「なぜ、その事案は燃えたのか?」事例から学ぶ生成AI・Threads・BeReal…時代のリスクとの向き合い方の常識

目次
過去最少だった前年から一転、2025年は多数の炎上が発生
桑江:2025年は数多くの炎上が発生しました。シエンプレのデジタル・クライシス総合研究所が集計した10月末までの件数は1322件で、6月以降の下半期の炎上件数が大きく伸びています。
2024年は炎上件数が1225件と、2019年の集計開始以来最少でした。月平均100件のペースだったのですが、2025年3〜5月は月50件台と半減しました。
ところが、8月は241件、さらに10月は266件となり、2020年4月に記録した過去最多の月間記録を上回りました。2025年7〜10月は月平均200件と、前年の2倍の数の炎上が発生しています。
一方、2025年の上半期と下半期の炎上内訳はさほど変わっていません。強いていえば、一般人と著名人の割合がやや増えたのに対し、メディアとメディア以外の法人が少し下がりました。つまり、炎上の内訳に大きな変化はないまま、件数が倍増したということです。
こうした傾向について、小林さんはどのように考えますか?

小林:コロナ禍の頃は在宅率が高かったので、炎上件数が増えやすかったという理屈に納得していました。2024年に過去最少となったのは、人々が外に出て活動をするようになり、社会が正常化したことの表れとみていました。
小林:コロナ禍の頃は在宅率が高かったので、炎上件数が増えやすかったという理屈に納得していました。2024年に過去最少となったのは、人々が外に出て活動をするようになり、社会が正常化したことの表れとみていました。
ただ、炎上の規模は大きくなっているので安心できないとは思っていたのですが、2025年の下半期になって炎上件数が急増している理由は思いあたりません。何か考えられる要因はありますか。
桑江:2024年も10月の炎上件数が多かったのですが、まさに総選挙のタイミングでした。昨年の選挙ではSNSが大きな役割を果たしたということがニュースにもなりましたが、その流れは2025年も続いています。とりわけ、10月の自民党総裁選以降は流れが強まっているように思います。
著名人の中には政治家も含まれますが、高市早苗首相は従来の首相よりはネット上での応援団が多いイメージがあります。SNSでは高市首相の擁護派と反自民派、反高市派が論争を繰り広げ、他の政治家なども巻き込んで互いに攻撃し合うケースが増えている印象です。
小林:時流として燃えやすい環境になっているということですね。
桑江:新たに台頭しているSNSプラットフォームでの炎上も増えてきています。
2025年11月、12月にはXの仕様変更もあり、アルゴリズムがAIに完全移行したことでユーザーの嗜好に合う投稿がおすすめされやすくなります。
そうなると、ネット上で得る情報が自分と同じ意見や趣味のものばかりになり、異なる意見や趣味が見えなくなるフィルターバブルがより強化され、「自分の意見が正しい」と思い込んでぶつかり合うことが起こり得る怖さがあります。
小林:炎上件数は、まだまだ増える可能性があるということですね。
2025年の主な炎上トピックスとは?
桑江:2025年の炎上事案をめぐっては、「Threads発信の炎上」「BeReal発信の炎上」「生成AIによる炎上」「バイトテロ・客テロ」と、4つのトピックが挙げられます。
「Threads発信の炎上」
なぜ、2025年にThreads発信の炎上が増えたのでしょうか?
理由は4つあります。1つは「強制的な可視化(文脈の崩壊)」です。Threadsのタイムラインは初期設定で「おすすめ(For You)」が表示されます。
これにより、フォロワー外のユーザーに自分の投稿が大量に露出します。その結果、投稿の背景や文脈を知らない層にまで言葉が届いてしまい、「言葉尻を捉えた批判」が殺到する現象(コンテキスト・コラプス)が常態化します。
2つ目は、「AIによる『批判』の誤認」です。ThreadsのAIは「会話の発生(リプライ・引用)」を重要視します。
たとえそれが批判や罵倒であっても、「多くのユーザーが反応している=熱量の高いコンテンツ」とシステムが判断し、炎上している投稿ほどさらに拡散されるという「負のループ」が形成されやすい構造となっています。
3つ目は、「ユーザー層の拡大とリテラシーの乖離」です。日本国内のMAU(月間利用者数)急増に伴い、プラットフォーム内には多様な価値観が混在しています。
Xから移ってきた先行ユーザーは「殺伐としたXから逃れてきた」ため、平和で穏やかな交流を強く求める傾向があります。
これに対し、新規マス層はエンタメ感覚で参加し、Xと同様の感覚で強い言葉を使いがちです。この「暗黙の了解(お作法)の不一致」が、予期せぬ対立と炎上の火種となっています。
そして4つ目が、「Threads発・X拡散の『飛び火』サイクル」です。従業員や一般個人の「何気ない不満」や「内部告発」がThreadsの議論好きAIによってピックアップされ、白熱した議論のスクリーンショットがXに輸出されます。
それがXで拡散されバズると企業に届くようになり、2025年はThreadsを見ていない企業も対応を余儀なくされたという事例が増加しました。
では、企業としてThreads発信の炎上を防ぐためには、まず監視体制の「死角」をなくし、爆発的拡散の「前兆」を捉える必要があります。
Threadsはまだ、多くの企業が監視対象外としている状態です。Threadsの議論がXに転載される前に状況を把握できれば、ボヤの段階で鎮火できる可能性が高まります。
2024年までは、Threadsの問題投稿はXに転載されてから拡散しました。しかし今は、Threadsで炎上してしまった投稿がXに転載されています。そのため、Threadsが騒がしくなった段階で事態を捕捉することの価値が高まっていると思います。
全従業員へのリテラシー教育も欠かせません。従業員やアルバイトスタッフの中には「Threadsは炎上することが少ないInstagramの延長だから安全」「鍵垢感覚で愚痴を言ってもバレない」という危険な認識が蔓延しています。
従業員に伝えるべきメッセージは、「ThreadsはX以上に不特定多数へ拡散されるツールである」ということです。
企業としては、ガイドラインに「Threads利用の注意点」を追記し、全スタッフにリスク認識を徹底させることが不可欠です。また、一度だけではなく繰り返し伝え続ける体制をつくることも大切です。

