ホーム > 炎上が起きたら >  2023年の炎上傾向を専門家が解説。炎上の要因が多様化へ?(デジタル・クライシス白書2024発行記念セミナー)【第117回ウェビナーレポート】

 2023年の炎上傾向を専門家が解説。炎上の要因が多様化へ?(デジタル・クライシス白書2024発行記念セミナー)【第117回ウェビナーレポート】

公開日:2024.02.08 最終更新日:2024.06.28

月平均131.9件が炎上 一般人が初めて著名人を抜く

桑江:2023年の炎上件数は月平均131.9件で、前年(130.8件)から0.8%増えました。
炎上主体は著名人とメディア以外の法人が減少した半面、一般人とメディアは増加しています。
さらに、月間平均発生件数は著名人が42.9件だったのに対し、一般人は43.9件に達しました。過去5年間の白書の調査で、一般人が著名人を上回ったのは初めてのことです。

炎上原因となった問題行動の主体は一般人が33.3%と最多でした。特定の層を不快にさせるような発言・行為に該当する事案が最も多い傾向が続いており、2023年の月間平均発生件数は前年比9.5件増の101.2件となりました。
また、法人等の炎上事案のうち最多を占めたのは、「メディア業界」の137件です。次いで多かったのは「娯楽・レジャー業界」の136件で、消費者との直接的なやり取りが盛んな両業界が突出しています。

さらに、法人等の炎上事案541件のうち法人等の団体(※)によるものは340件で、60件(17.7%)が上場企業でした。上場企業の割合は前年(21.0%)より減ったことから、非上場の中小企業も多く炎上しているということが言えるかと思います。

従業員数別では1000人以上の企業が165件(48.5%)と半数近くを占めますが、2023年は300人以上1000人未満の区分の割合も増えました。

※公共団体や政党、企業概要や従業員数などの情報が公開されていない団体、国外に所在する企業は除外

「客テロ」動画が回転寿司チェーンなどで頻発

山口:2023年1、2月は、回転寿司チェーンなどの利用客による炎上事案が非常に多かったという印象です。
2013年にはコンビニのアイス冷凍庫に入った男性客がふざけて写真を撮るという事案が起こり、2016年、2019年にも同様の迷惑行為が発覚しています。
2023年も相変わらず頻発し、従業員による「バイトテロ」のような動画もありました。こうした炎上事案は、これからも続いていく気がします。

桑江:2023年は「客テロ」動画の盛り上がりに便乗した動画を撮影・投稿するというだけでなく、過去の動画を掘り返して拡散させる動きも見られたことが特徴的だったと思います。

山口:2013年も「客テロ」は連続して起こっていたので、当時と何も変わっていないといえばそうかもしれません。
ただ、今はプラットフォームも多様化しています。ショートムービーなどの多様な手段を使ってごく一部の人が便乗し、それが大炎上するという流れは今後も続いていくと考えています。

桑江:若者に人気のTikTokは、コンテンツを投稿すれば必ず一定数のユーザーに届く仕組みです。
他のプラットフォームは、多くのフォロワーがいなければあまり影響力がありません。しかし、TikTokは作ったばかりのアカウントでもある程度の反響を得ることができます。そのため、便乗して承認欲求を満たしたいという人が増えているように感じます。
2019年頃はInstagramのストーリーズで身内向けに投稿した不適切動画が流出して炎上するパターンが目立ちましたが、現在と比べると炎上の特徴がかなり異なるのではないでしょうか。

山口:そう思いますね。若い人を中心に普及しているTikTok発の炎上は、「客テロ」に限らず増えています。
こうなると、企業としてはシステム的に監視せざるを得ないでしょう。放置した状況で何か事が起これば、株式の時価総額が急落してしまうといった事態を招きかねません。
監視システムを導入してコントロールする方が費用対効果も高いでしょうから、そちらに振り切らざるを得ないと思います。少なくとも、迷惑行為を働く動画の炎上が減る兆しは見えませんので。

「インフルエンサー×リーク」の流れが加速

桑江:週刊誌やインフルエンサーに対するリーク文化は、2022年から顕著になっています。中古車販売大手の不正も日本中を揺るがすほどの話題になる以前から、SNS上ではリークの告発が繰り返されていました。

山口:「インフルエンサー×リーク」の流れは、2024年も加速している印象があります。インフルエンサーが力を持っているポイントは2つです。1つはメディアや警察よりリークの敷居が低いため情報が集まりやすく、インフルエンサーはそれらを分かりやすく伝えることで支持を集めています。
もう1つは、週刊誌との共振現象です。ある著名なインフルエンサーも、週刊誌の特ダネを4枚の画像と簡潔な文章にまとめて頻繁に投稿しています。
そうして話題になると、インフルエンサーの元には「私もこんなことがあった」というリークが続々と寄せられ、それを独自の情報として発信するわけです。
週刊誌で話題になった事案があれば追加取材をした情報を投稿し、さらに大きな問題に広がっていくという現象も頻発しています。
インフルエンサーの投稿には表示回数が6000万回を超えるものもあり、もはやマスメディア以上の力を持っていると言っても差し支えありません。
企業は内部告発やリークに注意を払う必要がありますし、ネット上に出た場合は軽視しないことも大切です。

二極化する炎上事案の報道スピード 防御のカギは初動対応

桑江:2023年の炎上事案を総括して見えてくるのは、SNSの普及によってさまざまな場所で告発リスクが発生しているということです。企業においては誰もが、どの部署でも直面するリスクがあります。
スマートフォンのカメラはもちろん、ドライブレコーダーや監視カメラで撮影された炎上ネタが証拠となり、SNSでの告発やインフルエンサーへの情報提供に利用されてしまいかねません。
BtoCの企業であれば、現場の社員一人ひとりがそうした危険に晒されているということを踏まえたリスク管理が必要です。
また、炎上事案がメディアで報道されるまでの速度は二極化しています。炎上に対して速やかに対応しなければ、防御が不十分なまま一方的な情報が拡散されて状況が悪化するかもしれません。
反対に、メディアが報じないことに安心して初動対応を怠れば、真相の調査後に記事化されて再炎上する可能性も十分あり得ます。

