飲食店は「異物混入」からどう身を守るか?来来亭の事例から学ぶ予防策と迅速な危機管理対応

大手ラーメン店チェーン「来来亭の浜松幸店」では、ラーメンへの異物混入事象が発生し、臨時休業に至りました。
目次
事象の内容と発見
2024年6月9日13時59分、X(旧Twitter)に「昨日来来亭でラーメンを食べようとしたらウジ虫が…お気に入りの店だったので残念です」というコメントとともに、ラーメンのチャーシューの上を小さな虫のようなものが数匹這っている動画が投稿されたのです。
店舗の初動対応と保健所の見解
顧客からの指摘を受け、店長は直ちにラーメンを目視で確認しました。しかし、虫は確認できませんでした。その場で顧客に新しいラーメンと餃子を提供し直したとされています。
その後、保健所が来店し、ラーメンを作る全工程を見せたところ、特に落ち度はなかったと判断されました。保健所の担当者は、ウジ虫は卵を産み付けるのが一瞬であるため、原因特定が難しいとの見解を示しました。
異物混入の専門家は、動画の虫の動きや色合いからハエの幼虫(ウジ)の可能性が高いと推察しています。特に、ニクバエの仲間は幼虫を直接産み付ける「卵胎生」であることにくわえ、チャーシューなどの動物性食材に惹かれやすい特徴があります。ただ、ニクバエの幼虫は高温に弱いため、調理中に混入することは考えにくいとされています。チャーシューの仕入れ段階で虫が湧いていたとしても、店で炊いた時点で死滅するはずです。幼虫が生きていたのであれば、店内で個別に発生したと考えるのが妥当と店長は述べています。同店では、現在メンマを含むすべての経路で検査が行われています。
休業措置と本部の回答
動画投稿の翌日、当該店舗は臨時休業を発表し、その後、無期限の営業停止となっています。 動画を投稿したユーザーは、「状況審査と原因調査してくれると連絡をもらいました。審査が完了するまで非表示にしてくださいとの事なので動画は削除しておきます」と書き込み、動画を削除しました。来来亭の本部は、当該動画の顧客以外からは異物混入に関する問い合わせは受けていないと公式回答しています。
来来亭の対応に対する考察
今回の事案における来来亭の対応は、いくつかの危機管理のセオリーと照らし合わせて評価できます。
●顧客への直接対応の迅速性
顧客からの指摘に対し、その場で新しい商品を提供し直した点は、クレームの初期対応として迅速であったと言えます。これは、クレームを受けた担当者がその場で対応することや、不快感を与えたことへの謝罪を迅速に行うことの重要性に合致します。
●SNS投稿への間接的対応
投稿者との連絡により動画が削除されたことは、情報のさらなる拡散を一時的に抑制する効果があったと考えられます。しかし、コンテンツを説明なく削除してもらうことは、状況によっては「隠蔽だ」と非難され、新たな炎上につながるリスクも指摘されています。
●情報開示の透明性
店長がメディアの取材に応じ、保健所の見解や内部の検査状況を説明した点は、透明性を示そうとする姿勢として評価できます。しかし、公式なウェブサイトやSNSでの広報対応(リリースなど)が、店長のメディアでの発言よりも先行して、包括的に行われたかは不明です。
異物混入事案では、製パン会社の事例のように、発生から2日以内に迅速かつ明確な第一報をリリースし、原因究明や再発防止策、影響範囲などを詳細に伝えることで、憶測や誤情報が飛び交うことを防ぎ、称賛に繋がったケースもあります。
異物混入の対策とは?製パン会社の好事例や3原則について解説
飲食物を取り扱う企業・店舗で「異物混入」が発生した場合、事故の規模や混入物の種類によっては大きな騒動に発展する可能性があ...