小林:今までは「Xに出てからでいいだろう」と思っていたのですが、Threads内で炎上が起きているのですね。Threads起点の炎上事例も確かに増えており、意識を毎年アップデートしなければすぐに古くなってしまうと感じました。
「BeReal発信の炎上」
桑江:「BeReal発信の炎上」が増えたのは、学生時代の「日常」が職場の「事故」に変わったからです。
2025年は、2022〜2024年に学生生活を過ごし、BeRealが生活インフラとなっていた世代が新入社員として大量に入社しました。
そのような人たちにとって、アプリから通知が来たら即撮影するのは「呼吸と同じレベルの習慣」でしょう。「職場だからダメ」という意識より、「通知が来たから撮る」という反射的な意識が勝ってしまうのです。
しかし、スマートフォンのカメラはAIによる補正機能と超高解像度化が進んでいます。何気ない自撮り画像の背景に映り込んだホワイトボードの文字やパソコン画面の書類も、拡大すれば鮮明に読み取れます。Xの特定班にとって、BeRealの「加工なし(高画質)画像」は、情報の宝庫です。
2025年のトレンドとしては、BeRealの面白い投稿や問題投稿をスクリーンショットし、TikTokやXで「まとめ動画」として晒す文化が定着しました。
BeReal内はクローズドでも、それを晒すことで他プラットフォームでのバズりを狙う「友人」が存在します。元の投稿が24時間で消えるとしても、転載されたデジタルタトゥーは永久に残ってしまうことになります。
企業としては、業務スペースへの私的端末の持ち込みを原則禁止とするのが最も早いのですが、そのような厳しいルールを導入する際は、理由を腹落ちさせる教育が不可欠です。
「会社のため」という理由ではなく、「炎上すれば、あなたの名前が『デジタルタトゥー』としてネット上に一生残り、将来を脅かすことになるため禁止する」旨のメッセージを伝える必要があります。
また、新入社員研修では必ず「BeReal」と名指しして、リスクを警告してください。「SNS」の括りだけではXやInstagramを想起する層が多く、そもそもBeRealをSNSと認識していない人もいます。
そのうえで、「自分が写っていなくても、背後のパソコン画面などが世界に流出する」という事例を見せて、自撮りと同時に外側の風景も撮影されるデュアルカメラの恐怖を伝える必要があります。「通知から2分以内に投稿しなければならない」という衝動が企業の信用と自身のキャリアを傷つけるという認識を持たせることが大切です。

