』『不衛生』『不適切』と受け取られる可能性がある」ことを明記することが求められます。
また、「バックヤードであっても業務中であり、公の場である」という意識(プロフェッショナリズム)を改めて定義し、誓約書などで再確認させることも重要です。

シエンプレにできること
BeRealは友達限定の公開が前提のため、第三者が特定の問題投稿を見つけようとするのは非常に困難です。
問題投稿のモニタリングを機械的に行うのが難しい状況では、X上に出回ってから認知・検知することとなってしまうため、不適切なコンテンツは絶対に投稿させないことが重要です。
シエンプレでは、SNSガイドラインなどのルールづくりや教育・研修を毎年のように実施しており、毎年アップデートもしています。
ルールをどうアップデートしていくかということについては、担当者までご連絡いただければと思いますし、作成に着手していない場合も一度お声がけいただければと思います。
今の時流に即したルールを作り、それをもとにした教育・研修を行わなければ、SNSリスクを抑える効果は限定的になってしまうのです。

講師:シエンプレ株式会社 カスタマーサクセス推進課シニアマネージャー 前薗 利大
「BeReal」起点の”新・バイトテロ”緊急対策!貴社の対策は万全か?今すぐ見直すべきSNSリスク管理体制 | シエンプレ株式会社
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