山口:ひと昔前なら、メディアに報じられなければ、炎上事案はさほど拡散しませんでした。
しかし今は、インフルエンサーの拡散力が格段に増しています。「このままやり過ごせそう」と高をくくっていると突然リークされるリスクは、以前より圧倒的に高まっていると思います。
また初動対応は、ただちに自社の責任を否定したり、謝罪したりすれば良いというわけではありません。真相がはっきりしないうちは、「これからしっかり調査します」という姿勢を打ち出す必要があります。
SNS上で数百人程度のユーザーに拡散された時点で調査を開始し、きちんと発表する体制を整えておくことが大切です。対応に失敗すると、炎上の激化や再炎上を招いてしまいます。

X投稿の収益化などで「炎上の商業化」が進む?

桑江:ハッシュタグを使うなどして、メディアが炎上の拡散を推し進めているとの指摘にも注目するべきでしょう。
メディアには企業や著名人を炎上させることでPV、アテンションを得ようとする経済的動機があり、今後はこうした「炎上の商業化」がさらに進むことが考えられます。

山口:それは間違いないですね。アテンション・エコノミーが加速している中では、人々の目を引くことがお金になるわけですから。
ネットメディアやマスメディアの煽り見出しなどで「炎上」というタイトルを付ければ、多くの人の注目を集めることが可能です。炎上などしていないのに「炎上」のラベルを貼られたケースも、すでに確認されています。
アテンション・エコノミーはネットメディアが主な議論の的でしたが、X投稿の収益化によって個人にまで下りてきました。誰もが自由に発信してお金を儲けることができる時代がついに到来したと感じています。
YouTubeの収益化構造も同じですが、Xに比べれば拡散力が弱く、動画投稿のハードルも決して低くありません。Googleがモデレーションしていることもあり、今のところ大ごとにはなっていません。
ところが、Xは拡散力が強く、投稿も簡単です。モデレーションが強化される気配も感じられないため、今後はものすごくカオスな状況が生まれてくるのではないでしょうか。
特定の企業に関する過激な嘘などを流し、お金儲けをしようとする人がどんどん増えていく可能性がないとは言えません。アテンション・エコノミーが激化する中では、対応を考えておく必要があると思います。

刻々と変化する炎上プロセス 最新トレンドの把握が不可欠

桑江:炎上件数は依然として高い数値で推移しており、先行きが不透明で社会不安が広がる世の中ではさらに増える可能性もあるでしょう。
炎上に備えるためには、さまざまな炎上事案が発生したきっかけや経緯などの実態を常に把握しておかなければなりません。
実際に、炎上の理由は多様化しています。炎上に至るまでのプロセスが刻々と変化する流れは、2024年も続く見通しです。常に最新の炎上トレンドをキャッチし、自分たちの情報をアップデートしていく姿勢が求められます。

山口:リークカルチャーやインフルエンサーの力は2024年も増すはずです。インフルエンサーにとってXの収益化は追い風なので、参入者が増えると思います。
あるXユーザーが投稿した内容を、別のユーザーが投稿するというX内の共振現象も起こっています。告発リスクはどんどん高まっていると考えて間違いありません。
炎上の件数自体は高止まりの感もありますが、質に関してはどんどん激化していくと思います。
今後は生成AIに絡んだ炎上事案も出てくることが予想されますし、不適切な事象に対する世の中の許容範囲も狭まっているという印象です。だからこそ、最新の炎上トレンドを常に把握することが欠かせません。

企業のリスク対応に欠かせない「Brand Integrity」の概念

桑江:2023年の炎上件数は前年とほぼ変わりませんでしたが、1件ずつのインパクトは2023年の方が圧倒的に大きかったという印象がありますね。

山口:企業が気軽にPRしたことが、思わぬ反応を招かないとも限りません。意図しないニュアンスで捉えられ、拡散されるリスクがないかしっかりと検証した上で発信しなければなりません。

桑江:企業にとって重要なのは、やはり自社のブランドに誠実である「Brand Integrity(ブランド・インテグリティ)」の概念だと思います。
私たちは2024年も、皆様がさまざまなデジタル・クライシスにしっかりと対応し、乗り越えていただくための一助になれればと考えています。


セミナー講師

山口 真一(やまぐち しんいち)氏

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授。1986年生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。専門は計量経済学。研究分野は、ネットメディア論、情報経済論等。「あさイチ」「クローズアップ現代+」(NHK)や「日本経済新聞」をはじめとして、メディアにも多数出演・掲載。主な著作に『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)、『なぜ、それは儲かるのか』(草思社)、『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版)等がある。他に、シエンプレ株式会社顧問、東京大学客員連携研究員、日本リスクコミュニケーション協会理事等を務める。

桑江 令(くわえ りょう)

シエンプレ株式会社 主任コンサルタント 兼 一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所主席研究員。 デジタル・クライシス対策の専門家として、NHKのテレビ番組に出演したり、出版社でのコラム、日本経済新聞や雑誌『プレジデント』など出版物への寄稿を担当したりしている。一般社団法人テレコムサービス協会 サービス倫理委員も務める。

最新記事の更新情報や、リスクマネジメントに役立つ
各種情報が定期的にほしい方はこちら

記事一覧へもどる

おすすめの記事