https://www.siemple.co.jp/isiten/●顧客への配慮
チョコ菓子の異物混入騒動の事例では、たとえ事実誤認の投稿であっても、メーカーが投稿主とその家族に配慮し、寛大な姿勢を見せたことで社会からの称賛を得ています。来来亭も、動画削除要請や代替品提供を通じて、顧客への配慮を示したと考えられます。
チョコ菓子の異物混入騒動に学ぶ。事実誤認の投稿主に配慮し、ファンを魅了したメーカーの神対応
企業がSNS炎上に巻き込まれた場合、早期に収
https://www.siemple.co.jp/isiten/同業者が取るべき対策
飲食店における異物混入は、企業の信頼と存続に直結する重大な問題です。SNSなどでの拡散によって甚大なダメージを受ける可能性もあります。来来亭の事例や過去の類似事例を踏まえ、同業者が対策すべきは以下の点です。
1. 異物混入の予防策の徹底
衛生管理の強化
施設・設備の維持管理:
ネズミや昆虫の繁殖場所を排除しましょう。窓やドア、吸排気口に網戸を設置するなどして侵入を防ぎましょう。空調機、熱源周り、排水溝、グリストラップ、ゴミ捨て場は特に害虫が発生しやすい場所です。重点的に洗浄・除菌を行いましょう。
原材料の管理:
段ボールは虫がつきやすいので調理場に放置しないようにしましょう。食材の期限管理と適切な保管(覆いをせずに放置しない)を徹底しましょう。加熱調理後すぐに清潔な容器に入れて冷却し、再加熱時は中心まで十分な加熱を徹底しましょう。トッピング具材は提供直前まで冷蔵保存しましょう。
厨房内の清掃・点検:
調理機器の点検・清掃・殺菌、調理器具の洗浄確認、トイレの清掃を徹底しましょう。施設や設備、器具は定期的に清掃・洗浄・メンテナンスを行い、破損や劣化による異物混入を防ぎましょう。
従業員の衛生管理:
従業員はこまめに手洗いを行いましょう。衛生的で清潔な作業着、帽子、マスクを着用しましょう。食品取扱施設内に指輪などの装飾品、腕時計、ヘアピン、安全ピンなど不要なものを持ち込まないようにしましょう。前髪を出さず、長い髪は束ねるなど、頭髪が落下しないよう身だしなみを整えましょう。
従業員教育の徹底
SNS利用ガイドラインの策定:
従業員に対し、SNSの利用に関する明確なガイドラインを策定し、周知徹底することが不可欠です。特に、プライベートの投稿であっても、勤務先について投稿して良いこと、いけないことを明確に示し、自分ごととしてリスクを理解させる必要があります。
定期的な研修実施:
どんな投稿が問題になるのか、炎上するのかを具体的に示しましょう。炎上の恐ろしさを実感してもらうための教育を定期的に実施しましょう。不適切な行為が解雇や損害賠償請求、個人情報の晒し上げ、刑事罰といった悲惨な末路を招くことを具体的に伝えることが効果的です。
物理的対策:
勤務中のスマートフォン持ち込み規制や、公式アカウント専用端末の導入など、誤投稿防止のための物理的な対策も有効です。
2. 異物混入発覚時の危機管理対応
迅速な初動対応:
異物混入やクレームが発生した場合、誰が、どの経路で、どのように情報を共有し、対応に当たるのかを事前に決めておく危機管理マニュアルを策定しておくことが重要です。顧客からの指摘があれば、直ちに事実確認を行いましょう。必要に応じて代替品を提供するなど、顧客の不快感を最小限に抑えるための対応を最優先で行うべきです。
Web/SNSモニタリングの徹底:
炎上の火種となる投稿を早期に発見するため、自社に関するSNS投稿や口コミサイトの情報を常時モニタリングする体制を構築することが不可欠です。24時間体制の有人監視やツール活用を専門会社に委託することも有効です。
Web/ SNS深層モニタリングサービス紹介資料 | シエンプレ株式会社
siemple.co.jp真摯かつ透明性のある情報開示
事実関係の調査と公表:
事実関係を徹底的に調査し、確認できた内容を迅速かつ正確に公表します。原因がすぐに特定できない場合でも、「調査中である」ことを公表し、憶測や誤情報が飛び交うのを防ぐことが重要です。
真摯な謝罪:
「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」のような、謝罪の意図が伝わりにくい「ご不快構文」は避けるべきです。何が問題だったのかを明確にし、真摯に謝罪する姿勢が求められます。謝罪文は、多くの消費者の目につきやすい公式ウェブサイトやSNSに掲載するなど、情報開示に積極的な姿勢を示す必要があります。
原因究明と改善策の提示:
異物混入の原因と具体的な改善策、再発防止策を示すことが重要です。保健所など外部機関に相談した結果をリリースに盛り込むことも有効です。
顧客への配慮と否定しない姿勢:
チョコ菓子の異物混入騒動の事例のように、事実誤認の投稿であっても、投稿主やその家族に配慮し、顧客を否定しない姿勢を貫くことが重要です。
法的措置の検討と公表:
バイトテロや 客テロのような悪質な迷惑行為に対しては、法的措置を検討し、その方針を明確に公表することが、世論の「厳正に対処すべきだ」という声に応え、企業の被害を最小限に抑えることに繋がります。
Googleマップの口コミ対応:
Googleマップの悪い口コミは売上や採用活動に悪影響を及ぼします。放置せず、オーナーが丁寧に返信することが重要です。オーナー返信は、投稿者本人だけでなく、来店を検討している第三者も見ていることを常に意識して対応し、事実であれば改善を約束する姿勢を示すべきです。
専門家によるサポート:
シエンプレの「危機対応支援サービス」は、ネット上の口コミ評判やニュース記事などに見られる論調を分析し、想定されるリスクを診断します。
提携会社と連携した緊急のコールセンター開設や、記者会見のセッティング・運営、メディア側を納得させるロジックを備えたプレスリリース作成といった事後対応も手厚くサポートします。
事態が落ち着くまでの間は、顧客企業に関するネット上の投稿やネットメディアの論調をモニタリングし、世論の変化などを漏れなくご報告します。
検索エンジンで表示される顧客企業の関連キーワードも綿密にリサーチし、不適切な語句がヒットした場合も速やかに収束させることが可能です。
飲食店は異物混入のようなデジタル・クライシスに常に直面する可能性があります。平時からの徹底した予防策と、万が一の事態に備えた迅速かつ誠実な危機管理対応が、企業の信頼とブランドイメージを守る上で不可欠です。
デジタル・クライシス対策の強化をお考えであれば、国内ナンバーワンの取引実績と信頼性、豊富なノウハウを持つ弊社まで、お気軽にご相談ください。
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