小林:本当に怖いですよね。もともとは、Instagramと違って映えない日常を写すというユニークなSNSが登場したと思っていたのですが、炎上を起こすためのツールではないかと思ってしまうくらい危険性が高いと感じます。
職場であっても即撮影するという行動の裏には、「通知が来たから当然」という程度の意識しかないでしょう。そこに教育の難しさがあり、これまでとは全く異なるフェーズに入ったと思います。
「生成AIによる炎上」
桑江:「生成AIによる炎上」は2024年も少なくありませんでしたが、そもそもSNS上では生成AIが嫌われています。
その理由は、「『プロセス』の対価」「『フリーライダー』への嫌悪」「生理的な『不気味さ』」の3つです。
消費者は結果だけでなく、「時間や情熱」に価値を感じます。AIによる時短は「手抜き=顧客軽視」と映り、強い反発を招きます。
また、誰かのデータを無償で学習して利益を得る構造は、「努力した人が損をする不公平なシステム」として倫理的に拒絶されています。
さらに、一見きれいなのに指や背景が破綻しているAI画像は、生理的な嫌悪感(不気味の谷)と同時に、企業の誠実さへの不信感を植え付けます。
こうした中、2025年はAIアレルギーの先鋭化による「冤罪(魔女狩り)」が多発しています。厚塗りや特定のライティング技法(光沢感)を用いた手描きイラストであっても、「AIっぽい」という曖昧な理由だけで攻撃対象となる事例が急増しました。
「AI警察」の過熱と冤罪リスクの高まりを受け、企業は「実際に使ったか」だけでなく、「AIだと誤解される表現ではないか」という新たなチェック工程を強いられています。
画像生成AIは、既存の膨大なデータを学習します。そのため、プロンプト(指示)次第では特定の作家や既存キャラクターに酷似した画像を生成してしまうリスクがあります。企業側に悪意がなくても、公開された成果物が「あの先生の絵柄を盗んでいる(image-to-image疑い)」と炎上し、謝罪・撤回に追い込まれるケースも増えています。

小林:生成AIによる炎上は、消費者側が企業にどんな期待感を持っているかということと、実際に企業の生成AIの利用が進んでいるというギャップによって起こるトラブルかと思います。
「このクリエイティブはしっかりと汗をかいて手作業で作り込むべきものだ」というクリエイティブの中に、生成AIに丸投げしたかのように見えるものが出てきてしまうと、反発を招くということでしょう。問題なく使える部分もあると思いますが、さじ加減が難しいと感じます。
ただ、「今はこうしよう」と決めても、1年後には世の中の温度感が変わる可能性もあります。生成AIは保守的に運用しながらセーフかアウトかを見極めるべきで、一度決めたルールを何年も守り続けるというものではないとの印象を持ちました。
桑江:企業としては、「どこでAIを使い、どこで人間を使うか」というクリエイティブの「ゾーニング(すみ分け・線引き)」を明確にすることが必要です。
社内会議資料の作成やアイデアのブレインストーミング、プログラミング補助、定型メールの下書きなどの生成AI使用は推奨できますが、謝罪文やブランドのメインビジュアル、採用メッセージなどに使用することは、「顧客や求職者への侮辱」と受け取られる最大のリスクとなります。
そのうえで、AIの生成物をそのまま世に出すことは禁止し、「AI特有のツルツルした質感」や「不自然な文章」は人間がリライトなどを施すのが望ましいでしょう。
冤罪の発生時、即座に火消しができる体制も構築しておくべきです。手描き作品であってもラフ画や制作過程のタイムラプスを保存し、「AIではない証拠」を確保する必要があります。
疑惑をかけられた際、「どのタイミングで、誰の判断で証拠を公開するか」を広報マニュアルに定めておくことも重要です。後出しだと言い訳に見えてしまうので、初動スピードが大切になります。
小林:自社のテイストを生成AIに学ばせ、それに沿った文脈で調整したものを出して成功している企業も存在します。今は生成AIの良し悪しを一概に決めるのではなく、使うべき局面をしっかりと磨き込んでいく時期かと思います。
「バイトテロ・客テロ」
桑江:最後のトピックは「バイトテロ・客テロ」です。これらがなくならない原因は「24時間で消える」という油断です。Instagramのストーリーズ(親しい友達限定)やBeRealなど、クローズな空間への投稿がすべての元凶といえます。
投稿者は「身内のウケ」を狙いますが、身内の中には必ず「晒してバズらせたい人」が潜んでいます。投稿が保存された瞬間、それは全世界に向けた「公開処刑」につながります。
2025年の特徴は、裏切りの実行犯だけでなく「拡散する側」にも収益が発生する構造が出来上がったことです。
元投稿を転載した実行犯は視聴者からのチップ(投げ銭)を稼ぎ、それを拡散する側もバズりそうな迷惑動画を転載し、インプレッション(閲覧数)による広告収益を稼げるようになりました。「利害の一致」により、過去の動画まで掘り起こされて再炎上するサイクルが確立されています。
その他にも、過重労働や賃金への不満を持つ従業員が「会社にダメージを与えたい」という明確な悪意を持ってテロを行うことがあります。
また、「どうせ特定されないだろう」「辞めるから関係ない」という心理が働いたケースや、衛生管理の不備を告発するフリをして自ら不衛生な行為を働くといったマッチポンプ型の炎上事例も見られます。
企業において必要なバイトテロ対策としては、私的端末の職場への持ち込みを物理的に防ぐだけでなく、入社段階からの意識改革でリスクを根絶することが挙げられます。
損害賠償まで発展するかもしれないということを自覚させるためにも、採用契約書には「損害賠償請求」のリスクを明記して署名させ、研修では過去の「バイトテロの末路(デジタルタトゥー)」を伝えることが抑止力を高めます。
ガイドラインの定期的な読み合わせも習慣化したうえで、金属探知機や透明ロッカーでバックヤードへの端末持ち込みを阻止するという「物理×心理」のダブルロックが効果的です。
客テロに関しては、AI監視カメラの導入が回転寿司チェーンなどで標準化されつつあります。「醤油差しの蓋を不自然に開けられた」「レーンから取った皿を戻そうとした」などの不審な挙動をAIカメラが一瞬で検知し、即座に店員へアラートを飛ばします。
「常に見られている」という事実自体が、客テロの最大の抑止力となります。
また、客テロが発生した場合の事後対応について、かつては「お騒がせして申し訳ありません」という謝罪が通例でしたが、2025年のスタンダードは「被害届の提出と損害賠償請求」です。毅然とした対応こそが最大の広報になるということです。
「やった者勝ち」を許さず、加害者が社会的・経済的な打撃を受ける姿を可視化することが、次のテロを防ぐワクチンとなります。

小林:バイトテロは同じパターンを繰り返しているという印象を持つかもしれません。しかし、若い学生にとって2年前は大昔です。
企業としては入社時の研修や私的端末を持ち込ませないルールづくり、監視技術の導入、もしものときは厳しい措置を取るという一連の流れにしっかりと対応していく必要があります。採用担当者だけが頑張れば良いという話ではないと思います。
2026年の企業広報が持つべき「判断軸」と「更新力」
桑江:企業広報の担当者が「謝罪すべきか、静観すべきか」を迷った場合、基準とすべきは「ノイジーマイノリティ(声の大きい少数派)」ではありません。SNS上の全投稿を分析し、「サイレントマジョリティ(静かな多数派)」がネガティブに反応しているかどうかを指標とすることが大切です。
承認欲求や悪ふざけからという炎上の本質は変わりませんが、火元は従来のXやInstagramだけでなく、Threads、BeRealへと拡大しています。「多くの若者は今、どのプラットフォームにいるか?」を最速でキャッチアップし、新たな火元が見つかれば翌週には「社内規約のアップデート」と「現場研修」に落とし込むサイクルを全社的に回す必要があります。

小林:表面的には「十年一日」のごとく炎上が起きているように見えるかもしれません。ただし、炎上の背景や原因をよく見てみると、やはり変化が起きています。
炎上防止対策も10年前に設けたガイドラインがあるから良いという話ではなくなっており、情報をアップデートして考えていかなければならないということに尽きます。そのためにも、直近でどんな事例が発生しているかを、しっかり見ていく必要があると改めて思います。
「なぜ、その事案は燃えたのか?」事例から学ぶ、生成AI・Threads・BeReal…etc時代のリスクとの向き合い方の常識 | シエンプレ株式会社
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